【完結】嘘はBLの始まり

紫紺

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番外編

ドライブデート(伊織目線)

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 僕と享祐は同棲中だ。だから専らデートはおうちデート。一緒に好きな映画を観たり、たまにはゲームなんかもする。
 でもさ、やっぱり外デートもしたいんだよね。美味しいご飯食べたり、綺麗な景色を観たり。享祐は車の運転が好きだからドライブも行きたがってる。



「よし、準備はいいか? 行くぞっ」

 ということで、本日、久しぶりに二人のお休みが重なったので、ドライブに行くことに。お天気もいいし、テンション上がるっ!

「え、それ、どうしたの享祐っ!」

 玄関で待つ享祐のところに行くと、髭を生やした享祐が!

「変装だよ。だいぶ印象変わるだろ?」
「あ、う、うん」

 サングラスはいつもの通りだけど、髭は……でも普通に似合ってる。口の周りに綺麗に整えられた髭。昨夜はなかったから付け髭だよね。

「これ、小道具さんからもらってきたんだ。ちょっと痒いけどなあ」
「けど似合ってる。カッコいいよ」
「そうか? ヤクザものの映画とかやるとき、伸ばしてみるかな」
「うんうん」

 こんなカッコいいヤクザさんいたら、舎弟にでもなんでもなっちゃうよ(違う)。

「僕も眼鏡にした。いつもはコンタクトだけど。しかも学生時代に使ってたの。えへへ」
「それも可愛いよ」

 真顔で言われた。キュン死しそう。

「あ、玄関で俺らなにやってんだ。行こうぜ」

 このままだと、ここでキスしちゃって部屋に戻りそう。それでもいいけど(笑)、今日はドライブに行くって決めたんだから我慢ガマン。



 享祐の超クールなスポーツカーに乗り、僕らが目指すのは北関東にある牧場。ネットで『日帰りドライブ 穴場』で検索したら出てきたとこだ。
 調べたら渋滞もないし平日なら空いてるってあった。これは僕らには有難い。道すがら寄るサービスエリアも混雑していないに限るからね。

 僕らが共通して大好きな佐山巧のギターをBGMに、気持ちのいい東北道を北にひた走る。
 享祐はわざとダサく見えるようにと、チェック柄(笑)のシャツにデニム姿。だけど、足が長いし、ガタイいいし残念なくらいカッコいい(変な表現)。
 僕もユニシロお勧めのパーカーにくるぶしまでのパンツ。金欠の大学生な感じを目指したんだけど、どうかなあ。



「このラーメンうまっ」

 サービスエリアで名物のラーメンを食べる。こういうフードコートみたいなところで食事するのは久々なので変にテンションがあがる。享祐はそっと髭を取って食べだした。

「麺類と髭は相性悪過ぎだなあ」
「うふふ。大丈夫だよ。誰も気付いてない」

 かく言う僕も眼鏡が早速曇ったので外している。サービスエリアには結構観光客がいたんだけど、どうやら気付かれなかったみたいだ。



 目的地の牧場についた。真っ青な空に広々とした緑の原。滅茶苦茶気持ちいい。それに真っ白なソフトクリームがホントに絶品で。
 開放的な気分に僕らは浸った。自由に飲食するために享祐は早々に髭を取ってしまった。僕はワイルドな享祐も見たかったけど仕方ない。それに、キスしにくそうだからやっぱりない方がいいかな。

 全く誰にも気付かれないので、僕らはどんどん大胆になった。お土産品を眺めるにも手を繋いだりして。どうにもくっついていたいんだよ。

「お、こんなところに美味そうなチーズが」
「え? わっ」

 いきなり享祐が僕の頬に唇を寄せて来た。

「チーズついてた。美味い」

 なんて舌をぺろりとする。レストランで食べたピザのチーズ? まさかね。恥ずかしいことするなあ、もう。

「赤くなった。眼鏡姿も可愛い。萌える」

 なんて言うもんだから、さらに赤くなってしまった。

 僕らはその日思い切り楽しむことができた。つまり、大した変装をしなくてもバレないんだとわかり、とんだ自意識過剰だと判明してしまった。
 帰りの車の中ではそんな自虐ネタで大いに盛り上がった。途中のSAで餃子を買って帰って楽しい日帰りドライブは終わった。



 ところが、数日後の週刊誌に僕らのデート風景が載ってしまった。『交際は順調な最初で最後カップル』なんてタイトル付きで。
 今更だからどうでもいいんだけど、二人で手つなぎしてるとことか、享祐が僕にキスしてるとことか。なかなかな赤面ショット。
 はしゃぎ過ぎたことを、ちょっとだけ反省した。ちょっとだけだけどね。
 

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