キスから始める恋の話

紫紺

文字の大きさ
34 / 59

第33話 恋のライバル?



 真っ白なハーフコートにピッタリしたストレートのデニム。ショートブーツまでがセットになっててファッション雑誌から抜けて出てきたみたいだ。
 身長が高くて目鼻立ちがはっきりした大づくりの美女。良く言えば華やかな、悪く言えば自己主張の強い美人だ。
 僕はその迫力に圧倒され、視界に入らないよう先輩の背後に隠れた。

「今、世話役の方に聞いたけど、女性でも参加できるって。来週から私も選手として参加しようかな」

 な、なんだとっ。ちょっとだけ顔を出す。

「いいんじゃないか。他所のチームにも女性がいるとこあるぞ。佳乃なら十分やれるだろ」

 でも、このチームは大学の元サークルメンバーで活動してるんだ。彼女は関係ないじゃないか。そりゃ最近では、違うのもチラホラ入って来てるけどさ……。
 見た目だけで言うと、運動神経いいんだろうな。身長、庄司君より多分高いよ。性格も男だって先輩言ってたし。

「ハチ、何してる。ゲーム始めるぞ。さっさとアップしろ」

 僕の気も知らないで、先輩が呼んでる。はいはい、今行きますよ。

「はあい。今行きますっ」

 シューズの靴紐をしっかりと締め、フィールドに向かう。なんだか視線を感じた。恐る恐るその視線を確かめると、思った通り、佳乃さんと目が合った。
 ニコリ。というより、ニヤリ。て感じで口角を上げる。僕は反射的に軽く会釈し、アップしてるメンバーの輪に入った。

 ――――完全に存在感で負けてる……。

 もしあの人が恋のライバルだとしたら、絶対勝てない。僕は心の中で、こっそり白旗を上げた。



 今日の僕はいつも以上に調子が悪かった。そんなふうに思ってるのは僕だけかもしれないけれど。シュートは悉く外すし、パスミスはするし、あげくに空振りを演じてしまった。ボールから目を一瞬離した。他に気の取られることが多すぎなんだよ。

 先輩にもだけど、佳乃さんの前であんな失態は見せたくなかった。しかも、いつもはそのまま解散なのに、世話役でこのサークルの発起人、神田さんがみんなをランチに誘った。いつも文字通り世話になってるからさすがに断れない。

「佳乃さんも是非」

 汗をタオルで拭いてる後ろで、神田さんが佳乃さんを誘ってるのが聞こえた。マジか……。今日みたく調子悪い日じゃなくてもいいのに。

「ありがとうございます。喜んでっ」

 だよね……。そういうとこ絶対遠慮しなさそう。



 結局、近くにあるファミレスにメンバーのほとんどが集った。総勢十人。二つのテーブルに分かれたけど、もちろん佳乃さんは先輩と同じテーブルに座った。
 僕は別のテーブルに行こうとしたんだけど、それは無理な相談だったらしい。普通に先輩の隣に座る。彼女は真ん前だ。めっちゃ目のやり場に困るんだけど。

「初めまして。二宮佳乃と申します。新条君とは同期なんです」

 注文が終わると、彼女は率先して挨拶をした。フルネーム初めて聞いた。頭がいいのが湧き出てくるようなしっかりとした発声だ。菜々美ちゃんの甘えた感じとは真逆のハンサムボイス。
 ウチのチームは神田さんを始め、いい意味で気を使わない連中だから、すぐに打ち解けた。自然と話題は彼女を中心に回り、僕はストレートのミディアムヘアがサラサラと忙しく動いているのを眺めることになった。

「君は……新条君と家が近いの? いつも一緒に来てるけど」

 食事が進み会話もひと段落着いたとき、突然僕に振ってきた。喉にエビフライがつまりそうになった。

「はい……。同じアパートに住んでます」
「え? 同棲?」
「違うよ。何の興味だよ。ハチは俺のアパートの二階に住んでんだよ。俺は三階」

 先輩が隣から助け舟を出してくれた。今度はエビフライを吹きそうになったから助かった。

「ふうん、そうなんだ」

 彼女のキラキラした瞳がより一層光った気がした。居心地悪っ。

「八城って言います。先輩にはいつも世話になっています」

 今更だけど自己紹介した。彼女はまだ何か聞きたそうだったけど、神田さんが別の話題を提供してくれた。背中に入りそうなランチ。とにかく無事に終わってくれ。



感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。