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番外編 ~キスから始めて見た~
第6話 有頂天になってみた。
しおりを挟む大雪の日。俺はハチをこの腕に抱いて、このまま突っ走る気持ち満々だった。あいつの体がどんどん熱くなっていくのを感じて、俺も胸がいっぱいになった。
なのに!
「ああ助かった。凍死せずにすんだなっ」
なんて何事もなかったように振る舞う俺。何やってんだよ、もう。
――――てか、なんで電気点くんだ? さすがの俺も恥ずかしくて頓死しそうだよっ。
ハチが戸惑っているのがわかる。だけど、どうしようもない。俺はあいつの顔も見ることも出来ず、逃げ出してしまった。
こんな意気地のない姿を見られ、俺は今度こそハチに引かれたんじゃないかとビクビクしてた。けど、意外にもハチは俺のところにやってきて、頬を赤らめてるじゃないか。
フットサルに行く車の中でも、なんだか嬉しそうだ。俺の顔見たりして、もしかしてこれ、脈ありなのか?
こんな手応えを感じたのはこの五年の内でも初めてかもしれん。うう、なんとかしたいぞ。
ところでフットサルと言えば、最近面倒なことになってる。
俺の同僚に佳乃って奴がいるんだけど、あいつが毎週練習場にやってくるんだ。
俺の神聖なリラクゼーションに同僚が来るってのはあんまり嬉しくない。ハチと車で一緒に行くのも楽しすぎる時間だしな。
俺が迂闊にも教えたのが馬鹿だったんだけど、まさか毎週来るとは思わなかったんだ。
「佳乃さん、絶対先輩のこと好きなんじゃないですか。気が付かないフリしてます?」
最初にハチが佳乃と会った時のせりふ。もしかしてヤキモチかなあ、なんて俺は嬉しかったな。
練習後にみんなでランチしたときも、わかりやすくキョドってて可愛かった。
でも、遠慮のない佳乃はほんとにあほなことを言うし。けど、ハチが佳乃を意識してるってのがすごく伝わってきた。旅行会社の彼女とも別れるつもりのようだし、これはチャンスに違いない。
「じゃあ、当分俺に付き合えな」
と、俺。
「はい。そのつもりなんでよろしくお願いします」
ハチの答えに俺は有頂天になった。ようし、今度こそちゃんと告白してやらんと。
だが、こういう時に限ってハチが忙しすぎて時間が合わない。例のスパイ事件のせいで仕事が遅れたせいだ。全く、俺にまで迷惑かけるとはふてえ奴だな、許さん。
楽しみにしてたフットサルもあいつは仕事に行くと連絡してきた。なんだかなあ。俺も行く気がしねえや。
結局、俺はフットサルをさぼって家でゴロゴロしてた。ハチのこと妄想したりして、俺も間違いなく変態だな。自分で言うくらいだから、何を想像してたのかはそういうことだ。
だが、そんな俺を悪夢に突き落とす出来事が……。
「男同士でヤキモチとか気持ち悪い」
ハチから吐かれた思いもかけないこの一言。一体なにがどうしてこうなったんだーっ!
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