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Pair.2
カイ・ノーザン・マディル
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モニカ姉様は先程の商談の様子を思い出してか、くすくすと笑った。
「ふふっ。彼の宝石好きには困ったものね」
子爵邸から引き連れてきた荷馬車の中には、旅程の必需品の他に皇室への貢ぎ物も数多くあったが、商魂たくましく取引の物種となるものも積まれていた。
そのうちの一つが、皇国の南南東に位置するアルム伯爵領産の養殖真珠。
マディル公爵が思いがけない関心を寄せ、結果、商談が白熱したきっかけとなったものだ。
「マディル公爵は宝石がお好きなのですか? 質素堅実を尊ぶ方とお見受けしていました」
学者然とした風貌に似合わぬ貴族的な嗜好……だが、彼は財のある公爵だった。普通だ。
わたしの先入観から出た疑問を、モニカ姉様は意外そうに受け止めた。
「あら、そう思うならどうして真珠を持ち込まれたの?」
「モニカ姉様がお手紙に書いていらしたではないですか。今、皇都では宝石を縫い付けたドレスが流行っていると。だから、規格外に小さく、量の多い真珠でも使い道はあると考えたのです」
「それに公爵領経由なら、いわくつきの品でも捌けると思ったのでしょう」
「はは……その通りです」
その養殖真珠は湖水育ちで、大きさは小指の爪より微小、色はわたしの髪と同じ艶のある淡い苺色を呈していて、見蕩れるような美しさである。物珍しさから言っても売れないはずがないのだが、権利関係に少々難があった。
そんな代物を、アルム伯爵家の分家に嫁いだ、勝ち気で口達者な長女のオリビア姉様は簡単にパパをやり込めて押し売ってきたのだ。湖水の養殖真珠は伯爵領の今後の主力事業になり得るし、将来は経由させるだけでも相当な額の利益も見込めるから、専売権はなしで買い取ってくれと、一生のお願いだと……。
「オリビア姉様の情熱には勝てませんでした」
「私もオリビア姉様に勝つ自信はないわね……」
「コデット姉様も、オリビア姉様には勝てなさそうですね……」
「コデット姉様は何とか引き分けに持ち込むわよ。私は値下げまでね」
長女オリビア、次女コデット、三女モニカ、四女ロザリンドのナトミー家四姉妹のヒエラルキーを再確認しつつ、モニカ姉様はこうも続けた。
「だけど、私の手紙からそこまで考えるなんてロザリンドは良い推測をしたわね。こればかりはオリビア姉様にもできないわ。でも宝石好きの件は偶然だったのね。まあ、彼も宝石を丁重に扱う趣味は公にしていないから当然かしら。そうそう、実は、あの布地に溢れんばかりに宝石を縫い付けたドレスを買い始めたのは彼よ」
「公爵が? モニカ姉様ではなかったのですか」
「無駄にお金を使う余裕も、時間も、今の私にはありませんこと。さ、こちらが貴女のお部屋。鼻が利きすぎる貴女の為に、吊り香炉は外しておきましたから悪しからず」
通された客用寝室には子爵邸の自室と変わらない香りが漂っていて、逗留気分も形無しだった。
「ひどーい。モニカ姉様」
「明日、皇都で鼻が曲がるほど香りだけは嗅ぐことになるのだから。良い塩梅でしょう」
日常的に香油や香膏を肌へ塗り、吊り香炉で部屋に香りを薫き染め、優雅な香りを身にまとうことは上流階級のステイタスである。それは香料が、効能とは別に、宝飾品と肩を並べられるほど貴重で高価だからだ。麝香、龍涎香、霊猫香、樟脳、白檀、没薬、乳香……などの名が知れた品々は、時に金塊よりも高値で取引される。
子爵邸では庶民と同じように、衣装タンスにはラベンダー、レモングラスが、室内やリネン類の調香にセージ、ローズマリー、タイムなどの家庭菜園のハーブが用いられていた。
なので、公爵の居城ならば前述の贅沢品が味わえる機会だと期待し、今回の小旅行の楽しみの一つにしていたが……モニカ姉様の気遣いの前では無惨に砕け散るしかないようだ。
「あれ?」
視界の中にわたしとモニカ姉様以外の動くものを知覚して振り返る。
モニカ姉様の後ろに隠れるようにして、男の子が顔半分を出してこちらを覗いていた。
目と目が合った後に、男の子はきゅっとモニカ姉様のドレスを掴む。それでようやく姉様も彼に気が付いた。
「カイ、挨拶なさい。叔母様のロザリンドよ」
「はじめまして。叔母のロザリンド・デ・ナトミーと申します」
字が違うとはいえ、この歳で自分をおばさんと言ってしまうのは不思議な気分だ。
わたしからみて甥にあたるカイは、初めの人見知りらしき様子はウソのように物怖じせず、完璧な礼儀作法をもってして挨拶に応えた。
「はじめまして、ロザリンド叔母さま」
それだけ言うとカイは客用寝室から出て、遠くの部屋に引っ込んでしまった。
木の葉がそよ風に攫われてしまったかのような一瞬の出来事に、モニカ姉様は苦笑交じりに弁明した。
「本当、誰かさんに似て人一倍学問に熱心だから、最低限の礼儀以外、初対面だろうが賓客だろうがお構いなしなの。慣れるまでどうか許してあげて」
「そんな許すもなにも、モニカ姉様。カイくんが持っていた本は、わたしが初めてプレゼントで贈った童話ですよ!」
カイはドレスを掴んだ手と別の方に本を抱えていた。贈答用に豪奢な装飾がなされたその本は、わたしが何日も熟考を重ねて選び抜いた一冊であるから忘れるはずがない。
「確か……"夜が怖い伯爵は、朝も眠れない、昼も眠れない。だけど夜には疲れて寝てしまう。"――『東の果ての臆病な伯爵』だったかしら?」
「嬉しい! モニカ姉様も憶えてくださったのですね」
「それはもちろんよ。お手紙でよく引き合いにしていたじゃない。『パパったら心配で、きっと朝も眠れない、昼も眠れない』」
「――『だけど、夜には疲れて寝てしまう。その内に舞踏会のもとに集まれたら良いのに!』なんて書いていましたけれど、未だに叶わぬ夢でしょう。もう!」
「? 私はオリビア姉様の所で社交界のお披露目は済ませたと聞き及んでいたけれど」
「全然、まだですよ。でも良いんです。明日は皇都へ行けますし、皇国の白銀の白亜の城のように美しく煌びやかな街並みを、ふふふ、見られますから!」
自然と笑みがこぼれてくる。明日の婚約パレードがまるで舞踏会にでもなったように、わたしは弾んだ気持ちでワルツのステップを踏みながら部屋の中を渡り歩く。
「あら、そんなに明日のパレードが楽しみなの? はしたないほどに、にやけ過ぎよ」
「初めての皇都で、それも皇太子、皇太子妃両殿下の婚約パレードですよ! モニカ姉様。にやけたって良いじゃないですか」
「今時、中々お目にかかれない程のおのぼりさんだわ。でも、ベタに純粋すぎるところがロザリンドの良い所ね」
モニカ姉様は、部屋の中をくるくると回ってはしゃいでいたわたしを受け止めると、たれ目の瞳を細めながら微笑んだ。
「あ、そうです。モニカ姉様。お聞きしたいことがありました」
「なあに? ロザリンド」
昨日、モニカ姉様からのお手紙を受け取った時からずっと気になっていたことを、わたしは訊ねた。
「何故、婚約パレードなのですか?」
「ふふっ。彼の宝石好きには困ったものね」
子爵邸から引き連れてきた荷馬車の中には、旅程の必需品の他に皇室への貢ぎ物も数多くあったが、商魂たくましく取引の物種となるものも積まれていた。
そのうちの一つが、皇国の南南東に位置するアルム伯爵領産の養殖真珠。
マディル公爵が思いがけない関心を寄せ、結果、商談が白熱したきっかけとなったものだ。
「マディル公爵は宝石がお好きなのですか? 質素堅実を尊ぶ方とお見受けしていました」
学者然とした風貌に似合わぬ貴族的な嗜好……だが、彼は財のある公爵だった。普通だ。
わたしの先入観から出た疑問を、モニカ姉様は意外そうに受け止めた。
「あら、そう思うならどうして真珠を持ち込まれたの?」
「モニカ姉様がお手紙に書いていらしたではないですか。今、皇都では宝石を縫い付けたドレスが流行っていると。だから、規格外に小さく、量の多い真珠でも使い道はあると考えたのです」
「それに公爵領経由なら、いわくつきの品でも捌けると思ったのでしょう」
「はは……その通りです」
その養殖真珠は湖水育ちで、大きさは小指の爪より微小、色はわたしの髪と同じ艶のある淡い苺色を呈していて、見蕩れるような美しさである。物珍しさから言っても売れないはずがないのだが、権利関係に少々難があった。
そんな代物を、アルム伯爵家の分家に嫁いだ、勝ち気で口達者な長女のオリビア姉様は簡単にパパをやり込めて押し売ってきたのだ。湖水の養殖真珠は伯爵領の今後の主力事業になり得るし、将来は経由させるだけでも相当な額の利益も見込めるから、専売権はなしで買い取ってくれと、一生のお願いだと……。
「オリビア姉様の情熱には勝てませんでした」
「私もオリビア姉様に勝つ自信はないわね……」
「コデット姉様も、オリビア姉様には勝てなさそうですね……」
「コデット姉様は何とか引き分けに持ち込むわよ。私は値下げまでね」
長女オリビア、次女コデット、三女モニカ、四女ロザリンドのナトミー家四姉妹のヒエラルキーを再確認しつつ、モニカ姉様はこうも続けた。
「だけど、私の手紙からそこまで考えるなんてロザリンドは良い推測をしたわね。こればかりはオリビア姉様にもできないわ。でも宝石好きの件は偶然だったのね。まあ、彼も宝石を丁重に扱う趣味は公にしていないから当然かしら。そうそう、実は、あの布地に溢れんばかりに宝石を縫い付けたドレスを買い始めたのは彼よ」
「公爵が? モニカ姉様ではなかったのですか」
「無駄にお金を使う余裕も、時間も、今の私にはありませんこと。さ、こちらが貴女のお部屋。鼻が利きすぎる貴女の為に、吊り香炉は外しておきましたから悪しからず」
通された客用寝室には子爵邸の自室と変わらない香りが漂っていて、逗留気分も形無しだった。
「ひどーい。モニカ姉様」
「明日、皇都で鼻が曲がるほど香りだけは嗅ぐことになるのだから。良い塩梅でしょう」
日常的に香油や香膏を肌へ塗り、吊り香炉で部屋に香りを薫き染め、優雅な香りを身にまとうことは上流階級のステイタスである。それは香料が、効能とは別に、宝飾品と肩を並べられるほど貴重で高価だからだ。麝香、龍涎香、霊猫香、樟脳、白檀、没薬、乳香……などの名が知れた品々は、時に金塊よりも高値で取引される。
子爵邸では庶民と同じように、衣装タンスにはラベンダー、レモングラスが、室内やリネン類の調香にセージ、ローズマリー、タイムなどの家庭菜園のハーブが用いられていた。
なので、公爵の居城ならば前述の贅沢品が味わえる機会だと期待し、今回の小旅行の楽しみの一つにしていたが……モニカ姉様の気遣いの前では無惨に砕け散るしかないようだ。
「あれ?」
視界の中にわたしとモニカ姉様以外の動くものを知覚して振り返る。
モニカ姉様の後ろに隠れるようにして、男の子が顔半分を出してこちらを覗いていた。
目と目が合った後に、男の子はきゅっとモニカ姉様のドレスを掴む。それでようやく姉様も彼に気が付いた。
「カイ、挨拶なさい。叔母様のロザリンドよ」
「はじめまして。叔母のロザリンド・デ・ナトミーと申します」
字が違うとはいえ、この歳で自分をおばさんと言ってしまうのは不思議な気分だ。
わたしからみて甥にあたるカイは、初めの人見知りらしき様子はウソのように物怖じせず、完璧な礼儀作法をもってして挨拶に応えた。
「はじめまして、ロザリンド叔母さま」
それだけ言うとカイは客用寝室から出て、遠くの部屋に引っ込んでしまった。
木の葉がそよ風に攫われてしまったかのような一瞬の出来事に、モニカ姉様は苦笑交じりに弁明した。
「本当、誰かさんに似て人一倍学問に熱心だから、最低限の礼儀以外、初対面だろうが賓客だろうがお構いなしなの。慣れるまでどうか許してあげて」
「そんな許すもなにも、モニカ姉様。カイくんが持っていた本は、わたしが初めてプレゼントで贈った童話ですよ!」
カイはドレスを掴んだ手と別の方に本を抱えていた。贈答用に豪奢な装飾がなされたその本は、わたしが何日も熟考を重ねて選び抜いた一冊であるから忘れるはずがない。
「確か……"夜が怖い伯爵は、朝も眠れない、昼も眠れない。だけど夜には疲れて寝てしまう。"――『東の果ての臆病な伯爵』だったかしら?」
「嬉しい! モニカ姉様も憶えてくださったのですね」
「それはもちろんよ。お手紙でよく引き合いにしていたじゃない。『パパったら心配で、きっと朝も眠れない、昼も眠れない』」
「――『だけど、夜には疲れて寝てしまう。その内に舞踏会のもとに集まれたら良いのに!』なんて書いていましたけれど、未だに叶わぬ夢でしょう。もう!」
「? 私はオリビア姉様の所で社交界のお披露目は済ませたと聞き及んでいたけれど」
「全然、まだですよ。でも良いんです。明日は皇都へ行けますし、皇国の白銀の白亜の城のように美しく煌びやかな街並みを、ふふふ、見られますから!」
自然と笑みがこぼれてくる。明日の婚約パレードがまるで舞踏会にでもなったように、わたしは弾んだ気持ちでワルツのステップを踏みながら部屋の中を渡り歩く。
「あら、そんなに明日のパレードが楽しみなの? はしたないほどに、にやけ過ぎよ」
「初めての皇都で、それも皇太子、皇太子妃両殿下の婚約パレードですよ! モニカ姉様。にやけたって良いじゃないですか」
「今時、中々お目にかかれない程のおのぼりさんだわ。でも、ベタに純粋すぎるところがロザリンドの良い所ね」
モニカ姉様は、部屋の中をくるくると回ってはしゃいでいたわたしを受け止めると、たれ目の瞳を細めながら微笑んだ。
「あ、そうです。モニカ姉様。お聞きしたいことがありました」
「なあに? ロザリンド」
昨日、モニカ姉様からのお手紙を受け取った時からずっと気になっていたことを、わたしは訊ねた。
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