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道に迷ったようだ
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「困った……。完全に道を間違えたらしい」
辺りを見渡してみるが看板やら標識らしきものもない。
標高の看板を最後に見たのはだいたい15分前。いつもなら5分もしないうちに何かしらの注意喚起の看板があるはずなんだが、それすらも見てないんだよな。
「くぅーん?」
カーレッジが俺の足に頭を摺り寄せてきた。不安になると寄ってくるこいつの癖だ。
「ああ、大丈夫大丈夫。そんな心配そうな顔するなよ。ちゃんと帰れるからさ」
わしゃわしゃと首のところを撫でながら話しかける。気持ちよさそうな顔をしているので、少しは落ち着いたかな。
「とはいうものの、ここマジでどこだ……。明らかに植物の生態系変わってるし。流石に山の裏側まで回ってきてもこうは変わらんだろ?」
最初の頃に見た植物たちは少し背の高い雑草が多い、手入れのされた林って感じだった。でも今いる場所は苔とかキノコが目につく、密度の濃い森って感じだ。
「わん!」
「ん? カーレッジどうしたー?」
急に鼻をひくひくと動かしたかと思うと俺を引っ張るようにして歩き出す。
なんか気になるもんでもあったのだろうか?
「あんま行くと危ないぞー?」
普段なら勝手に歩きだしたりしないんだけどな。
舗装された(といっても踏み固めたような簡素なものだが)道から離れた場所でもう一度吠える。
そこにはぜんまいをいくつも重ねたような形の植物が群生していた。
「植物?だよな。図鑑でも見たことないぞこれ。光合成とかしずらそうなんだけど、って、おい!」
俺が止める間もなくカーレッジはぜんまいもどきを一つ、口の中に入れてむしゃむしゃと食べ始めた。
俺の相棒であるカーレッジは決してあほな子ではない。
『まて』も『おすわり』もできるし、遊んだものは片付けようねって言ったらおもちゃをかごに戻してくれるような賢いやつだ。
今までだって道端に落ちてるようなもの食べちゃうような子じゃなかったのに。
困惑している俺をよそにカーレッジはぜんまいもどきを俺の前まで持ってきた。
「わん!」
「え、食べろってことですか?」
「わん!」
そっか、ご主人様と同じもの食べたいよねそうだよねいただきます!
あー、泥の味がすごい。せめてどろ落としてあく抜きとかすればよかったな。味は思っていたより甘みが強くてほしいもに近い味なのに歯ごたえがしっかりしてる。
「思ったよりうまいなこれ」
「うん! これおいしいぞ!」
「ああ、そうだな。うまいな…………ん?」
頭のいい子だとは思ってたけど、喋ることはしなかったはずなんだ。
あれー?
「うー?どうしたご主人?困ってる?」
俺の顔をお覗き込みながら心配そうにすり寄ってくるカーレッジ君。優しいやつだなあほんとに。
「ご主人、カーレッジの言葉わかる?」
「ああ、分かるけど……」
「カーレッジもご主人の気持ちわかる!」
「ん? 日本語ちゃんと伝わってるってことか? なんで?」
「わかんない。けど、嬉しい! ご主人と同じ!」
首をかしげて困っていたかと思ったら、今度は嬉しそうに尻尾を振って跳ねまわりながら俺の周りをぐるぐるしている。
高い牛肉あげた時もこんな感じだったな。やっぱあれ喜んでたんだな。
実際、カーレッジが言ってる言葉の意味は分かるけど、脳で勝手に翻訳されているようなよくわからん状況だけど、カーレッジと話せるのは素直に嬉しいし。
まあ、いいか。
「……とりあえず帰る道探すか。ここはカーレッジの鼻を頼ろう。ご主人を家まで連れて行ってくれたまえ」
「無理」
「即答かよ」
「あう……。だって、匂い、違う。ここ、違う」
「ん? どういうこと?」
ちょっと顔をしかめたら申し訳なさそうに顔を伏せながら説明してくれた。
カーレッジは俺の表情見ただけですぐに態度が変わるからかわいいんだよなぁ。
とりあえず頭をなでながら話の続きを聞こう。
「わかんない。けど、知らないところ。知らない匂い、いっぱいある」
「んん?」
俺はカーレッジを結構いろいろなところに連れて回っている。海に山に温泉に、こいつを連れていけるところはかなり巡ったと思う。
カーレッジは物覚えがいいから一度嗅いだ匂いを忘れているとは思えないし、人間なんかより断然鼻の利くこいつが言っているってことは、まじでこのあたり未知の場所ってことか?
「ううぅぅ、役に立てなくてごめん……」
俺が考え込んでいるのを自分のせいだと思ったらしく、すごくしおらしくなっているカーレッジ。
いかんいかん。こういうときこそご主人様がしっかりしていないと!
カーレッジに笑って見せて、いつものように首の横をわしゃわしゃと撫でてやる。
「まあ、いいさ。とりあえずまずは山降りなきゃいけねーな」
ついでだし、ここらの山菜もいくらか採取しておこう。非常時だし、管理の人も許してくれるだろ。
手を合わせて、いただきますしていくらか引き抜きました。
「生き物がいっぱいいる場所とか、水の流れてる場所はわかるか?」
「大丈夫、わかる」
「よし、カーレッジ、命令だ。そこまで俺を案内しろ」
「了解! ご主人!」
嬉しそうに俺の前を歩きだすカーレッジ。ちぎれんばかりにしっぽを振っていた。
辺りを見渡してみるが看板やら標識らしきものもない。
標高の看板を最後に見たのはだいたい15分前。いつもなら5分もしないうちに何かしらの注意喚起の看板があるはずなんだが、それすらも見てないんだよな。
「くぅーん?」
カーレッジが俺の足に頭を摺り寄せてきた。不安になると寄ってくるこいつの癖だ。
「ああ、大丈夫大丈夫。そんな心配そうな顔するなよ。ちゃんと帰れるからさ」
わしゃわしゃと首のところを撫でながら話しかける。気持ちよさそうな顔をしているので、少しは落ち着いたかな。
「とはいうものの、ここマジでどこだ……。明らかに植物の生態系変わってるし。流石に山の裏側まで回ってきてもこうは変わらんだろ?」
最初の頃に見た植物たちは少し背の高い雑草が多い、手入れのされた林って感じだった。でも今いる場所は苔とかキノコが目につく、密度の濃い森って感じだ。
「わん!」
「ん? カーレッジどうしたー?」
急に鼻をひくひくと動かしたかと思うと俺を引っ張るようにして歩き出す。
なんか気になるもんでもあったのだろうか?
「あんま行くと危ないぞー?」
普段なら勝手に歩きだしたりしないんだけどな。
舗装された(といっても踏み固めたような簡素なものだが)道から離れた場所でもう一度吠える。
そこにはぜんまいをいくつも重ねたような形の植物が群生していた。
「植物?だよな。図鑑でも見たことないぞこれ。光合成とかしずらそうなんだけど、って、おい!」
俺が止める間もなくカーレッジはぜんまいもどきを一つ、口の中に入れてむしゃむしゃと食べ始めた。
俺の相棒であるカーレッジは決してあほな子ではない。
『まて』も『おすわり』もできるし、遊んだものは片付けようねって言ったらおもちゃをかごに戻してくれるような賢いやつだ。
今までだって道端に落ちてるようなもの食べちゃうような子じゃなかったのに。
困惑している俺をよそにカーレッジはぜんまいもどきを俺の前まで持ってきた。
「わん!」
「え、食べろってことですか?」
「わん!」
そっか、ご主人様と同じもの食べたいよねそうだよねいただきます!
あー、泥の味がすごい。せめてどろ落としてあく抜きとかすればよかったな。味は思っていたより甘みが強くてほしいもに近い味なのに歯ごたえがしっかりしてる。
「思ったよりうまいなこれ」
「うん! これおいしいぞ!」
「ああ、そうだな。うまいな…………ん?」
頭のいい子だとは思ってたけど、喋ることはしなかったはずなんだ。
あれー?
「うー?どうしたご主人?困ってる?」
俺の顔をお覗き込みながら心配そうにすり寄ってくるカーレッジ君。優しいやつだなあほんとに。
「ご主人、カーレッジの言葉わかる?」
「ああ、分かるけど……」
「カーレッジもご主人の気持ちわかる!」
「ん? 日本語ちゃんと伝わってるってことか? なんで?」
「わかんない。けど、嬉しい! ご主人と同じ!」
首をかしげて困っていたかと思ったら、今度は嬉しそうに尻尾を振って跳ねまわりながら俺の周りをぐるぐるしている。
高い牛肉あげた時もこんな感じだったな。やっぱあれ喜んでたんだな。
実際、カーレッジが言ってる言葉の意味は分かるけど、脳で勝手に翻訳されているようなよくわからん状況だけど、カーレッジと話せるのは素直に嬉しいし。
まあ、いいか。
「……とりあえず帰る道探すか。ここはカーレッジの鼻を頼ろう。ご主人を家まで連れて行ってくれたまえ」
「無理」
「即答かよ」
「あう……。だって、匂い、違う。ここ、違う」
「ん? どういうこと?」
ちょっと顔をしかめたら申し訳なさそうに顔を伏せながら説明してくれた。
カーレッジは俺の表情見ただけですぐに態度が変わるからかわいいんだよなぁ。
とりあえず頭をなでながら話の続きを聞こう。
「わかんない。けど、知らないところ。知らない匂い、いっぱいある」
「んん?」
俺はカーレッジを結構いろいろなところに連れて回っている。海に山に温泉に、こいつを連れていけるところはかなり巡ったと思う。
カーレッジは物覚えがいいから一度嗅いだ匂いを忘れているとは思えないし、人間なんかより断然鼻の利くこいつが言っているってことは、まじでこのあたり未知の場所ってことか?
「ううぅぅ、役に立てなくてごめん……」
俺が考え込んでいるのを自分のせいだと思ったらしく、すごくしおらしくなっているカーレッジ。
いかんいかん。こういうときこそご主人様がしっかりしていないと!
カーレッジに笑って見せて、いつものように首の横をわしゃわしゃと撫でてやる。
「まあ、いいさ。とりあえずまずは山降りなきゃいけねーな」
ついでだし、ここらの山菜もいくらか採取しておこう。非常時だし、管理の人も許してくれるだろ。
手を合わせて、いただきますしていくらか引き抜きました。
「生き物がいっぱいいる場所とか、水の流れてる場所はわかるか?」
「大丈夫、わかる」
「よし、カーレッジ、命令だ。そこまで俺を案内しろ」
「了解! ご主人!」
嬉しそうに俺の前を歩きだすカーレッジ。ちぎれんばかりにしっぽを振っていた。
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