病弱な公爵令嬢(?)の家庭教師~その正体は?~

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中

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第2章 アカデミー編

第35話 伏兵の存在(ザカリー視点)

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「失礼しました」

 研究室を出て、そのまま廊下を真っ直ぐ歩く。
 歩調はいつも通りだったと思う。が、顔は物凄く深刻に見えただろう。
 何せ、心境がそうなのだから。

「まさか、伏兵が沢山いたとは……」

 やっぱりアカデミーに来て良かった。そう思わざるを得なかった。

「でも、あれはやり過ぎたような気がする」

 いくらルシアに薦められたからといって、イエローダイヤモンドは……。
 恐らく、石言葉にも気づいただろう。

「それに色も」

『お兄様はもっとアプローチすべきです! そうしないと気づいてもらえませんよ!』

 ルシアの言葉が脳裏を過ぎる。会えない日々が、幼稚な独占欲を肥大させた。
 さらに自分ではない、誰かからのプレゼントに頬を緩ます姿にも。

 だからアピールしてしまった。中の宝石がイエローダイヤモンドであることを。少しでも自分の気持ちに気づいてほしくて。

「ルシアがここにいたら、叱咤するんだろうな」

『何を弱気なことをいうんですか!』と。

 長年患っていたレルシィ病が治ると、ルシアはメキメキと元気になり、今では俺を含めた邸宅の皆がタジタジになった。

 それは俺が作り出した我が儘な公爵令嬢ではない。邸宅を牛耳る女王様と化したのだ。

「アニタがそれを見たら、どう思うだろうか」

 失望? 幻滅?

 いや、どれも違う。アニタはルシアが好きだから。

「あぁ、早く連れて帰りたいな」

 今のルシアを見せたいから? いや、違う。また、邸宅で共に過ごしたいのだ。
 そんな淡い気持ちに浸りながら、寮にある自室に向かった。


 ***


 アニタの言う通り、アカデミーは平等を謳っているが、それは表向き。当然、それは長年アカデミーに在籍し、且つ、教授となったアニタも分かっているのだろう。
 何せ寮は、裏を象徴する場所だったからだ。

 アカデミーはほぼ全寮制だ。それはある意味、社会の縮図を意味していた。

「おかえり。意外と早かったんだね」

 同室のロナルド・クレイマン侯爵令息が、奥からわざわざやってきた。
 自由時間になった途端、外に出たのが気になったらしい。余韻が、行き先を尋ねている。

「父上の用事を済ませてきただけだからな」

 無視することもできたが、要らぬ詮索はされたくはない。
 逆に先手を取れば、相手の返答も予測できた。

「な~んだ、つまらない」
「つまらないとは失礼だな。家長の機嫌は取っておくものだろう?」
「まぁね。良くも悪くも、従っておくに越したことはないよ」

 そういうなり、ロナルドは両腕を頭の後ろにやって、再び奥に戻って行った。
 まるで興味のあることにしか首を突っ込まない、猫のような男である。

 公爵家ともなれば、同室ではなく個室を選ぶことができる。が、敢えてそうしなかったのは、アニタとの話題作りだった。
 ずっとリノと同室だったアニタは、よくその話をルシアにしていたのだ。

『ですから、不便かと思いますが、どなたかと同室することをオススメしますわ!』

 ルシアの助言を聞き入れた俺は、公爵令息でありながら、ロナルド・クレイマン侯爵令息と同じ部屋を使うことになったのだ。

 そんなロナルドと初めて会ったのは二週間前。
 入寮自体は入学式の一カ月前からできるのだか、ルシアに駄々を捏ねられて遅くなった。

『一人だけ、いち早くアニーに会いに行くなんて薄情です!』

 どこで覚えたのか、そんな意味の分からない小芝居までして、非難してきたのだ。

 そもそもルシアは、アカデミーを受験していないだろうに。しかも、入寮したからといって、一教授であり、さらに新任教授に会いに行けると思っているのがおかしい。

「入学式を終えたから行けたというのに……」

 そう、ロナルドに言ったように、父上からの就任祝いを渡す名目があってこそだった。

 アニタとリノは父上の推薦によって教授になれたのだ。ルシアの家庭教師では、アカデミーでの接点は弱い。が、推薦は他の教授たちの目があっても容認できるくらい、強い接点だった。

「それでもまだまだ遠い……」

 後輩、就任祝い、『ベスネープショコラトリー』

「ルシアの言う通り、もっとアプローチするべきだろうな」

 あの赤い紙袋を思い浮かべながら、そう決心した。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

榎
2024.09.29

第一章、別れの瞬間から二人の今後に期待大だったのですが、第二章早々に二人が距離感測ろうと必死になっているような😏
教授と生徒でもある二人、歳の差は良きですね( *´艸`)フフフ

2024.09.29 有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中

柊さん、感想ありがとうございます!

第一章はアニタの役目も終えましたので、そこに留まる理由や引き留められるほどの力がなかったため、お別れとなりました(;´・ω・)
色々と秘密にしていたのが、最大の理由ですね(n*´ω`*n)
雇用主は父親であるディアス公爵であって、『彼』ではないので💦

ともあれ、必死に追いかけた結果が第二章の始まりになります。
『彼』の頑張りに応えたいアニタと、そんなアニタに振り向いてもらいたい『彼』です(*´艸`)
立場、歳の差など……温かく見守っていただければと思います。

解除

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