中国夜話 毛沢東異界漫遊記

藤原 てるてる 

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ムッソリーニと、戦争談義の巻(十三話)

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おぞましい事が、よくも連続で起こったものである。
1945年4月30日、ドイツ第3帝国は風前の灯火であった。
ソ連はベルリンの心臓部に迫った、総統官邸の地下壕には炸裂弾が轟いた。 
ヒットラーはその夜、愛人エヴァ・ブラウンと結婚式を挙げた。
立ち合い数人に別れを告げ、愛犬シェパードに毒を飲ませた後、奥の部屋に二人で消えた……

その時、イタリアでは、どうであったのか。
嘗ては師と仰いだ、統領ムッソリーニが愛人ともどもに、2日前に殺されていた。
ヒットラーは、その事を知ったのだろうか、仲の良かった同志だ。
何らかの、お告げはあったのかも知れない。虚空で、何か言ったのかもしれない。
私は言葉を拾おうとする、そう、ムッソリーニは天界ではどうしている。
そこは同盟国だった日本の敵国、中国の毛沢東に異色対談してもらおう……


ムッソリーニ「チャオ、毛沢東、あんたチャイニーズ、日本の敵」
      「私に会って、どうする。イタリアとも敵、あんた嫌い」
毛沢東   「おやっ、あなた、こんなに元気なのですか、とんでもない事になった
      でしょ?」
ムッソリーニ「ん? パルチザンに捕まっての処刑のこと」
      「あれはな、愛人のクララ・ペタッチが身を投げて防ごうとした」
      「わしは9発くらった、あの女はもっとくらった、わしを守ろうとな」
毛沢東   「それから、その後、亡骸は町に運ばれて広場で逆さ吊りと……」
ムッソリーニ「ああ、ミラノのロレータ広場で虫けらの様に足蹴りにされた」
      「まさに死体に鞭打つだ、美人のぺタッチの閉じてた目が開いたわ」
毛沢東   「まっくもって無惨ですな、国民に統領と崇められた、あなたが」
ムッソリーニ「アッローラ、今のは切り替えのイタリア語だ、その話は、もういい」
      「お前は何で、わしを呼んだ?」       
毛沢東   「まあ、昔は昔。私は今、同時代の指導者巡りをしとるのです」
      「この天界では誰にでも会えるんで、ロシアの狼と白犬の次は、あなた
      にと……」
ムッソリーニ「何っ、ロシアはもっと嫌い、東部戦線の我が軍を踏みつぶした」
      「盟友ドイツの息の根を止めた。占領後は盗む壊すは、女を滅茶苦茶に
      した」
      「いいかね、女は愛すもの。我がイタリアの十八番ね、野蛮人嫌い」
毛沢東   「まあ、ロシアはそうでも、中国は違いますぞ、紅楼夢の国です」
ムッソリーニ「今のは、おそらくエロいって意味なんだろうな、何それ」
      「我が国は、アモーレ、カンターレ、マンジョ―レの国だ」
      「人生は愛して、歌って、食べてが、イタリアそのもの」
毛沢東   「あの、統領、それでは戦争に勝てんでしょ」 
      「ドイツは嘆いてましたぞ、イタ公のせいだって」
ムッソリーニ「何を言う。ローマ帝国を見よ、野蛮人どもを駆逐したぞ」
      「ヨーロッパ大陸をほぼ全部、ブリテン南部、北アフリカまでもな」
      「こんなに強い国があったか、連戦連勝のたわものよ」
      「わしはな、ローマ帝国の復活を夢見て戦って来たんだ」
毛沢東   「それはそれは、大昔はそうでも、リビア戦線でボロ負けしましたな」
      「ドイツのロンメルの足を引っ張ってばかりが、事実なのでは」
ムッソリーニ「わしは鼓舞したぞ、信じるべし、従うべし、戦うべしとな」
      「これは思うに、祖国のマンマとレディーのせいかもな」
      「我が国民は移り気なのだよ、割に合わない事は特にな」
毛沢東   「あなたと、ヒットラーの関係は?」
ムッソリーニ「弟分だよ。毒のあり過ぎる弟。いろいろとあったな」
      「そうだな、あの男はわしを信奉していた、真似もされた」
      「ローマに呼び、大群衆を前に演説した時は、横で上気してたな」
      「ファシズムは、わしから学んだ。大衆を融合するすべを」
      「ただ、わしは最初から大声で演説するが、あの男は違っていた」
      「小声から話し出す、みんなが聞こうするまではな、後はまくし立て
      る」
      「そう、ローマ式敬礼も真似された、格好良く、ハイルと叫ばせた」
      「ヒットラーは化け物だよ。わしも仕舞いには怖気づいた」
      「戦争末期、軍のクーデターで一夜にして刑務所に入ってた時だ」
      「わしを救い出してくれた。スイスへの逃亡、後ほんの一歩だった」
      「パルチザンめ、わしに期待してた時もあったであろうに」
      「これがイタリア、まさにイタリア、わしがイタリアそのものだ」
      「ドイツの千年王国は夢となった、第二ローマ帝国も夢まぼろしとな」
毛沢東   「最後にお聞きいたす、ヒットラーが自殺した時、天界で何を思いまし
      たか?」
ムッソリーニ「何も思わなかった。ただ、抱き合った……」


類は類を呼ぶである。
この二人は、お互いの中に自分を見たのであった。
まるで自分の分身が、ドイツに現れたり、またイタリアに現れたりするかのように。
もし悪魔がいるとすると、このような形で現れるのだろうか。
二人の始まりは、売れない画家と、熱心な教師だったが……
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