江戸情話 てる吉の女観音道

藤原 てるてる 

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初夢、かずのこ天井(九話)

 こん前の話の続きだて、おフクの肉布団で寝てての、初夢のことだて。朝んなり、置屋を後にしてからの、どうも思い返されてな。
 こげな、夢だったて……

 ……オラは、深い洞窟ん中を、手探りで奥へ奥へと吸い込まれていったんや。 
 なんか手には、ざらざらとしたツブツブがあたる。何じゃよ、これ。凝り性のオラは、数を数えてみた。こりゃ無数にあるわいなあ。そんげんこつ、やってる場合でねえ。もっと奥さ、行くべ。おいおい、しかし、このツブツブは続くのう。どこまでかいな。こんだは、モニョモニョとしてきたわいな。何て洞窟や。あいやぁ、こいわ行き止まりかや、コリコリしてるわな。
 と、そん時、どぶーんと大波がきて、オラは目醒ましたんや。イカくせえったらありゃしねえ。
 何か、妙な夢だったなも。まあ、ええわい。一年の計は、吉原に始まり、吉原に終わるじゃ。また、行こ。

 オラ「トミさんや、オラの見た初夢だどもの、妙だったて。長い洞窟ん中で、かずのこ、みてえんのを数える夢でのう。そんしたら、行き止まりで大波くらっての、さんざんだったて。こいは、縁起がいいんだか悪いんだか、わからんのう」
 トミ「兄さんや、そいはええ夢を見なさったなも。大当たりやで。吉夢や。そんで正夢やで。何を隠そう、こんワラが、かずのこ天井だて。男はんは、みんな大波を流しよるわいのう」
 オラ「ほっかほっか、じゃ年明けそうそう、縁起がええってこつやな。そうすっと、トミさんは、かずのこん数はどれぐれえあるんじゃ?」
 トミ「そんなん、自分じゃ数えらんねえ。兄さん、数えてくんねかや」
 オラ「よかよか、数えまくって、全部喰いまくったるわい」
 トミ「兄さんも、大波できてんか、さあ、ワラは大波がええ、ええ……」
 オラ「おお、かずのこは大好物じゃー」


 
 慶応二年、さて、どげな一年になっかな。 
 よか初夢が正夢になんとは、大いに結構のこつよ。
 しかしのう、おトミにはまいった。お手上げじゃたわ。こん世の中には、おるんよのう。
 オラは、かずのこが大好きじゃ。
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