神子のピコタン

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パピコの物語 1

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ポコッスとピコタンには姉がいる。

名前はパピコ。

左まぶたから頬にかけて、ざっくり傷痕があり、傷のまわりは雑菌が入ったせいか赤黒いまだらなアザになっている。左目の視力はあるが半分しか開かない。
左腕は、左手首から先が無い。
どこかで孤児だったのを、おじさんとおばさんが拾ってきた。

パピコもその見た目からか、あまり外に出たがらない。
「醜いし陰気くさい、手がひとつしかないから、ちゃんと働けない。あの娘はどこにも嫁にいけないお荷物だろ。きっと罪人の娘だよ。」と村の大人たちは言った。

大人がそんなだから、子供たちもひどい言葉を浴びせたり、石を投げつけたりしてイジメてた。
その度に、おじさんとおばさんは怒った。
「醜いのはお前じゃ!こんクソガキが!」
他の親たちと揉めているおじさんとおばさんを見て、パピコはかばってもらえて嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちがごちゃまぜになった。

パピコが年ごろになると、表立ってイジメてくる奴はいなくなった。
ただ男どものなかで「お化け女、ハズレくじ」というような悪口はしょっちゅうだった。

だけど女の子たちとは仲良くなれた。
女たちはジャムやピクルス、塩漬け肉の保存食を作るために週に一度は集まる。
老女たちはパピコを見るとあら嫌だと顰めっ面をしたが、世間話や、旦那の愚痴などおしゃべりを聞きながら、作業したり、縫いものをしたりするのは楽しい。
パピコが左腕で布を押さえながら器用に縫いものをすると「パピコちゃん上手ね。」と女の子たちは褒めてくれた。

同年代の女の子たちと、お互いの髪を結ったり、爪の色を染めたりするおしゃれを一緒に楽しむようになると、友だちが意地悪な男の子たちから守ってくれるようになった。

何人かは弟のポコッス目当てだった。ポコッスは面白くて優しい。でも、それこそパピコの自慢のひとつ。
「お父さんがハゲてるから、ポコッスもそうなるって怯えてるの。」と言うと、みんなキャッキャ笑った。

家には、陽気なおじさんとおばさんがいて、ポコッスがいつも笑わせてくれて、ピコタンはニコニコしている。
自分はこんなんだから、お嫁に行けないだろうけど、みんなの助けになりたいな、とパピコは思っていた。
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