カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~

后 陸

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水の中のグラジオラス 四の章

峩々吠我 壱 その7

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 勘空は、ユキオンナを見た。

 カワイイ。

 腹に穴を開けて笑っている。
 自分は腹にツララを刺されて、、、泣きたい。

 「逃げんな逃げんな、、、ちゃうな~、動くなやw オマエ動いたらアカンで~」

 痛過ぎる。
 尋常じんじょうな痛さではない。
 身体からだが勝手にふるえる。
 止まらない。
 何か声を発しようとしたら、きっと悲鳴が出る。
 なにせ、腹に穴を開けられたんだ。

 氷の刺さった腹を見る。
 視覚的にも、痛い。
 ユキオンナを見て、勘空は恐怖する。
 ユキオンナの腹も、穴が開いているのに、、、
 、、、なのに、平気で笑ってる?

 ――何だ、この女、、、?!

 「オマエ、勝手に動いたら、も一発いっぱつからな」

 そう言って勘空を指差していた手を、そのまま澄宗に向けた。

 「ほんでオマエもからな。いつでもちんこ凍らせれるからな」

 多勢に対する無勢の闘い方の基本、人質を取る。
 隠れる場所も障害物も無いフィールドでは、有効な闘い方。
 ユキオンナは、見事に成功させていた。

 「くっそ痛いわもうっ!!」

 悪態を付きながら、歩いて来た。
 両手を地面に付く、澄宗の前に立った。

 氷のツララで吹っ飛ばされた勘空は少し離れた位置で、両足を前に出した長座ちょうざの格好で震えながら座っている。
 何故だか腹から生えた氷をずっとナデナデしていた。
 嬉しそうに、自分を囲う唱僧たちを見廻すユキオンナ。

 「あれあれ~? どしたん? さっきみたいに攻撃して来ぇへんのぉ?」

 手を拡げ、周りの唱僧たちをあおる。

 「今な~~、ガード解いてんで~~~」

 天使の笑顔が、肩を震わせて挑発する。

 「狙うんやったら、今やで~~」

 6秒は待った。
 動かない。
 動きが無い。

 「しょーもなっ!」

 吐き捨て、畝りを
 グンっと、温度が
 明かに、ではない。

 「あ、、、や、め、、!!!」

 澄宗の手をおおう氷が、腕を昇って来た。
 手首までだった氷が、生き物のように這い上がって来る。
 肘の、少し下まで。
 成す術なく、凍る自分の腕を見つめる澄宗。
 その視界のはしに、白い厚底のスニーカー、、、。

 「はい! ど~~~んっ!!」

 にこやかに、ローキック。
 地面にくっ付いていた澄宗の左前腕が、

 反動で上半身が起き上がろうとするが、右手は地面に固定されたまま。

 「はぁあアああ、、、?!」

 血は出ない。
 凍っている。
 感覚が、無い。
 痛みを感じない。

 これは、、、夢か?
 くだかれたおのれの腕を見る。

 凍って、血も流れない。
 せめて、痛みを感じたい。
 でなければ、眼の前で起こったことを、信じられない。
 腕が砕けるなんて、、、信じられない!

 「痛たたた、、、。硬いやんっ! 金属バット持って来たら良かったわ」

 ローキックした自分の足を大袈裟おおげさに痛がって、はしゃいだ声を上げるユキオンナを見上げた。
 やっぱり、わらってる。

 天使の笑顔で、地面を指さした。
 見た。
 自分の手が、地面とくっ付いていた。
 砕かれた前腕部とは対照的に手首から先、凍った左手だけがそのまま地面に残っているのを、澄宗は見ていた。

 「あああ、、、」

 何とか元通もとどおりに、、、と、かないもしない願いを込めて見つめている澄宗を見て、なにかオモシロイ事を思いついたユキオンナ。

 「ジャンピン・ぐぅ~~~~~!」

 言いながら、ぴょんっ! と跳ぶと、両足で着地。

 愚赦ぐしゃっ、、、!

 澄宗の凍った左手の上に、両足で着地していた。

 「えいっえいっ!」

 粉々になるまで、何度もその場でジャンプ。
 その仕草が、カワイイ。
 それを見つめる澄宗の眼が、虚ろになって行く。

 「お、オレの、、、手、が、、、」

 左手のあった地面を、最後にグリグリっとしてスマイル。

 「無くなったー!」

 地面がじんわり赤くなっていた。

 「え~? ここまでやっても誰も掛かって来ぇへんのぉ?」

 ユキオンナの行動に、勘空が悲鳴を上げていた。
 殺される。
 この女に、殺される。

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