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冒険の始まりと始まりの迷宮

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「すみません、この依頼を受けたいんですけど」

「はい、魔石の回収ですね。かしこまりました。冒険者証をの提出お願いします」

「同じ依頼を2人で受けることってできますか?」

 ギルド職員に冒険者証を渡しながら空太が質問する。

「はい、可能ですよ。パーティ申請はお済ですか?」

「すみません、まだです」

「わかりました。依頼を受けるのと同時にパーティ登録します」

 フォーチュンも職員に冒険者証を渡す。

「はい、終わりました。パーティは最大5名までですので申請する時は気を付けてください」

「ありがとうございます。あと迷宮なんですけど、どこにあるのですか?行き方を教えてもらえませんか」

「かしこまりました。迷宮への行き方は、あちらの出入り口を出てまっすぐ進むと街の門があります。門を出ると道が続いているのでそのままお進みください」

 職員は今まで空太が使用していた出入り口とは別の方へ手を向け説明する。

「なるほどありがとうございます」

 冒険者証を受け取り空太とフォーチュンは説明された出入り口へと歩いていく。扉を開けて外に出ると、そこは変わらず人でにぎわう露店と門へと続く道が広がっていた。

「とりあえずどの通りか確認したから、昼ご飯を先に買っておこう」

「わかりました、マスター」

 昼ごはんを買うことにした2人は人であふれる露店へと歩いていく。

「フォーチュンは何食べたい?」

「うーん……、朝のパンみたいなものがいいです」

「わかった、それじゃあパン屋へ行こうか」

昨晩空太がパンを買った露店は今日も元気にパンを売っていた。

「フォーチュン、好きなのを選んで」

「わかりました。えーと、クリームパンと朝マスターが食べていたジャムパンっていうのがいいです」

「わかった。すみません、クリームパンとジャムパンを2つずつください」

「いらっしゃい。今日も来てくれたのかい。パン4つで4大銅貨になります」

 空太は代金を支払いパンの入った紙袋を受け取るとマジックバックへ収納する。

「よし、それじゃあ行こうか」

 2人は迷宮のある門の方へ歩き始める。街の門まで着くといつもと同じように門番に冒険者証を見せ街の外へと出る。

「とりあえずこの道をまっすぐ進んでいったらあるんだよな」

「はい、そのように話されてましたね」

「迷宮ってどんな形してるんだろう。洞窟のような形かな?それとも塔のようなものかな」

 少し歩いていくと途中で道は1つの門の前で途切れる。門の前には看板が立てられている。

『原始の迷宮:リブラル』

「ギルドの職員が言ってた名前と同じだな。いよいよだな」

 空太は気を引き締め門を開ける。重い音とともに門が開くと目の前に洞窟の入り口が映る。

「洞窟か、中に入る前にカードを召喚しておくか。ちょうど周りに人はいなさそうだし。『召喚:電気うさぎ』」

 空太は洞窟に入る前に周囲を確認する。周りに人がいないことを確認すると昨晩ドローしたカードを召喚する。カードは光の粒子となり、目の前に真っ白な兎が現れる。

「か、かわいい。マスター、この子抱っこしてもいいですか?」

 空太が答える前にフォーチュンは電気うさぎへと手を伸ばす。

「危ないよ。電気をまとってるから感電するかも」

 空太がフォーチュンを止めようとするも一足遅くすでに電気うさぎは抱きかかえられていた。

「あれ?大丈夫なのか。カードのイラストだと常、に電気をまとっているような絵だったからてっきり……。とりあえず『解析』」

 イラアストとの違いを考えつつ電気うさぎのステータスを確認する。


電気うさぎ
コスト:8
Lv.1
HP:90/90
攻撃力:50
スキル:①放電Lv.1、②発光Lv.1


「攻撃スキルが1つと補助スキルが1つだな。ここはやっぱりゲーム通りなんだな。なんか気持ちよさそうだな。フォーチュン、俺にもなでさせてくれ」

 ステータスの確認が終わった空太は、電気うさぎを抱きかかえて頭をなでるフォーチュンに電気うさぎを渡してもらう。電気うさぎがフォーチュンを離れ空太の腕の中へと入った瞬間、バチバチという音とともに体から電気が流れる。

「いてててて。フォーチュンの時はおとなしかったのに俺の時はなんで」

 そう呟きながら空太は電気うさぎの方を見る。すると電気うさぎはすでにフォーチュンのもとへと帰っていた。

「大丈夫ですか、マスター?なんでこの子急に電気を流したんでしょう」

「なんでだろう。召喚したばかりなのに俺すでに嫌われてるの?」

 空太はフォーチュンに抱きかかえられている電気うさぎへと手を伸ばす。するとやっぱり体から電気が流れ、空太を襲う。

「いてててて。ってなんでフォーチュンは平気なの?」

「え?私の方には来なかったですよ?」

「はあ、もう触るのはあきらめるよ。それより迷宮に入ろう」

 こうして2人は入り口の前で一悶着ありながらも迷宮の中へ入っていった。
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