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第0章 Prologue
#1 禁断の部屋
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──「はぁ……。わたしの愛する大切な人、こんな姿になって……。堕ちていったのね……。」
1人の少女が呟いた。彼女の名前はレグナークラ・レシム、またの名を"神の如き者"。魔法学校に通う3年生、9歳だ。──
あれから17年。この世界では2度の大戦争が起こった。その2度の大戦争に立ち向かい、悪と戦った英雄こそが、あのレグナークラだ。世界中には"レグナ像"と呼ばれる、戦争があったことや彼女の存在を崇めるための像が所々立っている。この2度目の戦争で両親と離ればなれになった10歳の少女──私、森実叶子。10歳年上の姉、万智音と2人暮らしだ。私にはいとこのルーシェと名前は知らないが母の妹、その2人の親戚がいる。後者も私の両親同様に戦争で姿を消した。当時1歳だった私は11歳だった姉とは違い、ほとんど覚えていない。
その事を思い出させたのは姉が大切にしているロケットの中に入っていた1枚の小さな写真だ。どうやら写真の中の美しい少女は、当時15歳のレグナークラのようだ。その隣には、レグナークラと同じくらいの年の、よく似た少女が写っている。
「ねぇ、この人は誰なの?」
姉は静かに答えた。
「その人は……魔王。大戦争の時のレグナークラ様の相手。」
私には全くそのようなことは感じられなかった。確かに姉は"敵"ではなく"相手"とはっきり言った。
「この写真が撮られた約1ヶ月後にあなたが生まれて、そのちょうど1年後の2020年3月20日、あなたの1歳の誕生日に想像を絶する大戦争が起こったの。」
私は姉の言葉が信じられなかった。あの写真の中の少女達が戦争を起こし、それにより私が両親に会えなくなったとは。
「じゃあ、どうしてそんな写真持ってるの?」
「2人とも……私の大切な人。レグナ様だって魔王だって……。本当のことを知っているのはこの世界で私だけなの。信じて。あの方は悪くない。……ねぇ、この世界のどこかに夢の国の入り口があるって知ってる?お母さんから教えてもらったの。そこに行けば、何でも本当の事が分かるって……。今と時間はちょっと違うけど、時差のようなことだから、そこまで気にする必要はないって。あなたもあと1週間で11歳になるし、1人で行っても向こうの人達が助けてくれるよ。向こうの学校を卒業したら帰ってきてね。何か分かったことがあれば私に教えて。」
万智音は、2つある禁断の部屋の扉のうち1つを開けた。空っぽの部屋だった。
「今から1年間だけど、きっと大丈夫。行ってらっしゃい!」
「えっ……え?……うん…………。」
私は部屋の中へ足を踏み入れた。すると、もやもやしたものが部屋中を取り囲み、私はゆっくりと沈むように落ちていった。
「ねぇ、あなた助けてくださったのですか?」
「わたしはレグナークラ。みんなの心の中の英雄。私は当たり前のことをしただけよ。」
「ありがとうございます!レグナークラ様!」
もやもやの他何もない部屋の中に不思議な声が響く。
──いつの間にか、私は眠っていた。
1人の少女が呟いた。彼女の名前はレグナークラ・レシム、またの名を"神の如き者"。魔法学校に通う3年生、9歳だ。──
あれから17年。この世界では2度の大戦争が起こった。その2度の大戦争に立ち向かい、悪と戦った英雄こそが、あのレグナークラだ。世界中には"レグナ像"と呼ばれる、戦争があったことや彼女の存在を崇めるための像が所々立っている。この2度目の戦争で両親と離ればなれになった10歳の少女──私、森実叶子。10歳年上の姉、万智音と2人暮らしだ。私にはいとこのルーシェと名前は知らないが母の妹、その2人の親戚がいる。後者も私の両親同様に戦争で姿を消した。当時1歳だった私は11歳だった姉とは違い、ほとんど覚えていない。
その事を思い出させたのは姉が大切にしているロケットの中に入っていた1枚の小さな写真だ。どうやら写真の中の美しい少女は、当時15歳のレグナークラのようだ。その隣には、レグナークラと同じくらいの年の、よく似た少女が写っている。
「ねぇ、この人は誰なの?」
姉は静かに答えた。
「その人は……魔王。大戦争の時のレグナークラ様の相手。」
私には全くそのようなことは感じられなかった。確かに姉は"敵"ではなく"相手"とはっきり言った。
「この写真が撮られた約1ヶ月後にあなたが生まれて、そのちょうど1年後の2020年3月20日、あなたの1歳の誕生日に想像を絶する大戦争が起こったの。」
私は姉の言葉が信じられなかった。あの写真の中の少女達が戦争を起こし、それにより私が両親に会えなくなったとは。
「じゃあ、どうしてそんな写真持ってるの?」
「2人とも……私の大切な人。レグナ様だって魔王だって……。本当のことを知っているのはこの世界で私だけなの。信じて。あの方は悪くない。……ねぇ、この世界のどこかに夢の国の入り口があるって知ってる?お母さんから教えてもらったの。そこに行けば、何でも本当の事が分かるって……。今と時間はちょっと違うけど、時差のようなことだから、そこまで気にする必要はないって。あなたもあと1週間で11歳になるし、1人で行っても向こうの人達が助けてくれるよ。向こうの学校を卒業したら帰ってきてね。何か分かったことがあれば私に教えて。」
万智音は、2つある禁断の部屋の扉のうち1つを開けた。空っぽの部屋だった。
「今から1年間だけど、きっと大丈夫。行ってらっしゃい!」
「えっ……え?……うん…………。」
私は部屋の中へ足を踏み入れた。すると、もやもやしたものが部屋中を取り囲み、私はゆっくりと沈むように落ちていった。
「ねぇ、あなた助けてくださったのですか?」
「わたしはレグナークラ。みんなの心の中の英雄。私は当たり前のことをしただけよ。」
「ありがとうございます!レグナークラ様!」
もやもやの他何もない部屋の中に不思議な声が響く。
──いつの間にか、私は眠っていた。
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