ざふぁんじゃ!!!

第1章 the Mysterious World

#4 学校探検

｢まさか。校長先生が担任なんて。もう最高じゃないっ♪｣
　私は嬉しそうにエレンに話しかけた。しかし、エレンはそうとは思っていないようだった。
｢当たり前じゃん。だって、この学校には先生が１人しかいないんだから。ずーっと同じ先生って退屈だよ。噂うわさではエルミー先生が分身の魔法を使って各クラスの担任をしているだとか……想像するだけで気持ち悪いよ。｣
　私は思わず吹き出した。
｢エレンちゃん、先生が怖いの？｣
｢怖いなんて、大胆不敵なこのエレネヴ･ホーアムがまさかでも思ったりしないよ。エルミー先生はあたしの命の恩人なんだから！｣
エレンは得意げそうに言った。
｢命の恩人……？｣
私はエレンと校長先生の間に何があったのか知りたがった。
｢なっ、何でもないよっ！これはプライベートだから……｣
エレンは答えてくれなかった。
｢ところで……これは？｣
私は初めて出会った時からずっとエレンが身につけていた黄金おうごんのクローバーのような形をしたアクセサリーが付いたネックレスが気になり、思わず聞いてみた。
｢これは……レリーフ。"浮き彫り"よ。あの先生からもらったの。｣
何かぎこちない表情でエレンは答えてくれた。するとそこへ、あの声がした。
｢待って！このレリーフはただの浮き彫りじゃない！｣
　やっぱりあの美少女だった。プラチナブロンドの美少女は私に必死に何かを伝えようとしていたが、エレンの瞬間移動に巻き込まれたせいで、続きは聞けなかった。

｢わぁ……すごいよ……。｣
　私達２人は、身長100cmほどの幼い女の子の像の前にいた。像の下には、｢鏡を見る小さな英雄｣と書かれていた。どうやらこの英雄と呼ばれる女の子は鏡を覗のぞき込んでいるみたいだ。石でできた反射しない鏡の向こうには、しっかりとその女の子がもう１人いる。そこへ、エルミー校長先生が歩いてきた。先生は私に、この像について語ってくれた。
｢この像の本当の題名は"鏡を見る小さな英雄"ではないのよ。｣
　私は思わず息をのんだ。
｢この像は本来、"壁越しに話しかける幼い双子の英雄と魔王"という題名で私わたくしが作ったものよ。誰かがいたずらしたのよ。｣
｢魔王とレグナークラ様は双子だったんですか？｣
｢ええ、そうよ。｣先生は続けて語った。｢２人とも、とても優秀な生徒よ。あの双子が揃そろって入学してきた時、私わたくしは思わず見とれてしまいました。その２人はそれぞれ、"神のごとき者"、"暁の輝ける者"と呼ばれていました。実は私わたくしは、２人の本当の名前を知っているのです。｣
｢それなら、レグナークラというのは本当の名前じゃないのですか？｣
｢……これ以上は言ってはならないのです。本当の名前は教えてはならないのですよ。もし秘密を漏らしてしまった人には、レグナークラ様の恐ろしい天罰が下くだるのです。でも、名前以外なら可能です。かつてレグナークラ様と魔王は非常に仲良しでした。しかしいつの日か、あれは確か彼女達が3年生の頃、魔王はそのことに対し不満を感じるようになってきたのです。レグナークラ様を困らせようと、魔王は街を破壊し始めたんです。レグナークラ様は困った街のみんなを助けるために、自らの愛する妹と戦うことを決めたのです。レグナークラ様は見事戦いに勝利し、魔王を封印したのです。彼女はとても優しかったので魔王を封印した後に、自分の魔法で付けてしまった傷を、魔王の傷を治したんです。そして破壊された街は元通りになりました。当然のこと、レグナークラ様の噂は世界中に広まり、彼女は天使のようだと言われました。しかし、本当は彼女自身が本当の守護天使だったのです。彼女は守護天使としての役目を果たしただけと言ったのです。｣
　どこかで聞いたことのある話が少し混じっていた。私はその話をより詳しく聞いた気分だった。しかし、よく考えてみると、不思議な所がある。なぜ、彼女達は双子なのに守護天使と魔王という全く違うものなんだろう……。私はそのことについて質問した。
｢２人とも、守護天使だったんですよ。｣
　先生は優しく、いや、どこか悲しそうな顔をして答えた。
｢卒業生の像を作るなんて、先生は生徒想いなんですね。｣
　私は先生に言った。
｢ありがとう。でも、その２人はこの学校の卒業生ではないのよ。｣
　なぜ、この学校の校長先生が別の学校の卒業生の像を作って、しかも校内に置いておくのだろう……？私は疑問に思った。