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第1章 the Mysterious World
#5 おとまり
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気がつくと、先生もエレンもいなくなっていた。代わりに、忘れられていた妖精ラクスフェルアが人間の姿をして立っていた。
「もう下校の時間だ。」
私はこの前と同じようにラクスフェルアと手を繋いだ。
「モーヴェレ・アッド・ドムム!」
私はもうこの体が軽くなる感覚には慣れた。しかしエレンの時とは違い、足元には何も出てこなかった。
「ここが今日から君の家だ。」
私達はエリス魔法学校の建物によく似た、おしゃれなお城の前にいた。すると奥から聞き慣れた声がした。
「ちょっとラクスフェルア、何勝手にあたしの家を奪おうとしてるの?」
やっぱりだ。エレンがそのお城の中から出てきた。
「ここがエレンちゃんの家なの?すごい、大きーい!」
私は思わず口にした。
「そうよ。この暗黒の森の中に、あたしが建てたの。あたし、こういう場所大好きだから。」
エレンちゃんってちょっと変わった子……。
「あ、そうだ。かなこ、どーぉぞ中入って!あっ、ラクあんたはダメ。さっき勝手にあたしの家盗もうとしたから。」
エレンは私を連れて、瞬間移動の魔法で家の中へと入った。自分の家なんだから、いちいち魔法で入らなくても……と言いたかったが、どうやらエレンは家の鍵をなくしてしまったようだ。
「でも安心して。いくら魔法で自分の家に入るような人でも、他人の家に入るには別の呪文が必要だから。それに、最近の家には呪文の音声認識機能が付いていて、登録した声の人以外は呪文が効かない。あたしも学校でそれを知ったら、急いで取り付けたよ。だから泥棒は入れない仕組みになってる。最近の防犯ってホントすごい。でも家自体壊されたら終わりだけどねー……。」
さすがは学年2位(という噂)の天才エレンちゃん。しかし、エレンに対してこれは禁句だ。負けず嫌いのエレンは、学年トップを取らないと気が済まないらしい。
「ちなみに、うちはラクの声は登録してないけどねー♪」
不思議な形の窓の外には、不気味な色をした空、そして闇の色に輝く月があった。私にとってはハロウィン並みの怖さだが、これがエレンにとっては最高の眺めらしい。私はエレンに気づかれないようにそっと窓を開け、かわいそうなラクスフェルアを入れてあげた。
「あっ、そうだ!」
エレンは何かを思い出し、部屋を出ていってしまった。この隙に、私はラクスフェルアと一緒に、「侵入大成功!」と小さな声で言い、ガッツポーズをした。
しばらくすると、エレンが大きな袋を抱えて歩いてきた。
「エレンちゃん、その袋は?」
「校長先生から預かったの。これ全部あんたにって。」
まずエレンは、50cmほどで先にはピンクの宝石とその横に翼が付いており下には2匹のヘビを絡ませたような形のものが付いている、おしゃれな杖を取り出した。
「これは、カデュケウスといって、エルミー先生のお墨付きだよ。」
「えっ、そんなのを私に……?」
「これはミニ版だよ。あんたみたいな初心者なんかには、壊されるのが怖くて本物を渡したりなんてしないよ。いくらレグナでもね。」
「えっ?今、なんて言った?レグナでも?エレンちゃんは1年生の時のレグナークラ様と魔王を見たことがあるの?」
「噂で聞いただけだよ。エリス生は、あそこらへんの話になると目がないんだから……。それに、4年生の時歴史の授業で習ったし……。」
エレンは、レリーフの時のようなぎこちない表情を見せた。私はこんな時、あのプラチナブロンドの美少女がいてくれたらなぁ……と思った。しかし、ここはエレンの家の中である。いくらあの少女でも、この防犯対策が頑丈な家の中には入れない。
「ここは、唯一あの子が入れない所だから、すっごく心が落ち着くの。でもそれ、あのお守りのせいなのかも。」
エレンが一瞬首に掛かっているレリーフに視線を向けたのを私は見逃さなかった。
次にエレンが取り出したのは、5冊の分厚い本だった。
「これ、ぜーんぶエリス校の教科書だよ。これがさっき言ってた魔法界の歴史。たぶんあんたの知りたいことは、ここに全部書いてある。で、これが呪文集5年。魔法使いに一番大切な教科だよ。これが、魔法界の文字。こっちのほうが大事かも。これが、魔力おまじない大百科。これを覚えておくといろんな時に助かるよ!それから最後のこれは……何これ?『5年生から始める"神の如き"魔法使いへの道』……?初めて聞く名前だよ。あっ、あたしの机の中にもちゃんと入ってる。名前が長すぎるから、略して"神魔法"ね!まだよくわかんないけど、きっとすっごく楽しい授業だよ!」
エレンは最後に、袋の中に残った白いものを広げた。どうやらマントらしい。
「これはね、すごいんだよ!」
エレンは大興奮して言った。
「あっ、あのヒーローがよく空を飛ぶのに使ってるやつ?」
「…………違うって。魔法使いのファッション的な……。」エレンは呆れた表情から再び笑顔になって話し始めた。「呪文の言葉さえ知っていれば、どんな色にも、どんな模様にも、どんな形にでも!自由自在だよ、ほらね!」
エレンは自分の鞄の中から、紫とピンクのグラデーションで宇宙のような柄の付いた、下にレースのあるマントを取り出した。そこへ、ラクスフェルアがこっそりと近づいてきた。
「もう寝る時間ですよ、エレン様。」
「きゃっ、いつからいたのラク!びっくりしたじゃん。」
エレンはもう全然怒ってはいなかった。
「もう下校の時間だ。」
私はこの前と同じようにラクスフェルアと手を繋いだ。
「モーヴェレ・アッド・ドムム!」
私はもうこの体が軽くなる感覚には慣れた。しかしエレンの時とは違い、足元には何も出てこなかった。
「ここが今日から君の家だ。」
私達はエリス魔法学校の建物によく似た、おしゃれなお城の前にいた。すると奥から聞き慣れた声がした。
「ちょっとラクスフェルア、何勝手にあたしの家を奪おうとしてるの?」
やっぱりだ。エレンがそのお城の中から出てきた。
「ここがエレンちゃんの家なの?すごい、大きーい!」
私は思わず口にした。
「そうよ。この暗黒の森の中に、あたしが建てたの。あたし、こういう場所大好きだから。」
エレンちゃんってちょっと変わった子……。
「あ、そうだ。かなこ、どーぉぞ中入って!あっ、ラクあんたはダメ。さっき勝手にあたしの家盗もうとしたから。」
エレンは私を連れて、瞬間移動の魔法で家の中へと入った。自分の家なんだから、いちいち魔法で入らなくても……と言いたかったが、どうやらエレンは家の鍵をなくしてしまったようだ。
「でも安心して。いくら魔法で自分の家に入るような人でも、他人の家に入るには別の呪文が必要だから。それに、最近の家には呪文の音声認識機能が付いていて、登録した声の人以外は呪文が効かない。あたしも学校でそれを知ったら、急いで取り付けたよ。だから泥棒は入れない仕組みになってる。最近の防犯ってホントすごい。でも家自体壊されたら終わりだけどねー……。」
さすがは学年2位(という噂)の天才エレンちゃん。しかし、エレンに対してこれは禁句だ。負けず嫌いのエレンは、学年トップを取らないと気が済まないらしい。
「ちなみに、うちはラクの声は登録してないけどねー♪」
不思議な形の窓の外には、不気味な色をした空、そして闇の色に輝く月があった。私にとってはハロウィン並みの怖さだが、これがエレンにとっては最高の眺めらしい。私はエレンに気づかれないようにそっと窓を開け、かわいそうなラクスフェルアを入れてあげた。
「あっ、そうだ!」
エレンは何かを思い出し、部屋を出ていってしまった。この隙に、私はラクスフェルアと一緒に、「侵入大成功!」と小さな声で言い、ガッツポーズをした。
しばらくすると、エレンが大きな袋を抱えて歩いてきた。
「エレンちゃん、その袋は?」
「校長先生から預かったの。これ全部あんたにって。」
まずエレンは、50cmほどで先にはピンクの宝石とその横に翼が付いており下には2匹のヘビを絡ませたような形のものが付いている、おしゃれな杖を取り出した。
「これは、カデュケウスといって、エルミー先生のお墨付きだよ。」
「えっ、そんなのを私に……?」
「これはミニ版だよ。あんたみたいな初心者なんかには、壊されるのが怖くて本物を渡したりなんてしないよ。いくらレグナでもね。」
「えっ?今、なんて言った?レグナでも?エレンちゃんは1年生の時のレグナークラ様と魔王を見たことがあるの?」
「噂で聞いただけだよ。エリス生は、あそこらへんの話になると目がないんだから……。それに、4年生の時歴史の授業で習ったし……。」
エレンは、レリーフの時のようなぎこちない表情を見せた。私はこんな時、あのプラチナブロンドの美少女がいてくれたらなぁ……と思った。しかし、ここはエレンの家の中である。いくらあの少女でも、この防犯対策が頑丈な家の中には入れない。
「ここは、唯一あの子が入れない所だから、すっごく心が落ち着くの。でもそれ、あのお守りのせいなのかも。」
エレンが一瞬首に掛かっているレリーフに視線を向けたのを私は見逃さなかった。
次にエレンが取り出したのは、5冊の分厚い本だった。
「これ、ぜーんぶエリス校の教科書だよ。これがさっき言ってた魔法界の歴史。たぶんあんたの知りたいことは、ここに全部書いてある。で、これが呪文集5年。魔法使いに一番大切な教科だよ。これが、魔法界の文字。こっちのほうが大事かも。これが、魔力おまじない大百科。これを覚えておくといろんな時に助かるよ!それから最後のこれは……何これ?『5年生から始める"神の如き"魔法使いへの道』……?初めて聞く名前だよ。あっ、あたしの机の中にもちゃんと入ってる。名前が長すぎるから、略して"神魔法"ね!まだよくわかんないけど、きっとすっごく楽しい授業だよ!」
エレンは最後に、袋の中に残った白いものを広げた。どうやらマントらしい。
「これはね、すごいんだよ!」
エレンは大興奮して言った。
「あっ、あのヒーローがよく空を飛ぶのに使ってるやつ?」
「…………違うって。魔法使いのファッション的な……。」エレンは呆れた表情から再び笑顔になって話し始めた。「呪文の言葉さえ知っていれば、どんな色にも、どんな模様にも、どんな形にでも!自由自在だよ、ほらね!」
エレンは自分の鞄の中から、紫とピンクのグラデーションで宇宙のような柄の付いた、下にレースのあるマントを取り出した。そこへ、ラクスフェルアがこっそりと近づいてきた。
「もう寝る時間ですよ、エレン様。」
「きゃっ、いつからいたのラク!びっくりしたじゃん。」
エレンはもう全然怒ってはいなかった。
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