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約束通り兵士用の装備セットがはいった布袋と少々のお金が入れてある巾着を貰った俺は、ヘインズと呼ばれた騎士団長さんから命令された、従士の方に丁寧にお礼をした。
城外まで見送られた俺は、可及的速やかにその場から立ち去ると、すぐに王都の中心部から逃げるように移動した。
なぜならあるパターンの一つでは、そのまますぐに追手を放たれ殺されるケースもあるからだ。
しかし運のいい事に、ただの一兵卒にそこまでの労力を使う価値もなかったらしい。
ビクビクしながら何度も振り向いて確認したのだが、流石にそこまでの悪意はないようで、後からついてくる者はいないようだった。
そこでひとまず安心した俺は、今後の事を考える為、宿屋に入る事にした。
何をするにしてもこれからはこの世界で生きていかなくてはならないからだ。
王城から城下町の南へと移動しながら見てきたこの世界は、やはり定番の中世ヨーロッパあたりの雰囲気がする。
まれに近未来的な世界だったり、または戦国時代的な世界だったりする例外もあるのだが、どうやらここは最もポピュラーな異世界のようだ。
ちなみにポピュラーな異世界とは説明をするまでもなく皆さんのほうが良く知っている剣と魔法の世界である。
千葉にあるのに東京と言い張る某、夢と魔法の世界とはまるで違う。
まぁそんなことは良いとして、俺はそこそこ小ぎれいで安そうな宿屋(ひよこの宿)の中に入った。
入口の左側にはカウンターがあり愛想の良さそうな、少しふっくらした中年の女将さんがにこやかな笑顔で対応してくれた。
「いらっしゃいませ。宿泊かい?」
「はい、一人なのですがおいくらでしょうか?」
「うちは素泊まりなら20ドロル。夕食は6ドロル 朝食は4ドロルだよ。どうするね?」
女将さんの言葉に俺ははっとして巾着袋の中身を見た。
大きな銀貨が3枚、小さな銀貨が3枚、それと大きな銅貨が3枚に小さな銅貨が3枚入っているようだ .
これはいったいいくらなのだろうか。
少しだけ考えた後、俺は完全にカンで小さな銀貨を3枚渡した。
すると女将さんが少し驚いた顔をした。
「えっ300ドロル? なんだいあんた連泊かい、何日泊まるつもりだい?」
そう言われた事で俺のカンは良い方に外れていた事が確定した。
「あっすいません。間違えました、あははは」
俺はついうっかり間違えたフリをして、小さな銀貨を受け取り、大きな銅貨を3枚渡した。
「ははは、あんた変わった人だね、2食付きでいいのかい?」
「はい、お願いします」
「あいよ、空いてるのは2階の2号だね、食事はだいたい6時から8時の間だよ、この札と交換になるからね」
そう言って女将さんは2の2と書かれた部屋の鍵と2枚の食事札を渡してくれた。
どうやら大きな銅貨が10ドロルだったようだ。
俺はカウンター横の階段を上がって2階に上り、2の2と書いてある扉を開けた。
室内は古いが清潔そうなベッドが一つと小さなテーブルが一つある、四畳半位の部屋だった。
正面の木窓は開かれて明るい。
テーブルには茶色い土器の小皿に使いかけのロウソクが置いてある。
天井や壁には照明らしきものはない。
夜はかなり暗いだろう。
俺はベッドに座り荷物をその横に置いて一息ついた。
喉が渇いた俺は通勤用のリュックから650ミリリットルの鶴瓶の麦茶を取り出してゴクゴクと飲んだ。
「ふぅー、さあこれからが問題だぞ」
俺はこの世界で生きていくために、現在の持ち物をチェックする。
まずは装備セットだ。
従士から貰った鞘付きの兵士の剣を手に取り確かめるように鞘から抜いた。
シンプルな両刃の直剣でそこまでは重くはない。軽く振ってみるが使いやすそうではある。
次は白いカッターシャツを脱いで長袖のシャツの上に革の鎧を身に付けてみる。
うん、悪くない。
さらに籠手を嵌めて、革のブーツを装備したあと、確かめるように少し動いてみたのだが違和感なく動けそうだ。
意外といいかもしれないな。
そう思いながら自分の格好を確認してみると、この宿に来るまでに何人か見かけた、その辺に歩いている冒険者や兵士達と変わらないような物だった。
これなら何とかなりそうだ。
まぁ従士の人も一般兵士の装備と言っていたから、とりあえずの初期装備としては別段問題ないようだ。
そして巾着に入れられていた資金の残りは、大きな銀貨(大銀貨と呼ぶ)が3枚と銀貨が3枚、それと銅貨が3枚だ。
ここの宿代が一泊二食付きで大銅貨3枚だったので、大銅貨=10ドロルが1000円くらいだとすると、大銀貨が1000ドロル、銀貨が100ドロル、銅貨が1ドロルなのだろう。
つまりおおよそ33万円位はあるようだ。
異世界へいきなり連れて来られたことを考えれば、決して多いとは言えないが、それなりには優遇してくれたようだと感謝する。
ってそんな訳あるか! アホか!
ばかばかしい。
異世界へ転生して無双する妄想は何度もしてきたが、兵士ってなんだよ兵士って。しかもご丁寧に一兵卒とは何事だ。
宿に入って落ち着いたせいか、だんだんと腹が立ってきた。
俺は只野平治 26歳。
地元の高校卒業からの地元企業に就職したどこにでもいる凡人だ。
その後何度か転職してたものの、今は一人暮らしでサラリーマンをしながら、副業としてのバイトやネットの資産運用で貯金総額500万だった。
一般庶民としては優秀だろう。
さらに、近場の足として125ccバイクを所有し、軽自動車とはいえ200万オーバーの新車を買ったばかりだ。
俺の順調な人生を返してくれよ、とは言わないが俺のバイクに車、500万の資産はどうしてくれんだよ!
だんだんイライラしてきた俺は、そのままベッドにダイブしてしばらくジタバタしていた。
城外まで見送られた俺は、可及的速やかにその場から立ち去ると、すぐに王都の中心部から逃げるように移動した。
なぜならあるパターンの一つでは、そのまますぐに追手を放たれ殺されるケースもあるからだ。
しかし運のいい事に、ただの一兵卒にそこまでの労力を使う価値もなかったらしい。
ビクビクしながら何度も振り向いて確認したのだが、流石にそこまでの悪意はないようで、後からついてくる者はいないようだった。
そこでひとまず安心した俺は、今後の事を考える為、宿屋に入る事にした。
何をするにしてもこれからはこの世界で生きていかなくてはならないからだ。
王城から城下町の南へと移動しながら見てきたこの世界は、やはり定番の中世ヨーロッパあたりの雰囲気がする。
まれに近未来的な世界だったり、または戦国時代的な世界だったりする例外もあるのだが、どうやらここは最もポピュラーな異世界のようだ。
ちなみにポピュラーな異世界とは説明をするまでもなく皆さんのほうが良く知っている剣と魔法の世界である。
千葉にあるのに東京と言い張る某、夢と魔法の世界とはまるで違う。
まぁそんなことは良いとして、俺はそこそこ小ぎれいで安そうな宿屋(ひよこの宿)の中に入った。
入口の左側にはカウンターがあり愛想の良さそうな、少しふっくらした中年の女将さんがにこやかな笑顔で対応してくれた。
「いらっしゃいませ。宿泊かい?」
「はい、一人なのですがおいくらでしょうか?」
「うちは素泊まりなら20ドロル。夕食は6ドロル 朝食は4ドロルだよ。どうするね?」
女将さんの言葉に俺ははっとして巾着袋の中身を見た。
大きな銀貨が3枚、小さな銀貨が3枚、それと大きな銅貨が3枚に小さな銅貨が3枚入っているようだ .
これはいったいいくらなのだろうか。
少しだけ考えた後、俺は完全にカンで小さな銀貨を3枚渡した。
すると女将さんが少し驚いた顔をした。
「えっ300ドロル? なんだいあんた連泊かい、何日泊まるつもりだい?」
そう言われた事で俺のカンは良い方に外れていた事が確定した。
「あっすいません。間違えました、あははは」
俺はついうっかり間違えたフリをして、小さな銀貨を受け取り、大きな銅貨を3枚渡した。
「ははは、あんた変わった人だね、2食付きでいいのかい?」
「はい、お願いします」
「あいよ、空いてるのは2階の2号だね、食事はだいたい6時から8時の間だよ、この札と交換になるからね」
そう言って女将さんは2の2と書かれた部屋の鍵と2枚の食事札を渡してくれた。
どうやら大きな銅貨が10ドロルだったようだ。
俺はカウンター横の階段を上がって2階に上り、2の2と書いてある扉を開けた。
室内は古いが清潔そうなベッドが一つと小さなテーブルが一つある、四畳半位の部屋だった。
正面の木窓は開かれて明るい。
テーブルには茶色い土器の小皿に使いかけのロウソクが置いてある。
天井や壁には照明らしきものはない。
夜はかなり暗いだろう。
俺はベッドに座り荷物をその横に置いて一息ついた。
喉が渇いた俺は通勤用のリュックから650ミリリットルの鶴瓶の麦茶を取り出してゴクゴクと飲んだ。
「ふぅー、さあこれからが問題だぞ」
俺はこの世界で生きていくために、現在の持ち物をチェックする。
まずは装備セットだ。
従士から貰った鞘付きの兵士の剣を手に取り確かめるように鞘から抜いた。
シンプルな両刃の直剣でそこまでは重くはない。軽く振ってみるが使いやすそうではある。
次は白いカッターシャツを脱いで長袖のシャツの上に革の鎧を身に付けてみる。
うん、悪くない。
さらに籠手を嵌めて、革のブーツを装備したあと、確かめるように少し動いてみたのだが違和感なく動けそうだ。
意外といいかもしれないな。
そう思いながら自分の格好を確認してみると、この宿に来るまでに何人か見かけた、その辺に歩いている冒険者や兵士達と変わらないような物だった。
これなら何とかなりそうだ。
まぁ従士の人も一般兵士の装備と言っていたから、とりあえずの初期装備としては別段問題ないようだ。
そして巾着に入れられていた資金の残りは、大きな銀貨(大銀貨と呼ぶ)が3枚と銀貨が3枚、それと銅貨が3枚だ。
ここの宿代が一泊二食付きで大銅貨3枚だったので、大銅貨=10ドロルが1000円くらいだとすると、大銀貨が1000ドロル、銀貨が100ドロル、銅貨が1ドロルなのだろう。
つまりおおよそ33万円位はあるようだ。
異世界へいきなり連れて来られたことを考えれば、決して多いとは言えないが、それなりには優遇してくれたようだと感謝する。
ってそんな訳あるか! アホか!
ばかばかしい。
異世界へ転生して無双する妄想は何度もしてきたが、兵士ってなんだよ兵士って。しかもご丁寧に一兵卒とは何事だ。
宿に入って落ち着いたせいか、だんだんと腹が立ってきた。
俺は只野平治 26歳。
地元の高校卒業からの地元企業に就職したどこにでもいる凡人だ。
その後何度か転職してたものの、今は一人暮らしでサラリーマンをしながら、副業としてのバイトやネットの資産運用で貯金総額500万だった。
一般庶民としては優秀だろう。
さらに、近場の足として125ccバイクを所有し、軽自動車とはいえ200万オーバーの新車を買ったばかりだ。
俺の順調な人生を返してくれよ、とは言わないが俺のバイクに車、500万の資産はどうしてくれんだよ!
だんだんイライラしてきた俺は、そのままベッドにダイブしてしばらくジタバタしていた。
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