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外章
第百三十三話.アルフィーとシルフィーと白子の旅 1
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シルフィー視点の話になります。時間は少し遡り飛行船が攻撃を受ける直前―――
エルヴァンが椅子を回収してベッドを取り出して並べている。
またする気ね。
最近は皆を回収して一人ずつイチャイチャする傾向なので、恥ずかしくなくていい。
とはいえ飛行船で移動しているため操縦者のサイファーはいるけど、ペットみたいだし一応二人っきりにはなれるから以前ほどの羞恥心はない。
今日は誰から指名されるのか、お互いに目で牽制し合っていた。
エルヴァンがウルフィーを回収しようとその肩に触ろうとした瞬間―――
―――ビクッとした白子が慌てて隣にいたアルフィーに飛び移った。
そして急にゾワっと寒気が襲って来た。
『なっ何か来る! 転移!』
白子が慌てて二人を転移させた。
――シュン。
と目の前が真っ暗になり、気がつくと地面に立っていた。
すると遠くに浮いているエアシル城が見えた。
「あれっ!? エアシル城じゃないの?」
「本当だ! エアシル城です。えっ? あれっ!? どうしてここに!? 皆は??」
隣に居たアルフィーが動揺して混乱していた。
『急に変な気が来たので慌てて転移したのだ。悪いが二人しか飛ばせなかった。あの船、エアシル城と言うのか。あの城からいきなり攻撃されたのだ』
アルフィーに抱かれている白子が悔しそうに言った。
白子が助けてくれたのだ。
「皆は大丈夫なの?」
『それはわからない。だが父 上もいるのだ。エルヴァンも死んだわけではない。おそらく捕らえられたのだろう』
「そっか、白子は獅子丸の事がわかるのね。でも獅子丸を持ってるジヤスもエルが回収してたわね。どうなるのかしら」
『そうなのだ。回収されていると異空間にいるために念話ができないのだ。だが、それでも無事な事だけはわかる。今の所問題ない』
白子にお言葉に少し安心しながらも、視線の先のエアシル城は見る見る西の方へ飛んで消えてしまった。
「そう……そうなんですね。でもエルさんなら、きっと大丈夫でしょう。サイファーさんもいますしね。あっ白子さん。助けてくれてありがとうございました」
少し落ち着いたアルフィーが白子の頭を撫でながら礼を言った。
『聖獣が主人を守るのは当たり前の事だ」
口では強気でそう言っているが、見るからに嬉しそうだ。
尻尾をブンブン振っている。メッチャ可愛い。
でも確かにそうね。なんていってもエルだもんね。うん、きっと大丈夫。
それよりもはぐれてしまった私達のほうが大変かもしれない。
「ありがとう白子、でもアルフィーさん。これからどうするのか決めなきゃね」
ふーっと大きく深呼吸をして気持ちを切り替えると、自分の装備と現状を確認する。
綺麗目の布の服に革のベスト、聖魔の腕輪に形見の腕輪、首飾りしか持ってない。
武器もマジックバッグもお金も全てエルヴァンが持っているからだ。
アルフィーも似たような恰好だ。布の服に革のベスト、聖魔のネックレスに白子の小太刀があるくらいか。
心もとない装備だが、脱がされる前だっただけに裸じゃなくて良かったと思うしかない。
まっぱでおきざりにされていたら目も当てられなかっただろう。
「そうですね、とりあえず西に向かいましょう。きっとエルさんは迎えに来てくれるでしょうから。その前にシルフィーさんは何か持ってますか? 私は何も持ってないんですよ」
二人で顔を見合わせる。
アルフィーもやっぱり何も持ってないのだ。
……これはヤバイ。
ここに来てまたホームレスになってしまった。
まさか異国でこんな事態になるなんて。
「何もないのよ…・・・あっ! そうだ」
そう言えば形見の腕輪の中にお守り用にコインを入れていたのを思い出す。
祈るような気持ちでパカっとフタを開けた。
中には銀貨一枚が見えた。
「良かった。銀貨一枚だけ持ってたわ。こんな事なら金貨に替えとけば良かったわね」
「すごいじゃないですか! 流石シルフィーさんですね。銀貨なら両替すれば何とかご飯は食べれそうですね。小太刀もあるし、白子さんもいる。何とかなりそうですね。とりあえず町を探しましょう」
ポジティブにアルフィーが元気よく笑う。
空元気かもしれないが今はそれも大事だろう。
「そうね、まず町へ行かなきゃね。結構飛んだから大分移動してると思うけど……ここはどこかしらね」
そもそもネイマール王国から遠く離れたジャポニの国なのだ。
エルにまかせっきりだったこともあり、自分がどこにいるか全く分からないのだ。
でも不思議となぜかワクワクしていた。
「ふふ、アルフィーさん。なんだかワクワクしてきたわ。私ちょっとおかしいのかしら」
「私もですよ、シルフィーさん。やっぱり冒険者なんですよ、私達」
二人で顔を見合わせて笑った。
今までの経験と自信があるからだろう。
セオリー通りまず気配探知をしてみたが、近くに魔物の気配はなかった。
ひとまず危険は無いようだ。
後は進む方向さえ分かればいい。
「こういう時は空からよね。風呼び。風の身体強化。浮遊」
風が体の周りを舞い、その力に押し上げられるようにして空に浮かんだ。
いつもの装備が無い分、魔力消費がきついがなんとか飛べる。
魔力を込めて百メートル位浮かびあがった。
辺りを見渡すと小山の向こうに海と町が見えた。
がキツイのですぐに地上に降りた。
やはりそんなに長くは飛んで居られない。
疲労感からふうーっと大きく息を吐いた。
「あっちに海と町が見えたわ。でも聖魔セットがないからあんまり飛べないの。やっぱりあの装備はすごいのね」
「そうですね。確かに今まではあの装備だからってのはありますね。でも大丈夫、ちゃんと実力も十分ついてますよ」
「そうよね、飛べるだけでも大したもんよね」
「そうですよ。幸い小太刀もあるし、私もこないだエルさんと一日冒険者セットで狩りしましたけど大丈夫でしたから。私達なら何とでもなりますよ。斬撃も飛ばせますしね」
アルフィーが笑顔で不安を吹き飛ばしてくれる。
それに唯一の武器、小太刀があって良かった。解体もできそうだし白子の存在も心強い。
「頼りにしてるわ、アルフィーさん。じゃあ何とか夜までに町まで行きましょう」
「はい、頑張りましょう」
二人と一匹で町に向かった。
一応まわりを注意しながら二時間ほど歩くと、小山の頂上付近まで来た。
視界が開けた下の先には海と町が確認できた、そしてそこに続く街道が見える。
「あっあれですね。うん、そこそこ大きな町ですね。ここからならあと二時間ってとこですね」
この分なら夕方までには十分たどり着けそうだ。
少しほっとするとともに体が水分を求めだした。
「そうね。それにしてものどが渇いたわね。お腹もすいてきたし、今はお昼過ぎて一時位かしら」
「そうですね、本当油断してましたね。いつもエルさんに出して貰ってるからいない事が不思議ですもんね」
そう、いつもエルヴァンが回収するから皆がいない事はあっても、エルヴァンがいない事が無いのだ。初めてかもしれない。
「本当ね、やっぱりは初めてなんじゃない? エルがいないなんて、そもそもマジックバッグを持っててもエルが勝手に回収しちゃうし、服だってそうじゃない。いつも布の服ばっかり着せるでしょ。だからこうゆう時困るのよ」
「ふふふ。そうですね。身に着けられるアクセサリー型の入れ物じゃない限り回収されちゃいますもんね」
文句を言うがしょうがない。それがエルヴァンなのだ。
温泉ではそのアクセサリーもすべて回収されたのだ。結局はしょうがない事か。
「まあ、しょうがないわね。普段いい思いをしてる分。ピンチになるとこうなるのね。でも町まで何とかなりそうだし、もうひと頑張りしましょう」
「ええ、そうですね」
「そう言えば白子は食べたり飲んだりしなくていいの」
『我は特に必要とはしない。もちろん旨いものを食べるのは好きだが、基本は主人の気をエネルギーにしているのだ。もし疲れるなら小太刀に戻るぞ』
白子(小さな獅子)として存在している時はアルフィーのエネルギーを使うようだ。
「大丈夫ですよ、問題ありません。居てもらった方が安心です。また何か襲ってくるかもしれませんし。癒されますからね」
アルフィーの言葉に白子は嬉しそうに尻尾を振った。
エルヴァンが椅子を回収してベッドを取り出して並べている。
またする気ね。
最近は皆を回収して一人ずつイチャイチャする傾向なので、恥ずかしくなくていい。
とはいえ飛行船で移動しているため操縦者のサイファーはいるけど、ペットみたいだし一応二人っきりにはなれるから以前ほどの羞恥心はない。
今日は誰から指名されるのか、お互いに目で牽制し合っていた。
エルヴァンがウルフィーを回収しようとその肩に触ろうとした瞬間―――
―――ビクッとした白子が慌てて隣にいたアルフィーに飛び移った。
そして急にゾワっと寒気が襲って来た。
『なっ何か来る! 転移!』
白子が慌てて二人を転移させた。
――シュン。
と目の前が真っ暗になり、気がつくと地面に立っていた。
すると遠くに浮いているエアシル城が見えた。
「あれっ!? エアシル城じゃないの?」
「本当だ! エアシル城です。えっ? あれっ!? どうしてここに!? 皆は??」
隣に居たアルフィーが動揺して混乱していた。
『急に変な気が来たので慌てて転移したのだ。悪いが二人しか飛ばせなかった。あの船、エアシル城と言うのか。あの城からいきなり攻撃されたのだ』
アルフィーに抱かれている白子が悔しそうに言った。
白子が助けてくれたのだ。
「皆は大丈夫なの?」
『それはわからない。だが父 上もいるのだ。エルヴァンも死んだわけではない。おそらく捕らえられたのだろう』
「そっか、白子は獅子丸の事がわかるのね。でも獅子丸を持ってるジヤスもエルが回収してたわね。どうなるのかしら」
『そうなのだ。回収されていると異空間にいるために念話ができないのだ。だが、それでも無事な事だけはわかる。今の所問題ない』
白子にお言葉に少し安心しながらも、視線の先のエアシル城は見る見る西の方へ飛んで消えてしまった。
「そう……そうなんですね。でもエルさんなら、きっと大丈夫でしょう。サイファーさんもいますしね。あっ白子さん。助けてくれてありがとうございました」
少し落ち着いたアルフィーが白子の頭を撫でながら礼を言った。
『聖獣が主人を守るのは当たり前の事だ」
口では強気でそう言っているが、見るからに嬉しそうだ。
尻尾をブンブン振っている。メッチャ可愛い。
でも確かにそうね。なんていってもエルだもんね。うん、きっと大丈夫。
それよりもはぐれてしまった私達のほうが大変かもしれない。
「ありがとう白子、でもアルフィーさん。これからどうするのか決めなきゃね」
ふーっと大きく深呼吸をして気持ちを切り替えると、自分の装備と現状を確認する。
綺麗目の布の服に革のベスト、聖魔の腕輪に形見の腕輪、首飾りしか持ってない。
武器もマジックバッグもお金も全てエルヴァンが持っているからだ。
アルフィーも似たような恰好だ。布の服に革のベスト、聖魔のネックレスに白子の小太刀があるくらいか。
心もとない装備だが、脱がされる前だっただけに裸じゃなくて良かったと思うしかない。
まっぱでおきざりにされていたら目も当てられなかっただろう。
「そうですね、とりあえず西に向かいましょう。きっとエルさんは迎えに来てくれるでしょうから。その前にシルフィーさんは何か持ってますか? 私は何も持ってないんですよ」
二人で顔を見合わせる。
アルフィーもやっぱり何も持ってないのだ。
……これはヤバイ。
ここに来てまたホームレスになってしまった。
まさか異国でこんな事態になるなんて。
「何もないのよ…・・・あっ! そうだ」
そう言えば形見の腕輪の中にお守り用にコインを入れていたのを思い出す。
祈るような気持ちでパカっとフタを開けた。
中には銀貨一枚が見えた。
「良かった。銀貨一枚だけ持ってたわ。こんな事なら金貨に替えとけば良かったわね」
「すごいじゃないですか! 流石シルフィーさんですね。銀貨なら両替すれば何とかご飯は食べれそうですね。小太刀もあるし、白子さんもいる。何とかなりそうですね。とりあえず町を探しましょう」
ポジティブにアルフィーが元気よく笑う。
空元気かもしれないが今はそれも大事だろう。
「そうね、まず町へ行かなきゃね。結構飛んだから大分移動してると思うけど……ここはどこかしらね」
そもそもネイマール王国から遠く離れたジャポニの国なのだ。
エルにまかせっきりだったこともあり、自分がどこにいるか全く分からないのだ。
でも不思議となぜかワクワクしていた。
「ふふ、アルフィーさん。なんだかワクワクしてきたわ。私ちょっとおかしいのかしら」
「私もですよ、シルフィーさん。やっぱり冒険者なんですよ、私達」
二人で顔を見合わせて笑った。
今までの経験と自信があるからだろう。
セオリー通りまず気配探知をしてみたが、近くに魔物の気配はなかった。
ひとまず危険は無いようだ。
後は進む方向さえ分かればいい。
「こういう時は空からよね。風呼び。風の身体強化。浮遊」
風が体の周りを舞い、その力に押し上げられるようにして空に浮かんだ。
いつもの装備が無い分、魔力消費がきついがなんとか飛べる。
魔力を込めて百メートル位浮かびあがった。
辺りを見渡すと小山の向こうに海と町が見えた。
がキツイのですぐに地上に降りた。
やはりそんなに長くは飛んで居られない。
疲労感からふうーっと大きく息を吐いた。
「あっちに海と町が見えたわ。でも聖魔セットがないからあんまり飛べないの。やっぱりあの装備はすごいのね」
「そうですね。確かに今まではあの装備だからってのはありますね。でも大丈夫、ちゃんと実力も十分ついてますよ」
「そうよね、飛べるだけでも大したもんよね」
「そうですよ。幸い小太刀もあるし、私もこないだエルさんと一日冒険者セットで狩りしましたけど大丈夫でしたから。私達なら何とでもなりますよ。斬撃も飛ばせますしね」
アルフィーが笑顔で不安を吹き飛ばしてくれる。
それに唯一の武器、小太刀があって良かった。解体もできそうだし白子の存在も心強い。
「頼りにしてるわ、アルフィーさん。じゃあ何とか夜までに町まで行きましょう」
「はい、頑張りましょう」
二人と一匹で町に向かった。
一応まわりを注意しながら二時間ほど歩くと、小山の頂上付近まで来た。
視界が開けた下の先には海と町が確認できた、そしてそこに続く街道が見える。
「あっあれですね。うん、そこそこ大きな町ですね。ここからならあと二時間ってとこですね」
この分なら夕方までには十分たどり着けそうだ。
少しほっとするとともに体が水分を求めだした。
「そうね。それにしてものどが渇いたわね。お腹もすいてきたし、今はお昼過ぎて一時位かしら」
「そうですね、本当油断してましたね。いつもエルさんに出して貰ってるからいない事が不思議ですもんね」
そう、いつもエルヴァンが回収するから皆がいない事はあっても、エルヴァンがいない事が無いのだ。初めてかもしれない。
「本当ね、やっぱりは初めてなんじゃない? エルがいないなんて、そもそもマジックバッグを持っててもエルが勝手に回収しちゃうし、服だってそうじゃない。いつも布の服ばっかり着せるでしょ。だからこうゆう時困るのよ」
「ふふふ。そうですね。身に着けられるアクセサリー型の入れ物じゃない限り回収されちゃいますもんね」
文句を言うがしょうがない。それがエルヴァンなのだ。
温泉ではそのアクセサリーもすべて回収されたのだ。結局はしょうがない事か。
「まあ、しょうがないわね。普段いい思いをしてる分。ピンチになるとこうなるのね。でも町まで何とかなりそうだし、もうひと頑張りしましょう」
「ええ、そうですね」
「そう言えば白子は食べたり飲んだりしなくていいの」
『我は特に必要とはしない。もちろん旨いものを食べるのは好きだが、基本は主人の気をエネルギーにしているのだ。もし疲れるなら小太刀に戻るぞ』
白子(小さな獅子)として存在している時はアルフィーのエネルギーを使うようだ。
「大丈夫ですよ、問題ありません。居てもらった方が安心です。また何か襲ってくるかもしれませんし。癒されますからね」
アルフィーの言葉に白子は嬉しそうに尻尾を振った。
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