アイテムボックスだけで異世界生活

shinko

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最終章

第百四十六話.でてきたオフロン

 会議室に皆で集まり朝食を食べる。

 白パン、ビーフシチュー、サラダ、フレッシュジュースだ。

「素晴らしい食事ですな。こんな美味しい物を毎日食べられるとは、拙者はいい所に仕えたようですな」

 長年貧乏暮らしをしていたジヤスが喜んでいるようだ。

 ちなみに白子も獅子丸もベビーサイファーも、一緒に食べている。


 こいつらは基本的に食べる必要がないのだが、美味しさに気付いてしまい習慣的に一緒に食べるようになっていた。 

 昨日考えた作戦を話しているうちに、オフ氏が研究部屋からノッソリと幽霊のように出てきた。

 一見、やつれていてげっそりしているが、目だけが不思議なくらいキラキラと輝いている。

 俺は思わず声をかけた。


「おう! おはようオフ氏!」

「おお、エル氏! 完成したでござる! 新飛行船オフロン号でござるよ!」


 マジか、もうできたのか!?

 すげー。

 流石オフ氏だ。


 もっと時間がかかると思っていたのだが、こんなに早く出来るとは……しかも、ついにオフロンが自分の名前を飛行船に付けたのだ。

 よほど自信があるのだろう。


「よくやったオフ氏! では早速拝見しよう」


 俺はすぐに立ち上がり、オフ氏の研究部屋に向かう。

 扉を開けて中に入る。


「どうでござる?」


 オフ氏がいかにも自信満々に俺を見るのだが、どう見ても肝心の飛行船が無い。

 どこにもそれらしき物が見当たらないのだ。

 
 ふざけているのか?


 ……いや。

 そうか。

 そうだよな……。


 俺はマジマジとオフロンの顔を見た。

 げっそりと痩せこけてしまったオフロンがニヤニヤと笑っている。

 俺の頭から急に血の気が下がった気がした。


 ついに、オフロンが壊れてしまったのだ。


 そもそもこんなに早く飛行船が出来る訳ないのだ。

 急にじわっと目に涙が浮かび、鼻の奥がツンとした。

 そしてやつれた笑顔で立っている、げっそりとしたオフロンを見つめる。


 ……俺のせいだ。


 俺がオフロンを追い詰めたのだ。


 心がギュッと苦しくなった。

 後悔の念がふつふつと湧きあがる。


「オフ氏、俺が悪かった! そんなに焦らなくてもいいんだよ。いい作戦があるんだよ」


 俺は懺悔をするようにオフロンに近づこうとした。

 しかし、オフロンはなお、自信満々の顔をしている。
 

「ほう。エル氏には、見えぬでござるか」


 あれっ?

 はっ、ま、まさか……。
 
 しばらくしてピンときた。


「まっ……まさか。オフ氏……透けてミエールEXSP】を貸してくれないか!?」

「ははは。流石エル氏。どうぞでござる」


【透けてミエールEXSP】をつけると、そこには前と同じ飛行船オフロン号があった。


「おおお! こ、これは。少し小さくなったのか? でも乗り場は太いかも」


 俺は猛烈に感動した。そう、涙がこぼれるほどに泣いてしまったのだ。


「まあまあ、ではエル氏、中へどうぞでござる」


 ゆっくりとオフロンになだめられるように肩を叩かれた。

 うなずいて扉を開け中に入ると、そこはめちゃめちゃ広かった。

 外見のコンパクトさ、とは全く違って中身は二十畳位はありそうな広さがある。


「なっ!? これは空間魔法か!」

「そうでござる。高い魔道具を使ったのでござる。魔石がでかいから何でもできるでござるよ」

「……天才だ。やはりオフ氏は天才だ!」


 これだけの広さがあれば、まるで家のように使えるぞ。

 会議室にもなりそうだし、本当に何でもできそうだ。


「そして、スピードでござるが、今回からファンでは無く、魔力を放出させて飛ぶようにしたから恐ろしいスピードが出るでござる。よって空間魔法を使ってないと、中身が飛んでってしまうでござるよ。実は広くなったのは、たまたまなのでござる」

「おおっ! すごい! すごいぞ、オフ氏」


 俺は猛烈に感動してオフ氏に抱き着いた。


「くさっ!」


 しかし恐ろしく臭かった。

 風呂に全然入ってないんじゃないか!?


「オフ氏。風呂には入れよ」

「ははは。そうでござるな」


 乙女のように照れるオフロン。


 いや、全然可愛くないから。


 しかしまあ夢中で作っていたのだろう。

 全くオフロンはしょうがないな。

 と思いながらも飛行船の出来に感心して安心した。


 でもそんな集中力を持つオフロンだからこそ、こんなに早く出来たのだ。

 そうねぎらって飛行船の出来栄えを褒めていると。


「まだまだ、でござるよ。他にも攻撃用の雷魔法と、防御用の障壁のおまけつきでござる」

「スゲー! 何それ、すごすぎない!? やっぱりオフ氏が前世でエアシル城を作ったんじゃないのか?」

「いやいや、エアシル城で移動しながら、装置を見ていたのでござるよ。それで思いついたと言うか。エアシル城にはこの機能がすべてあるでござるよ。あの城は本当にすごすぎるでござる」


 そうか、オフロンはずっと城の中で見ていたんだったな。


「そうだとしても実際作れるってすごいぞ?」


 見ただけで作れるなら誰でも一流の技術者になれるだろう。やっぱり普通じゃないのだ。


「ただ、この【見えなくなる】のと【気配・音遮断】機能は拙者のオリジナルでござる。これだけはあの城にも負けてないでござるよ」

「そうか、オフ氏。よくやってくれた。有難う」


 喜ぶ俺に、さらっと機能を説明して操縦マニュアルを渡した後、オフ氏は風呂にも入らず部屋で眠り続けた。
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