アイテムボックスだけで異世界生活

shinko

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最終章

第百四十七話.瞬間移動

 飯もろくに食べずに寝てしまったオフロンだが、睡眠欲求がよほど大きかったのだろう。

 しばらくは起きる気配がない。

「あっしに似たタイプでやんすね。集中するとやり続けて、終わったら寝るんでやんすね」

 ガイバンが眠ったオフロンを見ながら言う。確かに二人とも集中すると止まらないタイプだ。


「よし、じゃあさっそく飛行船オフロン号の試運転をしよう。広いから皆で乗ってみるか。もし、うふふしたかったら、このテント小屋(気配・音遮断付)の中ですればいいからな」

「おおっ! そんな物まで作ってたのか、やっぱりオフロンは天才だな」

 新しいアイテムにウエスタンが感心する。

「そーねー。あたしは別に見られてもいいんだけどね?」

「オスマン! 本当やめて!」

 意外な性癖を暴露するオスマンに対して、ウエスタンが泣きそうな顔をしてすがりついた。


「ははは。流石に冗談よ?」

「そ、そうだよな、もう勘弁してくれよ」 

 夫婦漫才が終わったところでさっそく飛行船に乗り込んだ。

 オフ氏もベッドごと一度回収し、飛行船の中に乗せて取り出した。もし何かあった時にすぐ起こす必要があるからだ。そういった事態が起きないことを願いたいが……。


 一瞬アルフィーに回復呪文をしてもらおうか、とも考えたがやはり睡眠は必要だろう。

 皆で乗船した後で、ゆっくりと浮き上がり練習がてらウエオス城内から外に出た。


 その後サイファー城から出た後は、地下で城そのものを回収し、無事地下から地上に出た。

 
 いよいよ新飛行船の性能を試してみよう。


 さっそく【姿消・気配音遮断】のボタンを押してみる。

 体感的には変化は無いが、これで誰にも見つからないだろう。

 俺とウエスタンで操縦席に座っているが、メインの操縦はウエスタンに任せている。

「じゃあ行くぞエル」

「おう、任せた」 


 操縦レバーを上げてゆっくりと空に浮上する。景色は動いているが浮いた感覚が体にはない。

「こいつはすごいな」

「ああ」


 試しに目いっぱいレバーを操作し、急浮上させてみた。

 ものすごい勢いで景色が下へと流れて行った。その分すごい早さで動いているのだろうが衝撃がまるでこないのだ。

 景色だけは動いているが、目をつぶってしまえば止まった部屋にいるようなのだ。

 空間魔法のせいだろう。本当に凄い飛行船を作ったもんだ。

 オフロンのすごさに感動した。


 次は前進速度を確認だ。

 こちらも同様に景色がビュンビュン飛んで行くが動いている感覚が無い。景色だけが飛んでいくのだ。

 
 動いている感覚は無いところが逆に怖い。

 もしかしたらぶつかっても感覚は無いかもしれないが、飛行船は間違いなく大破するだろう。


 調子に乗って飛ばし過ぎないようにウエスに気を付けて監視した。

 山などにぶつからないよう高く舞い上がり、上空飛行でジャポニの国を飛んで行く。

 しばらくは何も考えずに北東に向かって飛んでいた。


 気持ちよく飛んでいると、前方に海が見えてきた。

 見えたと思ったら、すぐに恐ろしい速さでグングン近づいてきてこのままだとすぐに陸から出てしまう。

 数分で本島を横断してしまったようだ。


「なんだこりゃ! めちゃくちゃ早いぞ!」

 想定外のスピードにウエスタンも驚いた。

 なんせS+の大魔石を三個も使っているのだ。

 すごいパワーがでるのだろう。


 本当に陸から海に突入しそうだが、前みたいにジャポニの国の国境があり、結界石から攻撃されるかもしれない。

「おいウエス! 結界石があるかもしれないからスピードを落とせよ!」

 俺は慌ててウエスを見るが、ウエスは何食わぬ顔で。

「ああ、陸の百メートル位にあるんだろ? 一応、障壁も張って置こう」

 と【障壁】ボタンを押した。

 そしてニヤリとしながら。


「これ、猛スピードで行ったら、結界石の攻撃より早く抜けれるんじゃないか?」

 ウエスタンが恐ろしい事を言う。

 そんな事してまた飛行船が壊れでもしたらせっかく作ってくれたオフロンに申し訳ないだろ! そんな危険を試運転でわざわざする必要がないじゃないか。という気持ちよりも好奇心が優先する。

 
「そうだな。やってみようか」

 俺の口が勝手にしゃべった。

「本気ですか!? 殿、結界石ですぞ?」
 
 すぐ後ろでハラハラしながらジヤスが驚いた。


「まあ、障壁もあるから大丈夫だろう。よしウエス。男なら行け!」

「そーだー! 行っちゃえウエス!」

 隣のオスマンもノリノリである。


「そうこなくっちゃ! 最速のスピードで天国まで行くぜ!」

 天国には本当に行っちゃだめだが、ウエスタンがスピードをMAXまで引き上げた。

「うわぁああああー!!」

「マジかぁああーーー!」

「えぇぇえええーーーーー!」

 飛行船が絶叫に包まれると同時に。

――シュン!

 と何事もなく海の上空に移動した。

「やったぁー!」

「すげぇえー!」

「すごいねー!」

 どうやら余りのスピードに、結界石は反応できなかったようだ。もしかしたらエアシル城も同じようにして通過していたかもしれない。

 無事国境を抜けて大海に出たようだ。

 目の前には一面青い海が広がっていた。
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