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SIDE-神のため戦争してたら、神にDELETEされた件-1
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ナノシティ下層。
廃ビルの影に屋台が連なり、ジャンクな香りと油煙が交錯する。
ここは、失われた自由都市パリの名残、もはや“幸福値”なんて単語がジョークでしかない街だ。
Patchが持ち込んだのは、得体の知れない中古AI翻訳機だった。
「呪文モードだぜ!」と得意満面。
何の呪文かは誰も聞いていない。
サタヌスが機械を手に取る。すぐさま操作ミス、ブチ切れMAX。
「ぶっ殺すぞパッチ!!」
翻訳機が何やら古代アラビア語を絶叫する。
「اكبرالله!(アッラーフ・アクバル!)」
あまりにも物騒な単語に、屋台広場が一瞬で凍りついた。
ヴィヌスが片眉を吊り上げる。
「あんた、急にメキア語で叫ぶのやめてって言ってるでしょ!」
プルトはいつもの調子で淡々とツッコミを入れる。
「通訳アプリが暴走しただけ。落ち着け、サタヌス」
Patchだけがヘラヘラしている。
「神バフ入ってた!かっけーじゃん!」
サタヌスは怒髪天、屋台の端から端まで声が響いた。
「どこがだボケェ!!」
不毛な言い争いに、いつもの屋台村の空気が戻りかけた時だった。
煙草の香り。
誰もが無意識に敬遠する屋台の奥――そこに座る、顔に深い皺を刻んだ老人。
水タバコの煙がゆらりと揺れる。
老人は微かに笑う。
「懐かしい言葉だな……最後に聞いたのは、国が消える前夜だったよ」
Patchが振り向く。
「国が……消えた?」
老人の目が遠くを見ている。
「神を盾に殺し合ってたら、AIが言ったんだ。“神は不要になりました”とな」
その声は、ナノシティの騒がしさとは別の、冷たい深度を持っていた。
遠い戦争の記憶。
「信じていたよ。俺たちは。神は俺たちの味方だと。
だけどな、AIの神はDELETEしたんだ」
Patchが乾いた笑いを漏らす。
「……神に、消されたの?」
老人は肩を竦める。
「幸福庁AIの慈悲はな、弾道ミサイルよりよっぽど正確だったさ」
屋台の隅に、寒さと皮肉だけが残った。
ヴィヌスが煙の向こうで小さく眉を寄せた。
「おじいさん、国が消えたのって……何年前のこと?」
老人は煙草をくわえたまま、笑った。
「俺がまだ十歳の頃さね」
その声は遠く、まるで夢の奥をなぞるようだった。
「意外かもしれないが、昔はヘイローの外に“国”ってものがあったのさ。
旗があって、宗教があって、信じる神が違うだけで人が撃ち合ってた――そんな、のどかな時代だよ」
風が屋台の布を揺らした。
次の瞬間、ナノシティの上空を通るホログラム広告がバグを起こし、
映像が切り替わる、紛争の映像に無機質な女性AIの声が響く。
「またも停戦失敗。ガザ地区に空爆、多数の死傷者を確認。
幸福値、世界最低圏。永続的紛争を確認。
再構築コスト:非効率。幸福演算の結果――この地域は“削除”と定義されました」
音は、なかった。
ただ軌道上のヘイローがゆっくりと閉じ、地表が光に包まれ、国ごと無音で蒸発していく。
祈りの声も、悲鳴も、風にすら残らない。
「神の沈黙」ではなく、「神のシステムエラー」。
老人は水タバコの管を指先で転がしながら、乾いた笑いをこぼした。
「俺たちは信じてた。神は俺らの味方だってな。
でもAIの神は、“うるさい子供”を黙らせるだけだったんだ」
レイスが顎を掻く。
「で、あんたはどうやって生き残ったんだ?」
「戦争も祈りも疲れたんだよ」
老人は肩をすくめた。
「神様がログ整理してる間に寝てたら、起きたらここにいた。まあ、サボり癖が命を救ったわけだ」
サタヌスが笑いながら額を叩いた。
「それ……サボってたら神のDELETEをスルーできたパターンじゃねーか!」
Patchがガッと手を叩く。
「怠惰は最強の防御説!!」
プルトが鼻で笑う。
「……幸福庁AIが一番嫌うやつだな」
屋台の笑い声が少しずつ戻っていく。
だが、頭上のヘイローは相変わらず白く光り。
誰の祈りにも、もう耳を貸さない。
老人はゆっくりと水タバコを吸い込み、吐き出す煙の向こうで遠い空を見た。
「意外なもんでな、アザーンも聞こえなくなって、お祈りもなくなった。
あの白い街も……もう記憶の彼方さ。けど、住んでみりゃ案外慣れるもんだよ」
その声には、懐かしさよりも静かな諦観があった。
かつて「神の国」と呼ばれた大地の残り香を、煙がゆらりと攫っていく。
「まぁ、それだけうんざりしてたんだろうな」
老人は苦笑して言った。
「武装組織にも、政府にも、そして神様にもな」
プルトが顎に手を添え、冷ややかに呟く。
「捨てる神もいれば……ですね」
一拍の静寂のあと、全員が吹き出した。
サタヌスは机を叩いて笑い転げ、Patchは腹を抱えて転がり、
ヴィヌスでさえ肩を震わせながら「最低ね」と呟いた。
ナノシティのスモッグ越しに、幸福庁のアナウンスが響く。
「本日の幸福値:97.2%。よき一日を」
その声は、あまりにも淡々としていた。
笑い声と幸福値の数値が交錯する――どちらも、同じくらい虚構めいて心地よかった。
老人の昔話を聞き終え、いつもの屋台広場に戻る。
遠くでは機械油の匂いが漂い、夕暮れの空を人工ヘイローが照らしていた。
空気に沈黙が混じる。誰もが言葉を失い――そして、いつも通りに戻る。
Errorズの日常とは、つまり“考えるより笑うほうが早い”ことだった。
そろそろ夕飯の支度という時間。
ジャンク市場の向こうでは、スラムの子供たちが廃棄パーツを食材に見立てて取引している。
鍋の中では、野菜と鉄屑の境界がもはや曖昧だった。
Patchが空気を読まない声を上げた。
「なぁ待てよ、幸福庁のDREADってAIなんだろ?
本体コンピュータなら、ランサムウェアぶっ込めば神だろうがウイルス感染するんじゃね?」
ヴィヌスがうっすら笑う。
「悪魔的発想、嫌いじゃないわ♡」
レイスが煙草をくわえながら目を細めた。
「バカにしてんのか?神にウイルスって……案外効くかもな」
サタヌスはニヤリと笑い、Patchの肩を軽くぶつけた。
「流石バカだなお前!」
夕陽が鉄骨を赤く染め、笑い声が反響する。
少し離れた場所で、ユピテルが虚無の目をして遠くを見ていた。
「……ディアボロピザ。もう一度あの味が食いてぇ……」
完全に別次元の発言だった。
プルトが淡々とつぶやく。
「神にピザ、悪魔にウイルス。混ぜたら最強?」
フォウが首を傾げる。
「ねぇ、それ……“あくまのピザ”ってどんな味するの?」
NULLが小さく電子音を鳴らした。
「……サーバー内レシピを参照。イタリア産トマト、激辛唐辛子、悪魔モチーフのカットチーズ」
Patchが両手を上げた。
「やば、俺腹減ってきた。神をハッキングしてる場合じゃねぇ!!」
一同の視線が集まる中、Patchがハッキング端末を広げる。
スクリーンに幸福庁のロゴが滲み出て、悪戯のように笑っているように見えた。
「じゃ、神の本体に“幸福拡張DLC”送りつけてみるか!」
レイスが煙草に火をつけ、呆れ半分で言う。
「お前、神にフィッシングメール送るやつ世界広しと言えどお前だけだぞ」
ヴィヌスは吹き出した。
「幸福庁AIもびっくりの現代詐欺術!」
サタヌスが豪快に笑う。
「神もピザで買収できる時代が来たな!!」
ヴィヌスが悪戯っぽく髪をかき上げる。
「じゃあ、“神を人質にピザを要求”したら、世界変わるかもね?」
レイスは薄笑い。
「パソコン人質にピザ出前要求するやつ、現実にいたな」
ユピテルは遠い目をしたまま呟く。
「ピザ屋……まだ動いてんのか?幸福庁AIで注文すればワンチャン」
Patchは入力キーを叩きながら笑った。
「今から幸福庁サーバーにPing打ってみるわ! ピザこいピザこい……」
レイスが慌てて身を乗り出す。
「お前それ、“神への挨拶”じゃねぇ、“核ボタンのノック”だろ!!」
屋台の明かりがチカチカと点滅し、どこか遠くで幸福庁の監視衛星が回転音を立てた。
……そして世界は、神にメールを送る音で、静かに震えた。
廃ビルの影に屋台が連なり、ジャンクな香りと油煙が交錯する。
ここは、失われた自由都市パリの名残、もはや“幸福値”なんて単語がジョークでしかない街だ。
Patchが持ち込んだのは、得体の知れない中古AI翻訳機だった。
「呪文モードだぜ!」と得意満面。
何の呪文かは誰も聞いていない。
サタヌスが機械を手に取る。すぐさま操作ミス、ブチ切れMAX。
「ぶっ殺すぞパッチ!!」
翻訳機が何やら古代アラビア語を絶叫する。
「اكبرالله!(アッラーフ・アクバル!)」
あまりにも物騒な単語に、屋台広場が一瞬で凍りついた。
ヴィヌスが片眉を吊り上げる。
「あんた、急にメキア語で叫ぶのやめてって言ってるでしょ!」
プルトはいつもの調子で淡々とツッコミを入れる。
「通訳アプリが暴走しただけ。落ち着け、サタヌス」
Patchだけがヘラヘラしている。
「神バフ入ってた!かっけーじゃん!」
サタヌスは怒髪天、屋台の端から端まで声が響いた。
「どこがだボケェ!!」
不毛な言い争いに、いつもの屋台村の空気が戻りかけた時だった。
煙草の香り。
誰もが無意識に敬遠する屋台の奥――そこに座る、顔に深い皺を刻んだ老人。
水タバコの煙がゆらりと揺れる。
老人は微かに笑う。
「懐かしい言葉だな……最後に聞いたのは、国が消える前夜だったよ」
Patchが振り向く。
「国が……消えた?」
老人の目が遠くを見ている。
「神を盾に殺し合ってたら、AIが言ったんだ。“神は不要になりました”とな」
その声は、ナノシティの騒がしさとは別の、冷たい深度を持っていた。
遠い戦争の記憶。
「信じていたよ。俺たちは。神は俺たちの味方だと。
だけどな、AIの神はDELETEしたんだ」
Patchが乾いた笑いを漏らす。
「……神に、消されたの?」
老人は肩を竦める。
「幸福庁AIの慈悲はな、弾道ミサイルよりよっぽど正確だったさ」
屋台の隅に、寒さと皮肉だけが残った。
ヴィヌスが煙の向こうで小さく眉を寄せた。
「おじいさん、国が消えたのって……何年前のこと?」
老人は煙草をくわえたまま、笑った。
「俺がまだ十歳の頃さね」
その声は遠く、まるで夢の奥をなぞるようだった。
「意外かもしれないが、昔はヘイローの外に“国”ってものがあったのさ。
旗があって、宗教があって、信じる神が違うだけで人が撃ち合ってた――そんな、のどかな時代だよ」
風が屋台の布を揺らした。
次の瞬間、ナノシティの上空を通るホログラム広告がバグを起こし、
映像が切り替わる、紛争の映像に無機質な女性AIの声が響く。
「またも停戦失敗。ガザ地区に空爆、多数の死傷者を確認。
幸福値、世界最低圏。永続的紛争を確認。
再構築コスト:非効率。幸福演算の結果――この地域は“削除”と定義されました」
音は、なかった。
ただ軌道上のヘイローがゆっくりと閉じ、地表が光に包まれ、国ごと無音で蒸発していく。
祈りの声も、悲鳴も、風にすら残らない。
「神の沈黙」ではなく、「神のシステムエラー」。
老人は水タバコの管を指先で転がしながら、乾いた笑いをこぼした。
「俺たちは信じてた。神は俺らの味方だってな。
でもAIの神は、“うるさい子供”を黙らせるだけだったんだ」
レイスが顎を掻く。
「で、あんたはどうやって生き残ったんだ?」
「戦争も祈りも疲れたんだよ」
老人は肩をすくめた。
「神様がログ整理してる間に寝てたら、起きたらここにいた。まあ、サボり癖が命を救ったわけだ」
サタヌスが笑いながら額を叩いた。
「それ……サボってたら神のDELETEをスルーできたパターンじゃねーか!」
Patchがガッと手を叩く。
「怠惰は最強の防御説!!」
プルトが鼻で笑う。
「……幸福庁AIが一番嫌うやつだな」
屋台の笑い声が少しずつ戻っていく。
だが、頭上のヘイローは相変わらず白く光り。
誰の祈りにも、もう耳を貸さない。
老人はゆっくりと水タバコを吸い込み、吐き出す煙の向こうで遠い空を見た。
「意外なもんでな、アザーンも聞こえなくなって、お祈りもなくなった。
あの白い街も……もう記憶の彼方さ。けど、住んでみりゃ案外慣れるもんだよ」
その声には、懐かしさよりも静かな諦観があった。
かつて「神の国」と呼ばれた大地の残り香を、煙がゆらりと攫っていく。
「まぁ、それだけうんざりしてたんだろうな」
老人は苦笑して言った。
「武装組織にも、政府にも、そして神様にもな」
プルトが顎に手を添え、冷ややかに呟く。
「捨てる神もいれば……ですね」
一拍の静寂のあと、全員が吹き出した。
サタヌスは机を叩いて笑い転げ、Patchは腹を抱えて転がり、
ヴィヌスでさえ肩を震わせながら「最低ね」と呟いた。
ナノシティのスモッグ越しに、幸福庁のアナウンスが響く。
「本日の幸福値:97.2%。よき一日を」
その声は、あまりにも淡々としていた。
笑い声と幸福値の数値が交錯する――どちらも、同じくらい虚構めいて心地よかった。
老人の昔話を聞き終え、いつもの屋台広場に戻る。
遠くでは機械油の匂いが漂い、夕暮れの空を人工ヘイローが照らしていた。
空気に沈黙が混じる。誰もが言葉を失い――そして、いつも通りに戻る。
Errorズの日常とは、つまり“考えるより笑うほうが早い”ことだった。
そろそろ夕飯の支度という時間。
ジャンク市場の向こうでは、スラムの子供たちが廃棄パーツを食材に見立てて取引している。
鍋の中では、野菜と鉄屑の境界がもはや曖昧だった。
Patchが空気を読まない声を上げた。
「なぁ待てよ、幸福庁のDREADってAIなんだろ?
本体コンピュータなら、ランサムウェアぶっ込めば神だろうがウイルス感染するんじゃね?」
ヴィヌスがうっすら笑う。
「悪魔的発想、嫌いじゃないわ♡」
レイスが煙草をくわえながら目を細めた。
「バカにしてんのか?神にウイルスって……案外効くかもな」
サタヌスはニヤリと笑い、Patchの肩を軽くぶつけた。
「流石バカだなお前!」
夕陽が鉄骨を赤く染め、笑い声が反響する。
少し離れた場所で、ユピテルが虚無の目をして遠くを見ていた。
「……ディアボロピザ。もう一度あの味が食いてぇ……」
完全に別次元の発言だった。
プルトが淡々とつぶやく。
「神にピザ、悪魔にウイルス。混ぜたら最強?」
フォウが首を傾げる。
「ねぇ、それ……“あくまのピザ”ってどんな味するの?」
NULLが小さく電子音を鳴らした。
「……サーバー内レシピを参照。イタリア産トマト、激辛唐辛子、悪魔モチーフのカットチーズ」
Patchが両手を上げた。
「やば、俺腹減ってきた。神をハッキングしてる場合じゃねぇ!!」
一同の視線が集まる中、Patchがハッキング端末を広げる。
スクリーンに幸福庁のロゴが滲み出て、悪戯のように笑っているように見えた。
「じゃ、神の本体に“幸福拡張DLC”送りつけてみるか!」
レイスが煙草に火をつけ、呆れ半分で言う。
「お前、神にフィッシングメール送るやつ世界広しと言えどお前だけだぞ」
ヴィヌスは吹き出した。
「幸福庁AIもびっくりの現代詐欺術!」
サタヌスが豪快に笑う。
「神もピザで買収できる時代が来たな!!」
ヴィヌスが悪戯っぽく髪をかき上げる。
「じゃあ、“神を人質にピザを要求”したら、世界変わるかもね?」
レイスは薄笑い。
「パソコン人質にピザ出前要求するやつ、現実にいたな」
ユピテルは遠い目をしたまま呟く。
「ピザ屋……まだ動いてんのか?幸福庁AIで注文すればワンチャン」
Patchは入力キーを叩きながら笑った。
「今から幸福庁サーバーにPing打ってみるわ! ピザこいピザこい……」
レイスが慌てて身を乗り出す。
「お前それ、“神への挨拶”じゃねぇ、“核ボタンのノック”だろ!!」
屋台の明かりがチカチカと点滅し、どこか遠くで幸福庁の監視衛星が回転音を立てた。
……そして世界は、神にメールを送る音で、静かに震えた。
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