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翠の亡霊
ラプソディ(狂想曲)
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ウラヌスが頬を膨らませたまま、首を傾げた。
「てーかさ、ぶっちゃけ聞いていい?
なんであんなヤベぇ劇を毎晩繰り返してんの? 観客いないでしょ、あれ」
レイスが煙を吐き、淡々とした目で言う。
「……正直、俺は嫌いじゃない。だが……目的は気になるな」
サタヌスも腕を組んで、低く唸る。
「ぶっちゃけ、趣味にしちゃ“本気”すぎるだろ。あれ」
モールトが本を抱き直し、珍しく神妙な声を出した。
「ふぅむ……仕方ありますまい。お話し致しましょう、我々の“地獄サブカル”の顛末を……」
「アルヴ様が亡くなられたその日、かつて数万を超えた劇団員は全て解雇され。
今やアルヴ座に残るのは、我ら五人のみ……おいたわしや」
フィーナが黒のドレスを揺らし、視線を落とす。
「あの方は、王族を嘲る脚本を書き……投獄され、舞台も封印されました」
タウロスが拳を握り締める。
「けどよ、俺たちにとっちゃ……あれが最高の劇だったんだ」
ノックスが無言でうなずく。その義手の関節が“カタリ”と鳴った。
リースがパンを一欠片指先で弄びながら、低く呟く。
「我々は“亡霊”だ。未完の舞台に取り憑かれ、幕を下ろせぬまま残された……脚本の幽霊たち」
ユピテルは薄く目を細め、笑みを浮かべた。
「王族が潰したのか、劇を。……そりゃまたえげつねェな」
フィーナの声は低く、舞台裏に響く。
「ええ、まるで彼らが都合の悪い未来を、舞台で“予言される”のを恐れたかのように」
その時、レイスが煙を吐きながら、じっとユピテルを見やった。
「なぁ、金髪。……カリストも“王族の結婚式に出される芝居道具”になってるって話だったな」
ユピテルは短く息を吐き、片手をひらひらさせる。
「ああ。役を降ろされたら、破棄だ。あいつらにとっちゃ演劇と処刑の区別なんざねぇ」
リースは静かに目を閉じ、立ち上がった。
「……そうか。ならば話は早い。
我々の敵も、お前たちの敵も――《エンヴィニア王族》というわけだ。」
舞台袖の赤い灯が、鼓動のように一層強く脈打った。
サタヌスがパンを飲み込み、拳を鳴らす。
「ヨシ、王族潰そう」
ウラヌスが両手を振って全力で否定する。
「いやいやいや!人数的に無理ゲーすぎるでしょ!?王族なんて一族郎党で軍持ってるんだよ!?」
レイスが煙を吐き、肩を竦める。
「その“無理ゲー”の中で芝居やってたんだろ?だったら筋書き、俺らで書き換えようぜ」
ユピテルは片手でパンを回しつつ、気怠げに呟く。
「……けどな。俺たちみたいな流れ者が一発殴ったくらいじゃ、あいつらは“演出”としか思わねぇ」
フィーナがドレスの裾を揺らし、薄く微笑む。
「ええ。彼らは、“世界の中心である自分たち”を崩す筋書きに耐えられないのです。
それを舞台にした瞬間……玉座は必ず揺らぐわ」
レイスが目を細め、ぽつりと口を開いた。
「……宮廷道化師を処刑する国は滅ぶ。
俺の師匠さ、アモンって言うんだけど……あの人が教えてくれたんだ」
場に一瞬、重たい沈黙が落ちる。
フィーナが目を細め、モールトは感極まって震えた。
「誠に……! 誠に名言でございますっ……!」
「“王に忠を尽くす者が戯言を吐けぬ時、玉座は盲目になる”……まさに、それ……!」
フィーナがしっとりと微笑み、紅茶を置いた。
「あら……貴方のお師匠様、とても“王”にお詳しいのね」
レイスは煙草を指で弾き、気の抜けた声で返す。
「詳しいっていうか……“王は大抵アホ”ってのが持論らしい」
ユピテルが鼻で笑い、肩をすくめる。
「アモン……あの炎のニューハーフか……納得しかねぇな」
サタヌスが身を乗り出し、リースへ問いかける。
「なぁ、アルヴが投獄された理由……その“遺作”ってやつ、あんたら持ってんのか?」
リースはわずかに表情を曇らせ、首を横に振った。
「……残念ながら、我々にもわからないのだ」
ウラヌスが頭を抱え、舞台上で大げさにのたうつ。
「えぇー!? 詰んだ!!詰んだよぉ!? 演目がなきゃ上演できないでしょーがぁ!!」
空気が一瞬沈む。
だが、フィーナが一歩前に出て、朗々とした声で場を支配した。
「いえ――諦めてはいけませんわ」
「何せ、あの“アルヴ=シェリウス”の遺作ですのよ?」
「王族がなんと言おうと、必ず守り通した者が、どこかにいるはずですわ」
レイスが紫煙を吐き、目を細める。
「……なるほど。“埋められた台本”ってわけか。墓じゃなく、信者が隠したんだな」
モールトが本を胸に抱き、声を震わせる。
「おおおぉ……! 今の比喩、非常に詩的でございますぅ……!」
ユピテルがだるそうに笑いながら、フィーナをじろりと見た。
「はぁ~……っぱヴィに似てるわ~、あんた」
フィーナがくすりと笑い、挑むように言う。
「光栄ですわ、雷の方。けれど……私の方が1万2000年は年上よ?」
ウラヌスが超真顔で呟く。
「まさかの年上属性追加……ユッピー死ぬ」
リースの言葉が落ちた、その瞬間。
舞台装置がカチリと音を立てた。
レイスが紫煙を吐きながら、リースに目を向ける。
「で……遺作の名前は?」
リースは蝋燭の炎を見つめたまま、静かに答えた。
「エンヴィニア・ラプソディだ」
ウラヌスが目を輝かせ、椅子を揺らす。
「狂想曲(ラプソディ)で投獄とか、エモくね? 反則でしょそれ」
フィーナが紅茶を口に含み、瞳を細めた。
「……エンヴィニア・ラプソディは王族礼賛の物語ではなかった。
むしろ、その“美学”そのものを、嗤うような内容だったと聞きます」
タウロスが腕を組み、重い声で続ける。
「だからよ。上演すらされてねぇ。アルヴ様は、“物語のままに”消されたんだ」
ウラヌスが顔をしかめ、口を尖らせる。
「なにそれ……作者が台本通りに消されるって、どんなホラー脚本よ」
サタヌスが苦笑し、鼻を鳴らす。
「オチが皮肉すぎんだろ……」
タウロスは視線を落とし、低く吐き出す。
「だがよ……仮に見つけられたとしても、演じられねぇよ。
やったら全員、公開処刑だろ」
拳を握り締め、続ける。
「……けどよ――あのクソ王族がもういねぇ未来なら……話は変わる」
その時、レイスがふと視線をユピテルに向ける。
「……なぁ、金髪」
ユピテルがパンを頬張りながら顔を上げる。
「ん?」
レイスは唇の端をわずかに上げて呟く。
「……俺らの土産、時空を超えてヴィヌスに届いたよな。
だったらさ――脚本もいけるんじゃねぇか?」
場に沈黙が落ちる。
だが次の瞬間、ユピテルがにやりと笑みを浮かべた。
「……ああ。そうだな。
カイネス博士と散々、嫌がらせして“時空理論”いじってたもんなァ……!」
《時空越境上演計画》――始動。
ユピテルが立ち上がり、パンを最後の一口で平らげる。
「ならもう決まりだ。俺たちが見つける、“封印されたアルヴの遺作”を」
レイスが紫煙を吐き、軽く肩を回す。
「んで、時空超えて未来に投げる。あっちで誰かに演じさせる――それで幕を上げる」
ウラヌスが両手を打ち鳴らし、満面の笑みを浮かべた。
「何そのトンチキ作戦!好き!!」
フィーナは胸に手を添え、うっすらと微笑む。
「まぁ……なんて荒唐無稽な。アルヴ様が聞いたらきっと、喜ばれるわ」
リースは蝋燭の炎を見つめ続け、静かに呟いた。
「……劇の幕は、閉じられてなどいない。
ただ、少しだけ……時間が足りなかっただけだ」
赤い照明が脈打ち、舞台奥で、幕がゆっくりと持ち上がった。
新たな演目の鼓動が、劇場全体を震わせ始める。
暗がりの劇場、赤い照明が一瞬で完全に落ちる。
鼓動のような低音だけが鳴り響き、視界が闇に沈んだ――次の瞬間。
クロノチームの4人に、無言のスポットライトが降り注ぐ。
レイスが煙草を噛みながら、眉をひそめる。
「……おい、何だコレ」
サタヌスが目を細め、眩しそうに顔をしかめる。
「まぶっ!? おい誰だ、照明いじったの……」
舞台袖で、仮面のノックスが無言で親指を立てる。
その仕草は、言葉もなく“ドヤ顔”を伝えていた。
ウラヌスがくるりと回り、両手を広げてバレエのポーズを決める。
「キャ~~~~♡ まるで主役~~♡」
ユピテルが腕を組み、金の瞳を細めて呟く。
「……なるほど。これがヴィのいってた“スポットライト効果”か」
「ククッ……確かに悪くねぇ。いいな、あの演出担当……」
モールトが本を掲げ、まるで儀式の宣言のように叫んだ。
「これより貴殿らは――“舞台の登場人物”と認定されました! おめでとうございます!!!」
フィーナが優雅に一礼し、紅の瞳を細める。
「……ようこそ、“アルヴ座”へ」
リースがスポットライトの外から一歩踏み出し、低く響く声を放つ。
「我々と共に――“王族すら知らぬ劇”を、終幕まで演じきっていただきます」
レイスが紫煙を吐き、薄く笑った。
「……つまり、“観客”じゃねぇってことか。
これからやるのは観賞じゃなく――王族に対する戦争だ」
舞台の鼓動が一際強く鳴り響き、赤い光が劇場全体を満たした。
幕の上がる音が、静寂の中で確かに響いた。
これより、王国を揺るがすラプソディ(狂想曲)が始まる。
「てーかさ、ぶっちゃけ聞いていい?
なんであんなヤベぇ劇を毎晩繰り返してんの? 観客いないでしょ、あれ」
レイスが煙を吐き、淡々とした目で言う。
「……正直、俺は嫌いじゃない。だが……目的は気になるな」
サタヌスも腕を組んで、低く唸る。
「ぶっちゃけ、趣味にしちゃ“本気”すぎるだろ。あれ」
モールトが本を抱き直し、珍しく神妙な声を出した。
「ふぅむ……仕方ありますまい。お話し致しましょう、我々の“地獄サブカル”の顛末を……」
「アルヴ様が亡くなられたその日、かつて数万を超えた劇団員は全て解雇され。
今やアルヴ座に残るのは、我ら五人のみ……おいたわしや」
フィーナが黒のドレスを揺らし、視線を落とす。
「あの方は、王族を嘲る脚本を書き……投獄され、舞台も封印されました」
タウロスが拳を握り締める。
「けどよ、俺たちにとっちゃ……あれが最高の劇だったんだ」
ノックスが無言でうなずく。その義手の関節が“カタリ”と鳴った。
リースがパンを一欠片指先で弄びながら、低く呟く。
「我々は“亡霊”だ。未完の舞台に取り憑かれ、幕を下ろせぬまま残された……脚本の幽霊たち」
ユピテルは薄く目を細め、笑みを浮かべた。
「王族が潰したのか、劇を。……そりゃまたえげつねェな」
フィーナの声は低く、舞台裏に響く。
「ええ、まるで彼らが都合の悪い未来を、舞台で“予言される”のを恐れたかのように」
その時、レイスが煙を吐きながら、じっとユピテルを見やった。
「なぁ、金髪。……カリストも“王族の結婚式に出される芝居道具”になってるって話だったな」
ユピテルは短く息を吐き、片手をひらひらさせる。
「ああ。役を降ろされたら、破棄だ。あいつらにとっちゃ演劇と処刑の区別なんざねぇ」
リースは静かに目を閉じ、立ち上がった。
「……そうか。ならば話は早い。
我々の敵も、お前たちの敵も――《エンヴィニア王族》というわけだ。」
舞台袖の赤い灯が、鼓動のように一層強く脈打った。
サタヌスがパンを飲み込み、拳を鳴らす。
「ヨシ、王族潰そう」
ウラヌスが両手を振って全力で否定する。
「いやいやいや!人数的に無理ゲーすぎるでしょ!?王族なんて一族郎党で軍持ってるんだよ!?」
レイスが煙を吐き、肩を竦める。
「その“無理ゲー”の中で芝居やってたんだろ?だったら筋書き、俺らで書き換えようぜ」
ユピテルは片手でパンを回しつつ、気怠げに呟く。
「……けどな。俺たちみたいな流れ者が一発殴ったくらいじゃ、あいつらは“演出”としか思わねぇ」
フィーナがドレスの裾を揺らし、薄く微笑む。
「ええ。彼らは、“世界の中心である自分たち”を崩す筋書きに耐えられないのです。
それを舞台にした瞬間……玉座は必ず揺らぐわ」
レイスが目を細め、ぽつりと口を開いた。
「……宮廷道化師を処刑する国は滅ぶ。
俺の師匠さ、アモンって言うんだけど……あの人が教えてくれたんだ」
場に一瞬、重たい沈黙が落ちる。
フィーナが目を細め、モールトは感極まって震えた。
「誠に……! 誠に名言でございますっ……!」
「“王に忠を尽くす者が戯言を吐けぬ時、玉座は盲目になる”……まさに、それ……!」
フィーナがしっとりと微笑み、紅茶を置いた。
「あら……貴方のお師匠様、とても“王”にお詳しいのね」
レイスは煙草を指で弾き、気の抜けた声で返す。
「詳しいっていうか……“王は大抵アホ”ってのが持論らしい」
ユピテルが鼻で笑い、肩をすくめる。
「アモン……あの炎のニューハーフか……納得しかねぇな」
サタヌスが身を乗り出し、リースへ問いかける。
「なぁ、アルヴが投獄された理由……その“遺作”ってやつ、あんたら持ってんのか?」
リースはわずかに表情を曇らせ、首を横に振った。
「……残念ながら、我々にもわからないのだ」
ウラヌスが頭を抱え、舞台上で大げさにのたうつ。
「えぇー!? 詰んだ!!詰んだよぉ!? 演目がなきゃ上演できないでしょーがぁ!!」
空気が一瞬沈む。
だが、フィーナが一歩前に出て、朗々とした声で場を支配した。
「いえ――諦めてはいけませんわ」
「何せ、あの“アルヴ=シェリウス”の遺作ですのよ?」
「王族がなんと言おうと、必ず守り通した者が、どこかにいるはずですわ」
レイスが紫煙を吐き、目を細める。
「……なるほど。“埋められた台本”ってわけか。墓じゃなく、信者が隠したんだな」
モールトが本を胸に抱き、声を震わせる。
「おおおぉ……! 今の比喩、非常に詩的でございますぅ……!」
ユピテルがだるそうに笑いながら、フィーナをじろりと見た。
「はぁ~……っぱヴィに似てるわ~、あんた」
フィーナがくすりと笑い、挑むように言う。
「光栄ですわ、雷の方。けれど……私の方が1万2000年は年上よ?」
ウラヌスが超真顔で呟く。
「まさかの年上属性追加……ユッピー死ぬ」
リースの言葉が落ちた、その瞬間。
舞台装置がカチリと音を立てた。
レイスが紫煙を吐きながら、リースに目を向ける。
「で……遺作の名前は?」
リースは蝋燭の炎を見つめたまま、静かに答えた。
「エンヴィニア・ラプソディだ」
ウラヌスが目を輝かせ、椅子を揺らす。
「狂想曲(ラプソディ)で投獄とか、エモくね? 反則でしょそれ」
フィーナが紅茶を口に含み、瞳を細めた。
「……エンヴィニア・ラプソディは王族礼賛の物語ではなかった。
むしろ、その“美学”そのものを、嗤うような内容だったと聞きます」
タウロスが腕を組み、重い声で続ける。
「だからよ。上演すらされてねぇ。アルヴ様は、“物語のままに”消されたんだ」
ウラヌスが顔をしかめ、口を尖らせる。
「なにそれ……作者が台本通りに消されるって、どんなホラー脚本よ」
サタヌスが苦笑し、鼻を鳴らす。
「オチが皮肉すぎんだろ……」
タウロスは視線を落とし、低く吐き出す。
「だがよ……仮に見つけられたとしても、演じられねぇよ。
やったら全員、公開処刑だろ」
拳を握り締め、続ける。
「……けどよ――あのクソ王族がもういねぇ未来なら……話は変わる」
その時、レイスがふと視線をユピテルに向ける。
「……なぁ、金髪」
ユピテルがパンを頬張りながら顔を上げる。
「ん?」
レイスは唇の端をわずかに上げて呟く。
「……俺らの土産、時空を超えてヴィヌスに届いたよな。
だったらさ――脚本もいけるんじゃねぇか?」
場に沈黙が落ちる。
だが次の瞬間、ユピテルがにやりと笑みを浮かべた。
「……ああ。そうだな。
カイネス博士と散々、嫌がらせして“時空理論”いじってたもんなァ……!」
《時空越境上演計画》――始動。
ユピテルが立ち上がり、パンを最後の一口で平らげる。
「ならもう決まりだ。俺たちが見つける、“封印されたアルヴの遺作”を」
レイスが紫煙を吐き、軽く肩を回す。
「んで、時空超えて未来に投げる。あっちで誰かに演じさせる――それで幕を上げる」
ウラヌスが両手を打ち鳴らし、満面の笑みを浮かべた。
「何そのトンチキ作戦!好き!!」
フィーナは胸に手を添え、うっすらと微笑む。
「まぁ……なんて荒唐無稽な。アルヴ様が聞いたらきっと、喜ばれるわ」
リースは蝋燭の炎を見つめ続け、静かに呟いた。
「……劇の幕は、閉じられてなどいない。
ただ、少しだけ……時間が足りなかっただけだ」
赤い照明が脈打ち、舞台奥で、幕がゆっくりと持ち上がった。
新たな演目の鼓動が、劇場全体を震わせ始める。
暗がりの劇場、赤い照明が一瞬で完全に落ちる。
鼓動のような低音だけが鳴り響き、視界が闇に沈んだ――次の瞬間。
クロノチームの4人に、無言のスポットライトが降り注ぐ。
レイスが煙草を噛みながら、眉をひそめる。
「……おい、何だコレ」
サタヌスが目を細め、眩しそうに顔をしかめる。
「まぶっ!? おい誰だ、照明いじったの……」
舞台袖で、仮面のノックスが無言で親指を立てる。
その仕草は、言葉もなく“ドヤ顔”を伝えていた。
ウラヌスがくるりと回り、両手を広げてバレエのポーズを決める。
「キャ~~~~♡ まるで主役~~♡」
ユピテルが腕を組み、金の瞳を細めて呟く。
「……なるほど。これがヴィのいってた“スポットライト効果”か」
「ククッ……確かに悪くねぇ。いいな、あの演出担当……」
モールトが本を掲げ、まるで儀式の宣言のように叫んだ。
「これより貴殿らは――“舞台の登場人物”と認定されました! おめでとうございます!!!」
フィーナが優雅に一礼し、紅の瞳を細める。
「……ようこそ、“アルヴ座”へ」
リースがスポットライトの外から一歩踏み出し、低く響く声を放つ。
「我々と共に――“王族すら知らぬ劇”を、終幕まで演じきっていただきます」
レイスが紫煙を吐き、薄く笑った。
「……つまり、“観客”じゃねぇってことか。
これからやるのは観賞じゃなく――王族に対する戦争だ」
舞台の鼓動が一際強く鳴り響き、赤い光が劇場全体を満たした。
幕の上がる音が、静寂の中で確かに響いた。
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