朱音ひなたの不思議な迷宮-labyrinth-

兜坂嵐

文字の大きさ
1 / 8

魔法学園へようこそ

しおりを挟む
 ダンジョン-それは飽くなき挑戦、そして永遠のロマン。
 挑戦の先にあるのは死か?財宝か?名誉か?それとも……。

 マギウステール魔法学園。
 今年で創設100年を迎える伝統ある魔法学校だ。
 その歴史には数々の偉業が刻まれており、 優秀な魔法使いを数多く輩出している。
 そんなマギウステール魔法学園には、ダンジョンと呼ばれる場所があり。
 ここの入学者は必然的にダンジョンに挑む、というか。
 卒業試験とし必ず3つはダンジョンを攻略しなければいけないそうだ。
 聞いてるだけでもすごい話だと、少女はオープンキャンパスへ自転車を漕ぐ足を速めた。
 マギウステール魔法学園に到着、さすが名門校だけあって敷地が広い。
 入学希望者受付と書かれた看板の前で自転車を止める。

「ほえぇ……でっかい学校だなぁ」
 少女は感嘆の声をあげながらお気に入りの髪飾りを無意識に擦る。
 彼女は朱音ひなた、今年で創設100年の魔法学園に入学してきた新入生である。
 この春から晴れて高校生となったひなた、だが家から遠く離れてるのもあって。
 寮生活決定である、しっかりこの魔法学園に馴染み、友達を作り、青春を謳歌したい。
「それにしてもおっきいなー」
 入学手続きを終えて、これから住むことになる学生寮へと向かっていた。
 敷地内は広大で、どこに何があるのか全く分からない。
 地図を見ても、自分がどこに向かっているのかすら分からなくなるほど。
 ふっと窓の向こうに目をやると、大きな花園が見えた。
 上から見ると五芒星になっていて、如何にも魔法学園といった感じである。

「あれって花壇?すごいなぁ」
「ああ。新入生さん、あの花園は枯れたことがないのよ」
「ふえ!?」
 思わぬ声に驚き振り返ると、金髪をポニーテールにした少女が立っていた。
 纏うオーラやにじみ出る気品というか、とにかく普通の人とは違う。
 この人はきっとどこかのお嬢様なんだろうとひなたは思った。
「あ……えと、こんにちは!」
 とりあえず挨拶をしてみた。すると少女もにっこりと微笑む。
「私は白金ミキ、生徒会役員をやっています。
 困ったことがあったら直ぐ相談してください?」
 優しい口調と笑顔で話しかけてくれる。なんていい子なんだと感動する。
 そして同時に思う、時々すれ違った学生たちを見てると。
 全員気品があるというか……やっぱ名門なのだと。
 田舎者が入学しても良かったのだろうか?

「えっと、ひなたさん。ここの入学試験すごく大変だったでしょ?」
「はいぃ……何日徹夜したか分かりません……」
「じゃあお部屋に案内しましょうか。入学式まで時間がありますから」
「あっ……ありがとうございます!」
 こうして、二人は並んで歩き始めた。

 しばらく歩くと、巨大な建物が見えてきた。
「あの建物が学生寮です。ひなたさんのお部屋は……えっと、あの右から3番目。」
「……なんかすっごいとこに来ちゃいましたねぇ。
 でも、嬉しいな。こんな立派なところで暮らせるんだから。」
「それでは、また入学式に」
「はい!」
 まずやることは備え付けのベッドに家から持ってきたマットレスを敷くこと。
 布団が変わると寝付けないなんて人もたまにいる。
 ひなたは絶対そうならないようにと、家からマットレスを持って来たのだ。
「はぁ~やっぱこの匂いだ。あー……一気に疲れが」
 ベッドへ横になると一気に疲労が襲ってきた。
 というのも朱音家と魔法学園は結構距離があるのだ。
 電車で2時間ほど揺られっぱなしだった上、 最後の電車は満員で1時間立ちっぱなしだったのだ。

「あー……駄目だ眠い寝よう……」
 そのまま布団を被り、スマホのアラームを入学式の少し前である9:45にセットすると。
 そのまま眠ってしまった。

PPPPPP……
「んん……良く寝た」
少し寝るはずが、あっという間にアラームが「起きろ」と言わんばかりに鳴り響く。
「ふぁ……えっと、今は」
 アラームを止めて起き上がると、朱音は部屋を見渡す。
 ベッドが気持ちよくまた寝てしまいそう。
 いやダメだ!二度寝は良くないってどっかのお医者さんが言ってた!
「よしっ!起きよう!」
 ひなたはベッドから飛び起きると、そのまま洗面台へ駆け込む。
 鏡に写る自分を見て、身だしなみを整える。
 そして制服のリボンが曲がってないかチェックして、準備完了だ。
「よしっ!行こう」
 ひなたは眠気覚ましに頭を振って、部屋を後にした。

---体育館

「えーと、私の席……私の席」
「……朱音さん、そこ」
「あ。ありがとう」
 隣のちょっと影がある女の子に誘導されて席に着く。
 この子もきっと良いところのお嬢様なんだろうなとひなたは思った。
「えーと、それではこれから入学式を始めます」
 進行役の女性がそう言って、入学式が始まる。
「ではまず学園長アリス・フラテルニー様よりお言葉を頂戴します。アリス様、どうぞ壇上へ」
 進行役の女性がそう言って、一人の女性が舞台に上がった。
 その女性はとても美しい容姿をしていたが、どこか不思議な雰囲気を漂わせていた。

「皆さんごきげんよう。この度はマギウステール魔法学園への入学おめでとうございます」
 透き通るような声で挨拶を始めると、ひなたは思わず聞き入ってしまう。
「私はこの学園の学園長を務めていますアリス・フラテルニーです。
 当学園は皆さまも知っての通り魔法学園です。魔法を学び、魔法使いを目指す場所です。
 このマギウステールは100年の歴史を持つ魔法学園、そしてこの私アリス・フラテルニーも。
 当学園で魔法を学んできました。」
「そしてこの学園最大の特徴が迷宮(ダンジョン)と言われる異世界の入り口があることです」
 学園長のアリスがそう言うと、体育館の照明が少し暗くなる。
 すると舞台の上にスクリーンが現れ、映像が流れ始めた。
 そこに映っていたのは中世ヨーロッパの世界から飛び出して来たような、霧が立ち込める墓地。
 とおもえばドーナツやチョコレート、大きなキャンディーが飛び出たメルヘンな世界。
 更に切り替わって出てきたのはマグマが噴き出る火山の世界。
 そして最後に見えたのは……人間を有に超える巨大植物がうじゃうじゃ生えた世界だった。

「これが迷宮、世界中に点在していて。マギウステールは特に入り口が集中しています。
 学園外での魔法の撃ち合いはご法度、この迷宮で修練を重ね。一人前の魔法使いを目指すのです」
 ひなたは、まるで遊園地のアトラクションのような世界だと興奮を隠せなかった。
 だってこんな楽しいこと、楽しまないなんて損だもの!
「それでは皆さん。これからの学園生活を楽しんでください」
 学園長アリスがそう言って舞台から降りると。進行役の女性が再びマイクを取った。

「ではこれより、新入生歓迎会を始めます!」
 新入生歓迎会が始まると、ようやく堅苦しい空気から解放されたと。
 上級生たちも、新入生も椅子から立ち上がって思い思いの時間を過ごしだす。
 マギウステール学園の入学式は10時からと遅めなので、この歓迎会はランチタイムもかねている。
「はぁ……なんか凄く疲れた……」
「朱音さん、本当に大丈夫?顔色悪いよ?」
「うん……ちょっと緊張しすぎたみたい」
 ひなたは先輩から貰ったジュースを片手にぼやっとした表情で答えた。
 するとそこに二人の少女が近づいてきた。
 片方はさっき椅子を教えてくれた親切な子だ、確か-あ、名札を見ればわかるか。

「水城碧……碧ちゃんでいい?さっきはありがと」
「あ。いや私も困ってたんだ、陰キャでさ……困ってもなかなか声をかけられなくて。
だから思い切って声かけたんだ」
「あーわかるー……私もそういうの凄く苦手でさ、さっきも声かけるの緊張したんだよねぇ……」
 碧は自分を「陰キャ」と呼ぶ通り。
 内向的な性格が仕草や表情に出てるのか、 どことなくおどおどしている。
 髪は茶色で肩へかからない程度に切りそろえられており。
 前髪は左右非対称に綺麗に揃えられている。そのせいか髪を押えるヘアピンが印象的だ。
「えっと私はひなたっていうんだ」
「朱音さん……ああ。さっき寮で寝ていた子か」
「うっ……」
 痛いところを突かれて思わずひるむ。そんなとこまで見られてたのか……とほほ。

「えと……あ、自己紹介がまだだったね、私は碧だよ。
 ここに入学して卒業すれば、陰キャでも就職で有利かな~て」
「朱音ひなたです。魔法使いに憧れて……きました、へへっ」
 恥ずかしがるくらいなら言わなきゃいいのにと碧は思うも、微笑ましいなとも思った。
 そしてすっかり打ち解けた二人はあれこれと話し出す。
 昨日は寒かった、そっちは雪が降ってたかなど他愛のない会話が続く。

「ミキさんて人に助けてもらったんだ。生徒会役員さんってやっぱ親切だよねぇ」
「ああミキさんね、すっごいお嬢様なんだって。白銀財閥て知ってる?」
「知ってる知ってる。あの家電から車までなんでも作ってるとこでしょ?」
「そうそう。そこの社長令嬢さんで、お金持ちなのも、お嬢様なのも納得って感じだよねー」
「そんな人が同級生だなんて……」
 白銀財閥ていえば一流企業の代名詞だ。
 この学園にそんな凄いとこが通っているなんて……とひなたは感嘆するしかなかった。

「そうだ碧、せっかくだしランチ一緒に食べよう。凄いよコレ、ホテルみたい」
「お金とられないよね……?」
「だ、大丈夫だよ多分……あはは、このケーキとか可愛いよ」
 碧が警戒する通り、目の前の料理は食事会と言うよりホテルのビュッフェだ。
 ひなたは恐る恐るケーキを一切れ手に取ると、口の中に放り込む。
「あむ……んっ!おいひぃー!」
 ひなたはぱあっと花が咲いたような笑顔を見せる。それを見た碧も釣られて笑った。
 ランチを終えて、二人はゆっくりと会話を楽しむ。
そしてデザートにこれまた可愛らしくデコレーションされたショートケーキを食べ始めた時である。

ランチを終えて、二人はゆっくりと会話を楽しむ。
そしてデザートにこれまた可愛らしくデコレーションされたショートケーキを食べ始めた時である。
「おっす~新入り共、楽しんでるか?」
三角巾を頭に付けたお姉さんがやってきた。
おっとりした風貌に似合わず口調は男勝りで、動くとギャップが凄まじい。

「あなたは?」
「購買の志鳥イヅカ。イヅカさんでいいよ、それ私と調理部で共同経営してるケーキなのさ」
「そうだったんですか。美味しいです!」
「そうかそうか、いいこと教えてやろう。ダンジョンに持ち込めんのは武器や防具だけだ」
「え!?お腹すいたらどうするんです!」
「魔法のかかった道具や食べ物なら持ち込めるぜ、まあつまりうちの購買でパン買えってわけだ」
「しょ……商売上手ですね……」
「それはどうも、じゃぁな」
 それだけ言うとイヅカは嵐のように去ってしまった。
 黙っていれば三つ編みもあっておっとり系なのに。
 口を開くとあのギャップは凄まじいな……とひなたは思った。

「なんか凄い人だったね」
「うん……でもちょっと元気でたかも」
「あ、それわかる。私もさっき志鳥さんに会ってさ、あの人も面白い人だね」
 そんな他愛のない会話が続く中、ひなたはふと時計を見た。
 もうそろそろ教室に戻らないといけない時間だ。

「あー……もうこんな時間かぁ」
「あ、ほんとだ。じゃぁ教室に戻ろうか」
「うん!碧ちゃんまた後でね!」
 二人は席を立ち教室へ向かう。
 これから始まる魔法学園の生活を思い浮かべ。
 そしてまだ見ぬ異世界への冒険に想いを馳せていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...