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ジルオール霊園
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「ひなちゃん、今日は私魔法の授業在るから参加出来ないけど」
「うん、いいよ~!碧ちゃんも比嘉さんも頑張って」
「だいじょうぶ?ジルオール霊園ってあれよ、おばけ出る…」
「う、う……ん。多分平気!じゃ行ってくるね」
ひなたはダンジョン攻略に必要な道具を持ってダンジョンへ向かう。
しばらくミルク色の霧をかき分けるように進むと。
…ぼんやりとは墓石や枯れ木が見えてきた。
第二ダンジョン-ジルオール霊園。
第一ダンジョン「聖洞」と異なり屋外ダンジョンである、
故に天候も変化する。今は曇り空だ。
「えーと……このダンジョンからトラップが出てくるって。確かめ方は…むんっ!」
支給されたショートソードを振ってみると、風圧で隠れていた魔法陣が顕になった。
これが比嘉さんたちがいっていた「トラップ」だ。
最初は見えず、踏むとガスが出てきたり、落とし穴が開いたりするらしい。
「これかー……気をつけなくちゃ……おばけ怖いけど、頑張らなくちゃ」
霊園だけあって、聖洞のひんやりしている空気とはまた違う。
どこか寒々しい空気が漂っている気がする。
その途中……枝分かれした道が出てくる、どっちが階段に通じてるのかな?
そう思ってた時、向こうでしゃがんで何かいじっている男が見えた。
「あれ?あの人誰?」
近づいてみると男は足元に魔法陣を描き、何か熱心に設置してる様子である。
何してるんだろう?と近づいても反応すらしない。
「点検、点検っと……踏んでも作動しなきゃ意味ねぇからなぁ……ブツブツ」
パンクファッションに紫の派手な髪色、あれでギターでも背負ってればバンドマンだ。
でも、そんな雰囲気は微塵もない。
「何してるの?」
「あぁ?プルソン様はトラップ置くのに忙しいんだよ、話しかけんじゃねぇ」
「ご、ごめんなさい……」
「チッ……俺の邪魔をするな。わかったか」
「は、はいっ」
よく見たら耳が尖ってるので人間じゃない。
このプルソンとか言う悪魔もたぶんベリアルとかと同じ悪魔だ。
碧も「悪魔にあんまり話しかけちゃダメ」って言われたなと反省しつつ地図を見る。
向こうでバンドマン……じゃない、プルソンはしゃがんで何か作業していて。
よほど集中してるのか将又人間に興味が無いのか、 ひなたに目もくれず作業に没頭していた。
(邪魔しちゃ悪いよね)
ふと思い立ってスマホを取り出し地図を見る、まだまだ入りたてということで。
ミニマップにはこのフロアしか表示されていない、階段はどっちかな?
いやまずは武器だな……ショートソードだけだとそろそろ心許ない。
「よし、じゃあ行こう」
「待て」
「ひゃあっ!?」
「お前、今このダンジョンのどこにいる?」
「え、えっと……まだ入り口からちょっと進んだところです。武器もこれじゃ心もとないよー……」
「へぇ……じゃあ東のほうに武器があったぜ、精々がんばれよ」
プルソンの言葉を信じて進んでみる、確かに遠くに鎌のようなものが見えた。
よかった~と胸をなでおろしながら、その先へ進むと……。
----罠が仕掛けられていた。
魔法陣を踏むと、目の前にモンスターが現れる。
「うひゃああああっ」
「ケッケッケ!引っかかってやんの!ほら、鎌なら目の前だぞ~♪」
プルソンのあざ笑う声が聞こえる、でも確かに彼の言う通り目の前に強そうな武器がある。
襲ってくる人魂たちをかいくぐるように切り抜けると。
迷わずそれを手に取り、そのまま勢いに任せ振り回す。
ブン、と風を切り裂く音と同時に人魂たちは消滅し、なんとか切り抜けたとホッとする。
プルソンは切り抜けてしまったことが面白くないのか、ムスッとしたが。
「……まぁいい、俺は人間にかまう主義じゃねぇんだ」
そっぽを向くとプルソンは霧の中へ消えていった。
「この鎌はなんだ?なんか死神みたい……どれどれ」
本をパラパラ捲り鑑定してみると鎌が何かわかった。
これは「ライフキラー」という大鎌だ。
命中率はショートソードより低めだが攻撃範囲が広く、何よりカッコいい。
鎌で戦うキャラって厨二心をくすぐるよね、かっこいいし。
だが自分がそうなるとは思わず、霊園の中で飛び上がる。
「わあ!すごい!かっこいー!よーし、これでもっと頑張れるよ」
ひなたは意気揚々と柄を握ると、再びダンジョンの探索を始める。
片手には霧の中を進むためのランタン、片手には鎌……まるで本物の死神みたいだ。
これでボロいローブ羽織って黒猫でも連れてれば完璧だったかなぁ……。
そんなことを考えながら、ダンジョンの奥深くへ進んでいくと。
「うっ……!」
不意に寒気がした、振り返るとそこには。
「グウゥゥ……」
「うひゃあああああ!!」
ゾンビがいた、さっきの人魂とは違う、明らかに敵意を持ってこちらに向かってくる。
しかも数は3体と多い、逃げるのに夢中になって「素振り」でワナのチェックをするのを怠ってしまい。
「あっ…!?」
しまったと声が出た瞬間、踏んでしまった足元の魔法陣が光り、トラップが発動する。
トラップから光と風が迸り、ひなたの体を包み込み……光が消えた時、そこには。
「な、なんじゃこりゃー!?」
ひなたの体に黒いマントが装着されており、手には鎌を持っていた。
慌ててマントを脱ごうとしたその時、向こうから足音が聞こえてくるのに気づく。
こんな姿見られたら恥ずかしくて死んでしまうと、慌てて枯れ木に隠れようとした時。
「ん……?見習い死神か」
「が、ガイン!?」
「その声は……聖洞の少女か、迷い人は見つかったか?」
「見つかった!そ、それより死神じゃないからね!」
「そうなのか?では、その手に持っているものは?」
「私、この学園に入学したんだ、早く皆に追いつきたいなって」
「……そうか」
ガインの目が少し悲しそうな気がした、まるで遠い何かを思い出すように。
どうしたんだろう?と思ったが彼はなんでもないと笑い続ける。
ジルオール霊園は霊園型ダンジョン、そのため一度の攻略では深層まで進みきれず。
いくつかの区画を抜け進む事になる、つまり何度も挑まないといけないダンジョンなのだが……。
「私が近道へ案内しよう、一気に区画を進めるだろう」
「ほんと?ありがと~!」
「ああ、こっちだ」
ガインは手招きし石壁へ近づき……当たり前のようにすり抜けてしまった。
隠し扉ではあるまいな?と確認したが何もない、しばし呆然とするひなたを前に。
ガインはなんで付いてこないんだ?と言うように壁から上半身だけ出してきた。
「どうした?」
「ガイン、私壁は通れないよ!!」
「む。ああそうか……君は死んでいないのか、幽霊になれば通れるんだが」
「ブラックジョークやめてよ~」
ひなたは半泣きになりながらもどうにか壁を通り抜ける方法を考える。
確か、比嘉さんは何かを使ってワープしていたはずだ。
何か……何か……あった!ひなたはリュックサックから小さな薬瓶を取り出す。
転移薬だ、使えば1回だけ地形を無視してワープできるというアイテムである。
結構なレアアイテムだが今はそんなことを言ってる場合ではない。
意を決して、ひなたは瓶の中の液体を飲み干す。
すると、体が宙に浮き、そのまま地面を滑るように移動していく。
初めて感じるワープの感覚に目を瞑り、おそるおそる目を開けると……。
先程の霊園の景色とほぼ同じ、でも前の景色より開けた場所に出ていた。
隣にはガインが立っており「近道」に成功したのだと表情が伺わせる。
「よし、さっきの転移で3区画は一気に進めたはず」
「そうか!この調子でがんばるぞー!」
「……君のような少女が冒険者として戦わねばならないとは」
「ん?」
「いや、何でもない。行こうか」
「うん!」
二人はダンジョンの奥へと向かっていく、3区画進めたということは。
5区画あるうちの半分まで進めたということ、流石にあと2区画は自力で進むしか無いが。
それだけでも十分だ。
「うむ、やはり一人で探すよりも二人で探し回ったほうが早いな」
「えーと……何を探してるの?」
「ああ。私の首をこんな風にした者をな……失礼」
「えっえっ」
ひなたが慌てる前でガインは頭を両手で掴み、そのまま胴体から切り離した。
その姿はまさに首なし騎士、怪談は本当だったんだと震え上がる傍で。
ガインはさも当然のように自身の首を小脇に抱えながら話し出す。
「私の首を刎ねたのは何者だろうか……必ず探し出して報いを……」
「こ、怖いよガイン~」
「む。すまない、ついな」
ひなたのリアクションに満足し、いつもの表情にすっかり戻ってしまった。
この騎士-最初は恐ろしい印象だったが、どうにも話してみると愛嬌がある。
年こそ自分より上に見えるが表情の感じがどこか幼くて、可愛いかも。
なんて言ったら怒られちゃうかな?と思いつつもガインの後を付いていく。
「プルソンって悪魔をガインは知ってる?」
「知っている、陰険な男でな。何かあったか?」
「うーん……確かに陰険かも」
「ふむ……?」
「実はかくかくしかじかで、この鎌を拾う前に出会ったんだ」
「そうか……」
ひなたが状況を説明すると、ガインは考え込んでしまった。
やはり彼のような悪魔がダンジョンを徘徊しているのは問題なのだろうか?
そんなことを考えていると、ガインは不意に口を開いた。
「プルソンは人間に対して友好的な悪魔ではない。
この霊園を進む以上-あの男とは再び会う事だろう、 くれぐれも気をつけるのだ」
「うん」
悪魔の中には会話できるヤツとできないヤツがいる。
前者は所謂下級悪魔ってやつで、ゾンビとか小鬼とか、そういう類のものだ。
後者になるほど格が上がってきて人語を介すようになる。
プルソンも、耳がとがっているのと髪色が派手以外はパンクファッションの兄ちゃんにしか見えない。
「プルソンは人間に対して友好的な悪魔ではない。
この霊園を進む以上-あの男とは再び会う事だろう、 くれぐれも気をつけるのだ」
「うん」
悪魔の中には会話できるヤツとできないヤツがいる、前者は所謂下級悪魔ってやつで。
ゾンビとか小鬼とか、そういう類のものだ。
後者になるほど格が上がってきて人語を介すようになる。
プルソンも、耳がとがっているのと髪色が派手以外はパンクファッションの兄ちゃんにしか見えない。
「ねぇ。ガインも悪魔なの?」
「……さあ」
「わからないの?」
「私は記憶が曖昧だ、何故ここにいるのかもな」
「でも一緒にいてくれるんだ、ガインは優しいね」
「……そうだろうか?」
「そうだよ、私だけだったらこんな所まで来られないもん」
ガインの籠手を引っ張りながらひなたは霧の中を進む。ダンジョンの出口へ向けて。
その明るい声はこの薄暗い霊園では特によく響き。
枯れ木の間から小悪魔たちが「いいなぁ」と羨ましがっているのはまた別の話だ。
「……っと、あれは天使の階段!出口だ」
「そうか、行くのか」
「ガインも学園に行こうよ」
「ありがたいが……無理だ、私は幽霊だ。ダンジョンの中でしか存在できない」
ガインが寂しそうに笑う、ひなたは思わず彼の手を取り、ブンブンと上下に振る。
幽霊だけど触れられる、温かい手を握りしめ、ひなたは笑顔で言う。
また会えるよねと。ガインは一瞬驚いた顔をしたが、すぐ微笑み。
「また会おう」と手を振ってくれ、振り返しながらひなたはダンジョン出口。
通称「天使の階段」を駆け上っていった。
ひなたが去った後ガインは顎に手を添える。
まるで太陽の様な娘だ、いるだけで周りを明るく照らす……遠い記憶に感じた温もりのように。
「太陽。ひなた……か」
ひなたが口ずさんでいた鼻歌を真似て口遊み、騎士はダンジョンへと戻っていった。
-------
「ジルオール霊園三区画目をクリアか……第四区画はどんな感じかな、んん……」
ひなたはダンジョン掲示板を目で追い、第四区画の特徴を覚えていく。
相変わらず視界が悪くトラップや水路がある。だがそれ以外に。
(悪魔がお店をやっている……料金を支払わず出ないようご用心?)
「ひなた、なんかあった?」
「ううん、なんでもないよ」
「そっか。じゃあ、そろそろ授業だし教室に戻ろう」
「うん!」
ひなたは鞄を肩にかけ直し、碧と共に教室へ向かう。
ダンジョン攻略は突入者の負担を軽減するため。
1回の突入につき最低でも12時間のインターバルを要する。
その間、冒険者は睡眠を取ったり、食事したり、買い物をしたり。
ダンジョンに潜らない時間を好きに過ごすことが出来るのだ。
もっと簡単に言えばダンジョンは一日1回まで、それ以上は体調不良や寿命に関わるため。
学園側が強制的にストップをかける、そんなわけでひなたはインターバルも兼ねて。
授業に向かうのだ……「悪魔がやってるお店」ってどんな感じなんだろう、とか思いつつ。
「朱音君、今日はダンジョンに行くのかい?」
「行かないよ、だってもう疲れちゃったもん」
「そうか、ならいいんだけどね」
ヴァンは少し残念そうに、それでも安堵したような声でそう言う。
彼が何を恐れているのか、ひなたは知っている。
「霊園のダンジョンだったらしいね……お墓の名前とか読んだかい?」
「いくつか……えーと、いろんな名前がありました」
「ゼナ・シュペールという名前はなかったかい?」
「んー……ありませんでした。ゼナさんって?」
「ゼナは僕のお祖母様なんだ、どんな死に方をしたかもわからない」
「お祓いをしてもダメだったの?」
「ああ。お祓いで解決できたのはせいぜい下級の悪魔くらいだよ。
上級の悪魔になると、お祓いは効かなくなるんだ。
くれぐれも第四区画は気をつけて」
ひなたはコクッと力強くうなずく。
ひなたはダンジョンの外で待つ人たちのためにも、首のない幽霊騎士のためも
そして自分自身の夢のためも、ダンジョンに挑むのだ。
だが今はインターバル、しっかり休む必要がある……何より。
(明日は土曜日……学園もお休みかぁ、碧ちゃんや比嘉さん誘って遊びに行こうかな)
ひなたは友達と遊ぶことを考えると、自然と笑顔になるのであった。
「うん、いいよ~!碧ちゃんも比嘉さんも頑張って」
「だいじょうぶ?ジルオール霊園ってあれよ、おばけ出る…」
「う、う……ん。多分平気!じゃ行ってくるね」
ひなたはダンジョン攻略に必要な道具を持ってダンジョンへ向かう。
しばらくミルク色の霧をかき分けるように進むと。
…ぼんやりとは墓石や枯れ木が見えてきた。
第二ダンジョン-ジルオール霊園。
第一ダンジョン「聖洞」と異なり屋外ダンジョンである、
故に天候も変化する。今は曇り空だ。
「えーと……このダンジョンからトラップが出てくるって。確かめ方は…むんっ!」
支給されたショートソードを振ってみると、風圧で隠れていた魔法陣が顕になった。
これが比嘉さんたちがいっていた「トラップ」だ。
最初は見えず、踏むとガスが出てきたり、落とし穴が開いたりするらしい。
「これかー……気をつけなくちゃ……おばけ怖いけど、頑張らなくちゃ」
霊園だけあって、聖洞のひんやりしている空気とはまた違う。
どこか寒々しい空気が漂っている気がする。
その途中……枝分かれした道が出てくる、どっちが階段に通じてるのかな?
そう思ってた時、向こうでしゃがんで何かいじっている男が見えた。
「あれ?あの人誰?」
近づいてみると男は足元に魔法陣を描き、何か熱心に設置してる様子である。
何してるんだろう?と近づいても反応すらしない。
「点検、点検っと……踏んでも作動しなきゃ意味ねぇからなぁ……ブツブツ」
パンクファッションに紫の派手な髪色、あれでギターでも背負ってればバンドマンだ。
でも、そんな雰囲気は微塵もない。
「何してるの?」
「あぁ?プルソン様はトラップ置くのに忙しいんだよ、話しかけんじゃねぇ」
「ご、ごめんなさい……」
「チッ……俺の邪魔をするな。わかったか」
「は、はいっ」
よく見たら耳が尖ってるので人間じゃない。
このプルソンとか言う悪魔もたぶんベリアルとかと同じ悪魔だ。
碧も「悪魔にあんまり話しかけちゃダメ」って言われたなと反省しつつ地図を見る。
向こうでバンドマン……じゃない、プルソンはしゃがんで何か作業していて。
よほど集中してるのか将又人間に興味が無いのか、 ひなたに目もくれず作業に没頭していた。
(邪魔しちゃ悪いよね)
ふと思い立ってスマホを取り出し地図を見る、まだまだ入りたてということで。
ミニマップにはこのフロアしか表示されていない、階段はどっちかな?
いやまずは武器だな……ショートソードだけだとそろそろ心許ない。
「よし、じゃあ行こう」
「待て」
「ひゃあっ!?」
「お前、今このダンジョンのどこにいる?」
「え、えっと……まだ入り口からちょっと進んだところです。武器もこれじゃ心もとないよー……」
「へぇ……じゃあ東のほうに武器があったぜ、精々がんばれよ」
プルソンの言葉を信じて進んでみる、確かに遠くに鎌のようなものが見えた。
よかった~と胸をなでおろしながら、その先へ進むと……。
----罠が仕掛けられていた。
魔法陣を踏むと、目の前にモンスターが現れる。
「うひゃああああっ」
「ケッケッケ!引っかかってやんの!ほら、鎌なら目の前だぞ~♪」
プルソンのあざ笑う声が聞こえる、でも確かに彼の言う通り目の前に強そうな武器がある。
襲ってくる人魂たちをかいくぐるように切り抜けると。
迷わずそれを手に取り、そのまま勢いに任せ振り回す。
ブン、と風を切り裂く音と同時に人魂たちは消滅し、なんとか切り抜けたとホッとする。
プルソンは切り抜けてしまったことが面白くないのか、ムスッとしたが。
「……まぁいい、俺は人間にかまう主義じゃねぇんだ」
そっぽを向くとプルソンは霧の中へ消えていった。
「この鎌はなんだ?なんか死神みたい……どれどれ」
本をパラパラ捲り鑑定してみると鎌が何かわかった。
これは「ライフキラー」という大鎌だ。
命中率はショートソードより低めだが攻撃範囲が広く、何よりカッコいい。
鎌で戦うキャラって厨二心をくすぐるよね、かっこいいし。
だが自分がそうなるとは思わず、霊園の中で飛び上がる。
「わあ!すごい!かっこいー!よーし、これでもっと頑張れるよ」
ひなたは意気揚々と柄を握ると、再びダンジョンの探索を始める。
片手には霧の中を進むためのランタン、片手には鎌……まるで本物の死神みたいだ。
これでボロいローブ羽織って黒猫でも連れてれば完璧だったかなぁ……。
そんなことを考えながら、ダンジョンの奥深くへ進んでいくと。
「うっ……!」
不意に寒気がした、振り返るとそこには。
「グウゥゥ……」
「うひゃあああああ!!」
ゾンビがいた、さっきの人魂とは違う、明らかに敵意を持ってこちらに向かってくる。
しかも数は3体と多い、逃げるのに夢中になって「素振り」でワナのチェックをするのを怠ってしまい。
「あっ…!?」
しまったと声が出た瞬間、踏んでしまった足元の魔法陣が光り、トラップが発動する。
トラップから光と風が迸り、ひなたの体を包み込み……光が消えた時、そこには。
「な、なんじゃこりゃー!?」
ひなたの体に黒いマントが装着されており、手には鎌を持っていた。
慌ててマントを脱ごうとしたその時、向こうから足音が聞こえてくるのに気づく。
こんな姿見られたら恥ずかしくて死んでしまうと、慌てて枯れ木に隠れようとした時。
「ん……?見習い死神か」
「が、ガイン!?」
「その声は……聖洞の少女か、迷い人は見つかったか?」
「見つかった!そ、それより死神じゃないからね!」
「そうなのか?では、その手に持っているものは?」
「私、この学園に入学したんだ、早く皆に追いつきたいなって」
「……そうか」
ガインの目が少し悲しそうな気がした、まるで遠い何かを思い出すように。
どうしたんだろう?と思ったが彼はなんでもないと笑い続ける。
ジルオール霊園は霊園型ダンジョン、そのため一度の攻略では深層まで進みきれず。
いくつかの区画を抜け進む事になる、つまり何度も挑まないといけないダンジョンなのだが……。
「私が近道へ案内しよう、一気に区画を進めるだろう」
「ほんと?ありがと~!」
「ああ、こっちだ」
ガインは手招きし石壁へ近づき……当たり前のようにすり抜けてしまった。
隠し扉ではあるまいな?と確認したが何もない、しばし呆然とするひなたを前に。
ガインはなんで付いてこないんだ?と言うように壁から上半身だけ出してきた。
「どうした?」
「ガイン、私壁は通れないよ!!」
「む。ああそうか……君は死んでいないのか、幽霊になれば通れるんだが」
「ブラックジョークやめてよ~」
ひなたは半泣きになりながらもどうにか壁を通り抜ける方法を考える。
確か、比嘉さんは何かを使ってワープしていたはずだ。
何か……何か……あった!ひなたはリュックサックから小さな薬瓶を取り出す。
転移薬だ、使えば1回だけ地形を無視してワープできるというアイテムである。
結構なレアアイテムだが今はそんなことを言ってる場合ではない。
意を決して、ひなたは瓶の中の液体を飲み干す。
すると、体が宙に浮き、そのまま地面を滑るように移動していく。
初めて感じるワープの感覚に目を瞑り、おそるおそる目を開けると……。
先程の霊園の景色とほぼ同じ、でも前の景色より開けた場所に出ていた。
隣にはガインが立っており「近道」に成功したのだと表情が伺わせる。
「よし、さっきの転移で3区画は一気に進めたはず」
「そうか!この調子でがんばるぞー!」
「……君のような少女が冒険者として戦わねばならないとは」
「ん?」
「いや、何でもない。行こうか」
「うん!」
二人はダンジョンの奥へと向かっていく、3区画進めたということは。
5区画あるうちの半分まで進めたということ、流石にあと2区画は自力で進むしか無いが。
それだけでも十分だ。
「うむ、やはり一人で探すよりも二人で探し回ったほうが早いな」
「えーと……何を探してるの?」
「ああ。私の首をこんな風にした者をな……失礼」
「えっえっ」
ひなたが慌てる前でガインは頭を両手で掴み、そのまま胴体から切り離した。
その姿はまさに首なし騎士、怪談は本当だったんだと震え上がる傍で。
ガインはさも当然のように自身の首を小脇に抱えながら話し出す。
「私の首を刎ねたのは何者だろうか……必ず探し出して報いを……」
「こ、怖いよガイン~」
「む。すまない、ついな」
ひなたのリアクションに満足し、いつもの表情にすっかり戻ってしまった。
この騎士-最初は恐ろしい印象だったが、どうにも話してみると愛嬌がある。
年こそ自分より上に見えるが表情の感じがどこか幼くて、可愛いかも。
なんて言ったら怒られちゃうかな?と思いつつもガインの後を付いていく。
「プルソンって悪魔をガインは知ってる?」
「知っている、陰険な男でな。何かあったか?」
「うーん……確かに陰険かも」
「ふむ……?」
「実はかくかくしかじかで、この鎌を拾う前に出会ったんだ」
「そうか……」
ひなたが状況を説明すると、ガインは考え込んでしまった。
やはり彼のような悪魔がダンジョンを徘徊しているのは問題なのだろうか?
そんなことを考えていると、ガインは不意に口を開いた。
「プルソンは人間に対して友好的な悪魔ではない。
この霊園を進む以上-あの男とは再び会う事だろう、 くれぐれも気をつけるのだ」
「うん」
悪魔の中には会話できるヤツとできないヤツがいる。
前者は所謂下級悪魔ってやつで、ゾンビとか小鬼とか、そういう類のものだ。
後者になるほど格が上がってきて人語を介すようになる。
プルソンも、耳がとがっているのと髪色が派手以外はパンクファッションの兄ちゃんにしか見えない。
「プルソンは人間に対して友好的な悪魔ではない。
この霊園を進む以上-あの男とは再び会う事だろう、 くれぐれも気をつけるのだ」
「うん」
悪魔の中には会話できるヤツとできないヤツがいる、前者は所謂下級悪魔ってやつで。
ゾンビとか小鬼とか、そういう類のものだ。
後者になるほど格が上がってきて人語を介すようになる。
プルソンも、耳がとがっているのと髪色が派手以外はパンクファッションの兄ちゃんにしか見えない。
「ねぇ。ガインも悪魔なの?」
「……さあ」
「わからないの?」
「私は記憶が曖昧だ、何故ここにいるのかもな」
「でも一緒にいてくれるんだ、ガインは優しいね」
「……そうだろうか?」
「そうだよ、私だけだったらこんな所まで来られないもん」
ガインの籠手を引っ張りながらひなたは霧の中を進む。ダンジョンの出口へ向けて。
その明るい声はこの薄暗い霊園では特によく響き。
枯れ木の間から小悪魔たちが「いいなぁ」と羨ましがっているのはまた別の話だ。
「……っと、あれは天使の階段!出口だ」
「そうか、行くのか」
「ガインも学園に行こうよ」
「ありがたいが……無理だ、私は幽霊だ。ダンジョンの中でしか存在できない」
ガインが寂しそうに笑う、ひなたは思わず彼の手を取り、ブンブンと上下に振る。
幽霊だけど触れられる、温かい手を握りしめ、ひなたは笑顔で言う。
また会えるよねと。ガインは一瞬驚いた顔をしたが、すぐ微笑み。
「また会おう」と手を振ってくれ、振り返しながらひなたはダンジョン出口。
通称「天使の階段」を駆け上っていった。
ひなたが去った後ガインは顎に手を添える。
まるで太陽の様な娘だ、いるだけで周りを明るく照らす……遠い記憶に感じた温もりのように。
「太陽。ひなた……か」
ひなたが口ずさんでいた鼻歌を真似て口遊み、騎士はダンジョンへと戻っていった。
-------
「ジルオール霊園三区画目をクリアか……第四区画はどんな感じかな、んん……」
ひなたはダンジョン掲示板を目で追い、第四区画の特徴を覚えていく。
相変わらず視界が悪くトラップや水路がある。だがそれ以外に。
(悪魔がお店をやっている……料金を支払わず出ないようご用心?)
「ひなた、なんかあった?」
「ううん、なんでもないよ」
「そっか。じゃあ、そろそろ授業だし教室に戻ろう」
「うん!」
ひなたは鞄を肩にかけ直し、碧と共に教室へ向かう。
ダンジョン攻略は突入者の負担を軽減するため。
1回の突入につき最低でも12時間のインターバルを要する。
その間、冒険者は睡眠を取ったり、食事したり、買い物をしたり。
ダンジョンに潜らない時間を好きに過ごすことが出来るのだ。
もっと簡単に言えばダンジョンは一日1回まで、それ以上は体調不良や寿命に関わるため。
学園側が強制的にストップをかける、そんなわけでひなたはインターバルも兼ねて。
授業に向かうのだ……「悪魔がやってるお店」ってどんな感じなんだろう、とか思いつつ。
「朱音君、今日はダンジョンに行くのかい?」
「行かないよ、だってもう疲れちゃったもん」
「そうか、ならいいんだけどね」
ヴァンは少し残念そうに、それでも安堵したような声でそう言う。
彼が何を恐れているのか、ひなたは知っている。
「霊園のダンジョンだったらしいね……お墓の名前とか読んだかい?」
「いくつか……えーと、いろんな名前がありました」
「ゼナ・シュペールという名前はなかったかい?」
「んー……ありませんでした。ゼナさんって?」
「ゼナは僕のお祖母様なんだ、どんな死に方をしたかもわからない」
「お祓いをしてもダメだったの?」
「ああ。お祓いで解決できたのはせいぜい下級の悪魔くらいだよ。
上級の悪魔になると、お祓いは効かなくなるんだ。
くれぐれも第四区画は気をつけて」
ひなたはコクッと力強くうなずく。
ひなたはダンジョンの外で待つ人たちのためにも、首のない幽霊騎士のためも
そして自分自身の夢のためも、ダンジョンに挑むのだ。
だが今はインターバル、しっかり休む必要がある……何より。
(明日は土曜日……学園もお休みかぁ、碧ちゃんや比嘉さん誘って遊びに行こうかな)
ひなたは友達と遊ぶことを考えると、自然と笑顔になるのであった。
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山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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