世界樹の下でぼくらは戰う理由を知る

長崎ポテチ

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ミザリーの思惑

マルセロはぶっ込んでいくスタイル

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ーーーーーーーーミツバ

 ホテルから特設基地へ向かう車中。
 メンディが運転し、私とマルセロは後部座席に座っている。
 縛られ拘束されている訳ではないが、助手席にマルセロが座っていない事を察するに、逃亡を阻止しているのは明確に思えた。

 基地へはおよそ20分弱かかる。
 この短時間でこの悪魔の状況を打破するべく、脳みそをフル回転させているが、どうにも有効な手段が思いつかないでいた。
 『このカプセルを飲ませるとして、どうやって!』

 焦れば焦るほど、女性である自分と『嵐の13番隊』腹心である彼らとの体格差に絶望の2文字が頭をよぎる。
 『のどが乾いた』と言っても、きっと私は車を降りる事は許されないだろう、よしんばここに飲み物があったとしても彼らに気付かれずカプセルを入れることなど出来ようはずもない…

 車が走りはじめて、もう数分が経過していた。

 車内には独特の沈黙が場を制していたが、その「間」が我慢できない男がいた、マルセロである。

「それにしてもミツバ伍長ってよぉ、ちゃんと見たこと無かったけど、よく見るとかわいいよなぁ」
「マルセロ、余計な会話はやめろ」

「まーたメンディはすぐ硬えこと言うわ。こんくらいあの方も許してくれるだろぉよぉ」

 このマルセロの発言を私は聞き逃さなかった。

『あの方?』

 この言い方が妙に違和感を覚えた。
 サッチモが首謀者だろうかと、予想はしていたが、もしそうだとしたらこの二人であれば「隊長」、もしくは「サッチモ」と呼ぶはずである。

 聞いてみるか……

「『あの方』ってどなたなんです?」
「答える必要はありません!」

 メンディがバックミラーを通し詮索を阻止する。きっと私とマルセロへ向けた発言であろう。

「へへ、わりいなミツバ伍長。 そればっかりは言えねえのよ」

 だめだ……私の思考は深淵へと誘われていた。
 誰が、いつ、目的は? などの思考を張り巡らせるが、首を振り一旦全てを否定する。
 とにかく現状打破に向けリソースを割くべきだわ。
 何か、何かないかしら……

 きっとこのまま基地へ向かえば私は死ぬ。
 私が死ぬのはまだいい、問題はユリウスも確実に何かしら被害を被ることだ。
 自分がその駒であることなど知らないわけじゃない。絶対に、何としてもユリウスだけは私が守らなきゃ!

「私は、あなたたちに殺されるんですか?」

 …………

 二人は答えない。
 この返答が、これから私が辿る運命を示唆していた。

 考えろ、考えろ、考えろ、考えろ

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ

 考えろ………あっ!
 その時、私はマルセロが言った事を思い出した。

 確か『かわいい』と言ったはずだ。

 社交辞令の可能性は? いや、思いついたなら全ての情報をアウトプットすべきだ。
 私は即座にそれを確実にすべく探りを入れた

「マルセロさん、私のこと抱きたいですか?」
「え? はぁ、まぁ、そりゃあ願ってもないことだがよぉ」

 助平な顔をしたマルセロが私を見つめる

 かかったッ!

 これはもうラストチャンスだ。
 しかし、この作戦はユリウスの尊厳を殺してしまうである。

『ああ、ユリウス。愚かな私を許して……』

 私はもう、ユリウスには顔向け出来ないのかも知れないな…
 愛する人を救うため、愛する人を裏切らなければならないなんて……
 覚悟を決め、マルセロの膝に手を置き、撫でるような声色で演技をする

「良いですよ。どうせ私は無事では済まない事ぐらい理解出来てますし、最後くらいは……」

 それに、と付け加えた私はマルセロに顔を近づけトドメの台詞を吐き出す

「あなたにひと目惚れしちゃいました…」
「ええマジ? あー、俺の魅力にやられちゃった? まいったなーコリャ」

 マルセロは突然自分がモテた事に微塵の疑いを向けていない。

「おい、下らない事は……」

 メンディの静止の言葉を最後まで聞かず、私は自身に対しての最大限の怒りを必死で押し殺し、マルセロの首に腕をかけ、耳元でダメ押しをする。

「ねぇ、キスして……」

 チラリとバックミラーを見る。
 死角になっていることを確認し、私はカプセルを1つ口に含んだ。


ーーーーーーーーメンディ

 『あと、十数分といったところかな』
 することもないので基地への到着時刻を何気なく計算している。

 はやくこの任務を終えなければ……
 焦りにも似た感情を抑え、運転に徹している。
 この任務はサッチモ隊長のため、そして敬愛するミザリー中佐のため。
 道中、マルセロがまたうっかり余計な事を言いそうになったので抑制するのに必死である。

 ただ、マルセロの発言に乗っかる訳ではないが、確かにミツバ伍長は見目麗しいと思う。
 彼女がこの後どうなるかは、今現在の自分には関係ない事だ。

 先程そのような質問が彼女から飛んできたが、分からない事に対して不用意に発言する程、性格マルセロではないので、沈黙を貫く。

 マルセロも同様の対応をしているので、きっと彼女が笑顔になるような結果にはならないのかも知れないな。

 そんな事を思っていると、ミツバ伍長よりとんでも無い言葉が飛び出してきた

「マルセロさん、私のこと抱きたいですか?」

 なッ!
 この状況このタイミングでぶっ込んできた!
 しかもよりによってマルセロだとッ!

 マルセロはまんざらでもないようなリアクションを取るのを見て、更に苛立ちが増して来た。
 クソ! あんなデリカシーも無ければ、大事な時にぶっ込み癖のある男の何が良いのだ!

 と言うよりマルセロよ、お前は所帯持ちだろうが!

 ーーただ、その性格が良い結果を招く事も知っているメンディはこれ以上心中で友人を罵倒するのをやめていた

 マルセロのぶっ込み癖は結構メンディは好きなのである

 『それにしても一目惚れとはな』

 続くミツバ伍長の発言に再度驚く
 人の好みとは分からないものだな、と悟ったような事を考えているとマルセロとミツバ伍長が互いに近付いて行くの見えた、バックミラー越しにミツバ伍長とホンの刹那目があったので悪いがこちらも任務中だ…御しておこう

 「おい、下らない事は……」

 言い終えるや否や、マルセロとミツバ伍長は、まるで情熱的なポルノ映画のような接吻を交わした。

 クッ羨ましいじゃないか!
 そう思った刹那、我が人生最大のぶっ込みをマルセロがした

「なんじゃこらッ! マズッ! クサッ! マズッ!」

ーーぷッ!ふふっ……

 しまった! 思わず失笑してしまった。
 しかしマルセロよ、お前それはないだろう。

 自分には人様に言えるほど女性経験があるわけではないが、それでも言っちゃいけない事があるぐらいは知っている。

 まさか「キスしたあと女性に向かって言ってはいけないランキング」の1位と2位をトリプルアクセルで踏み込むとは思わなかったので、咄嗟に堪えきれなかった。

 マルセロが頭を抱え蹲るような姿勢でえずいている。

 その姿が「キスしたあと女性にみせてはいけない姿勢ランキング」1位のだったため、吹き出しそうになるのを堪える。
 やめろ、マルセロ。これ以上俺をその領域に行かせないでくれ!
 届かぬ声でマルセロにうったえてみるが、それは通じそうになかった。

 ふぅーッ……

 心を落ち着かせる。
 ただ、見てはいけないと思っていても、やはり気になってしまい、ミツバ伍長を見る。

……………

 鬼より鬼がいた

 バジリスクが石化するような視線をマルセロにむけていた。「やばいッ!」その光景含めツボに入りそうになる。
 口角を必死に下げて平静を装うとするが、その直後やはり自分はこのマルセロという男を見くびっていたようだと確信する。

 ミツバ伍長よぉ、と前置きしたマルセロは

「今日の夕飯、ドブ?」

ーーーぷふぅーッ!

 我慢できなかった
 もちろんマルセロはビンタされていた
 当然である。
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