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高校生活
第11話
しおりを挟む2つのグラスに炭酸水を注ぎ、リビングへ急ぐ。
思っていたより長く考え事をしていたようで、静を一人きりにしてしまった。と、申し訳ない気持ちになる。
コーヒーテーブルにグラスを置きながら、静を見る。
ソファに置いてあったクッションを抱きかかえ、真剣な面持ちで映画を観ている。
声をかけて、気を散らしてはかわいそうなので、無言のままソファを背もたれにして、床に座る。
画面を見ると、以前観た事がある映画のシーンが流れている。
私は映画を観ながらも、隣に座っている静の足に気を取られている。ソファの上に座っているのだから、足が隣にあるのは当たり前だが、気にしないようにすればする程、私の頭は言う事を聞いてくれない。
…さわりたい…
さっきまで『本気で好きになってしまった人には、簡単に手を出してはいけない』と考えていたくせに、実際に触れられる距離にいると、私の理性というものは、すぐどこかに隠れて息を潜めてしまう。
膝を抱えて、映画に集中しようと頑張る。
エンドロールも終わり、画面もメニュー画面に戻る。
でも私はずっと画面を見ている。今動いたら、静の足にしがみついてしまいそうだから…
私は動くキッカケがほしくて
「生徒会長、他に観たいのあったらどうぞ」
言いながら静を見る。その顔は明らかに不機嫌な顔なのに、やはりキレイで私の胸は締め付けられる。
しかし何故、今そんな顔をしているのか、解らない。映画がつまらなかったのか、そもそも映画を観たくなかったのか。考えても一向に答えは出ないし、キレイで不機嫌な顔は言葉を発せずにこちらを見据えている。
「生徒会長、私何か気に障ること言った?もしそうなら教えてよ」
床に座ったまま、静を見上げる。数秒が数時間に思える程の沈黙。落ち着かない。
「夜」
いつもの少し低い声で呼ばれる。この声で呼ばれると、私は自分の名前が物凄く大切な物のように思える。
もう、静以外の人に呼んでほしくない。
名前を呼ばれるだけで、頭がクラクラする。
もう一度呼んでほしくて返事をためらっていると、今度は少し強めに言われ、体が反応する。反応してしまった事が恥ずかしくて、うつむきながら返事をする。
「前から思っていたけど、私の事一度も名前で呼んでくれないけど、何か理由でもあるの?」
「 ………。」
「せっかく今日は二人きりなのに、さすがに他人行儀じゃない?」
至極真っ当な事を言われてしまった。困る。どう答えていいか迷う。
もし名前で呼んでしまったら、私は静に隠している気持ちを、抑える事ができるか自信がない。そのくらい静という名前は、私にとって大切な言葉なのだ。
でも何か答えなければ、納得はしてくれないだろう。
私は幾重にも気持ちを包み
「最初に生徒会長って言ったから、それで定着したって感じかな」
少し軽いノリで言ってみた。これで納得してくれと願いながら、笑顔で静を見つめた。
本当は、遊んでいる子達に見せる笑顔で静を見つめたくなかったが、『好き』という気持ちは、知られてはいけないような気がして軽い私、夜来さんを演じた。
しばらく黙っていた静が、立ち上がり
「今日はもう帰るわね。着替えるわ」
そう言って歩いて行こうとしたので、私は慌てて静の手首を掴んだ。
「ちょっ、ちょっと待ってよ。帰るって…今から帰るとか心配だからここに居なよ。一緒に居たくないなら私、隅っこにいるから」
帰したくない一心で説得を試みた。
「 ……… 」
「何か気に入らない事あったら言ってください。直しますから」
軽い私をやめ、静に言った。
静は私に手首を掴まれたまま、ソファに戻り腰を下ろした。
わたしはホッとして隣に座ろうとしたら、静が無言で人差し指を私の顔の前に出した。その指は私の顔の前からゆっくり動き、静の座っている足元を指した。
一瞬、何をしているのか解らなかったが、すぐ理解した私は胸が締めつけられ、呼吸が浅くなった。
静を見ると、その眼は艶っぽい色に変わっていた。
もう何も考えられなくなり、無言で静の前に正座し、その艶っぽい瞳のキレイな顔を見上げた。
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