あなたを想う

いいむい

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高校生活

第13話

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 電気ケトルに水を入れ、スイッチを押す。
 ティーカップを2つ用意し、キッチンカウンターに両手をつき息を吐く。
 どうしよう。いつもの感じと全然違う静が、かわいすぎて理性が戻ってきてくれない。

「あんなの反則でしょ」

 ポツリと呟き、戻ってきてくれない理性に召集命令をだす。
 平常心と小さく言いながら、大きく伸びをした時、腰に何かが、まとわりついてきた。
 驚いて、頭を下に向けお腹あたりを見ると、静が後ろから抱きついていた。
 私の頭に少し戻ってきていた理性は、スルスルと指の隙間から流れ落ち、消えていった。

「どうしました?気分でも悪いですか?横になった方が…」
 言い終わらないうちに
「夜、戻ってくるの遅い。一人にしないで」
 腰にまわされている腕に力を込められた。

 限界だ… 私は今すぐにでも静を壁に押しつけ、身動きが取れないようにし、キスの雨を降らせたかった……が、どうにかこうにか淫らな考えを抑え込み、腰にまわっている腕を撫でながら
「すみません。今お湯が沸いたのですぐ作って持っていきますからこの腕、離してくれますか?火傷したら大変ですからね」
 そう言って、静をリビングに戻らせた。


 コーヒーテーブルにティーカップを置き、静の隣に腰を下ろす。

「夜、紅茶飲まないの?」

「私、猫舌なんです。少し冷ましてから飲みますよ」

 出来るだけ、静の顔を見ないようにしながら答えた。

 自分を落ち着ける為、昼間読んでいた小説をペラペラとめくり、適当なところから読みはじめた。
 静は紅茶を飲みながら、違う映画を観ている。
 このまま暫く小説を読んでいれば行方不明な理性も戻ってくるだろうと思ったが、甘かった…



 やっぱり私はソファで寝た方がいいよなぁ。
 静に手を出すつもりはないが、もし一緒に寝たら私の理性は欲望に負けて、どこかに隠れてしまう可能性は大いにある。

「生徒会長、今日はベッドを使ってください。私はソファで寝るので。」

「……」

 返事が返ってこない。
静を見ると、今日何度目になるかわからない不機嫌でキレイな顔が私を見ていた。
 あぁ、この人はいとも容易く私の心を鷲掴みにして、首を真綿で締め付けてくる。触れたい…  その唇に私の唇を重ねたい。あなたの全てに触れて熱い吐息混じりの淫らな声を聞きたい…

「夜…」

「ベッドシーツも掛け布団も新しい物に替えてありますから」

 不純な思考をシャットダウンして静の言葉を待つ。

「あんな映画観た後に一人で寝ろというの?」

 私を睨みつける顔と、言葉とのギャップがかわいすぎて、私の理性はすぐ旅に出る。
 私はこのかわいく、愛しい人を少しからかいたくなった。

「生徒会長、私と一緒に眠りたいなら、ちゃんとお願いしてください」




 静はずっと黙って映画を観ている。
 もう少ししたら、私から謝り、眠るまで側にいると言ってあげよう。
 そんな事を考えていたら、いきなり静が私と向き合う形で膝の上に跨ってきた。しかも腕を首の後ろにまわして、見下ろしている。もう…ムリ。

 計算か、無自覚か、どちらにせよ今日の静は私を落としにきているとしか思えない。
 もしそうなら‥今すぐ落とされたい。

 欲望がゆっくりと首をもたげる。
 旅立っていった理性は戻ってこない。
 もう…ガマンできない…

 膝の上と、首にまわされた腕の感触が、私の体を支配してきた。
 見下ろしている顔が少し赤い。
 私はガマンできず、細い腰に腕をまわし強く抱き寄せた。
 静の体が一瞬こわばったが、私は構わず鎖骨あたりに顔を近づけた。
 一緒のボディソープを使ったはずなのに静の匂いと混ざり、とてもいい匂いがした。
 私は腰にまわした腕を背中に移動させ、背中、首、後頭部と撫でまわしながら今の状況を考える。
 これって、もしかして誘われてる?
 どう考えてもそうとしか思えないんですけどって、違いますかね?
 誰に聞いているのか分からないが、あわよくばと考える遊び人脳が、思考を乗っ取りにかかってきた。
 静の背中をさわりながら、顔を首筋に近づけ唇を押し当てる。

「んっ…」

 耳元で聞こえる吐息混じりの声に、遊び人脳がGOサインを出す。
 首筋から耳へ舌を這わす。静の体が小さく震える。
 耳たぶを軽く噛み、耳の輪郭に沿って舐め上げる。
「…あっ…」
 鎖骨の下あたりに唇を押しつけ、少し強く吸う。
「よ…よる」
 うわずった声で呼ばれた名前と同時に、頭を抱え込まれる。
 その声と動作で私の体は疼いたが、『っ、しまった‥』急に理性が戻ってきて、冷静さを取り戻した。
 私は背中にまわしている手の動きを止め、静の腕を私の頭から離しながら顔を見上げた。
 目は閉じているが、頬はまだほんのり赤く、口は少し開いている…こんな顔を見たらもう行く所までしまいたい……が
 戻ってきている理性を捕まえることに成功した。

「意地悪してすみません。生徒会長が眠るまで側にいますから大丈夫ですよ」

 私といる方が大丈夫じゃないですよと思いながらも口には出さず、頭を撫でながら静を膝から下ろした。

 紅茶はすっかり冷めきっていた。



 バスルーム、洗面台の鏡の前。二人並んで歯を磨く。
 鏡に写る静を見ながら…かわいすぎっ。

「やっぱお願いしてほしかったなあ」

 心の声が漏れてしまい、慌てて静を見たが、口をすすいでいたので聞こえていないようだ。 …危ない危ない。


 静を寝室に案内する。
 部屋は至ってシンプルで、あるものといえばダブルベッド、クローゼット、本棚。

「生徒会長が眠るまでちゃんといますから、ゆっくり休んでください」

 ベッドに腰掛けている私の隣に静が座り、服の裾を掴んできた。恥ずかしそうな顔とも、不機嫌そうな顔ともとれる表情をして、私を見ている。
 その顔に私の心臓は、また持っていかれる。
 切れ長の眼が羞恥で少し、潤んでいるように見える。

「‥よ…る」

 消え入りそうな声で呼ばれ、私の心臓は帰ってくる気配はないが、ドクンッと大きく脈打つ。

「どうしました?」

 押し倒したくて堪らない衝動を抑え込む。



「私と一緒に眠りなさい」


























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