18 / 23
高校生活
第18話
しおりを挟む静が泊まりに来たからといって、学校での関係が変わる訳でもなく日々は淡々と過ぎていった。
もうすぐ期末試験のため、みんな勉強に忙しそうだ。進学を控えている人達は、いっときだって気が抜けないだろう。
静も勉強と生徒会が忙しいのか、全くかまってくれない。
別にお付き合いをしている訳ではないので、かまわれないのは仕方のない事だと分かっていても、さすがに少し淋しくなる。
だからと言う訳ではないが、今私の膝の上には、静にはかなわないが、私的にはドタイプで、人目を引く程の顔面をお持ちの、他のクラスの紫月凛《しづきりん》が座っている。
私の顔や首筋、耳を、あいかわらずのいやらしい手つきでさわっている。
今は自習の時間なので、他のクラスの生徒がいても、誰も気にしない。
静も、生徒会関係で呼ばれたみたいだし、丁度いいヒマつぶしにもなってくれているので、ありがたい。
「夜来さん、目の下のクマ酷くない?やっぱり眠れない?」
凛は、私がいつも寝不足なのを知っていて、いつも気にかけてくれる。
「うん。すぐ目が覚める。でも、もう慣れてるから平気だし、今から凛を抱きしめて寝る」
「アハハ、いいよ。頭撫でてるから、少しでも眠れたらラッキーだね」
凛の声と、頭を撫でられているのが気持ちよくて、段々意識が曖昧になっていく中、この手が静の手ならいいのにと思っている自分は、やっぱり酷い人間だと思いながら眠りに落ちた…
周囲が騒がしくて目を開ける。いつの間にか自習の時間は終わっていて、休み時間になっていた。
凛はいつの間にか自分のクラスに戻ったみたいだ。少し眠ったおかげで、スッキリしたのでお礼を言おうと凛のクラスへ行くと、すぐに私に気付いた凛が、抱きついてきた。
「さっきはありがとう。おかげで頭スッキリだよ」
「じゃあ、お礼に勉強教えて欲しいな…今夜」
上目遣いで誘われたら、断る理由はないが、一応聞いてみる。
「試験勉強と体の勉強、どちらがお望みですか?」
凛の耳元に顔を近づけて、囁いた。
「もちろん、体の勉強」
即答された。
翌日、私の首には見事に赤い印がいくつも目立つ場所に付いていた。
こんなに付けられたのは、久しぶりだなぁと思いながら教室に入り、席に着いた。
たいして面白くもない授業が終わり、次の時間はまた自習になっていた。
静は…またいない。
目の保養がいないとつまらん。ふてくされ、机に突っ伏して目を閉じていると、耳元で
「夜来さん…昨日すっごく気持ちよかった…」
甘い吐息混じりで聞こえてきた。
「あっ、凛。今のすっごいエロっ。最高だった」
感想を述べると凛はニコニコしながら私の膝の上に乗り、また首やら顔やらをさわっている。以前なら、凛に触れられると気持ちよくて嬉しかったのに、やっぱり静が触れてくれた時とは違うなぁ。あんまりドキドキしなくなっちゃったな。やっぱり静に夢中になっているからかなぁ。
考える事に夢中になりすぎて、自分が呼ばれている事に気が付かなかった。
「夜来さん。放課後、生徒会室まで来てください」
声の主を見る。眉間に深いシワを寄せ、不機嫌な顔。切れ長の目は、どこまでも冷たい漆黒の瞳をしていた。
私の返事を待たず、静は自分の席に戻ってしまった。
私がずっと静を見ているのが気に入らないのか、膝の上に乗っていた凛が、私の首に腕をまわし、首に顔を近づけたかと思うと、おもいっきり噛みついてきた。
思わず声が出そうになり、口を手で押さえる。ギリギリと歯に力を入れ噛まれる。
私は凛の背中をバシバシ叩き、噛むのをやめるように促した。
「何してんの?さすがにやり過ぎでしょ」
少し不機嫌な声で文句を言った。
「夜来さん、生徒会長の事見過ぎ。ムカつく」
私はため息をついた。
「あのさぁ、前も言ったけど、お互い遊びの関係って事で納得したんじゃないの?他の子達だって遊びなんだからさぁ、一人だけ特別とかマジ無理だから」
少し声が大きくなってしまったが、別に誰に聞かれようが関係ない。
「それに、もう誰ともヤル気ないし、もちろん凛ともこれで……」
言い終わらないうちに、思いっきり頬を叩かれた。
凛は『最っっ低』と、目に涙を浮かべながら教室から出て行った…。
口の中に血の味が広がる。唇に指を当てる。ヌルッとした感触があり、指を見ると赤く染まっていた。口内と唇を切ったようだ。
ハァーと大きくため息をつき、めんどくさ…
小さく呟いた。
来週から期末試験が始まる関係で、今日は半日で終わるが、静に呼ばれている。
でも、さっきの出来事のせいで、全てがめんどくさ…という状態になってしまい、教室を出ようとしていた静を呼びとめ、用事ができたから、日を改めてほしいと一方的に伝え、静の顔も見ずに教室を後にした。
マンションに着き、エントランスを抜けエレベーターに乗る。9階を押し、流れる数字を見る。廊下を突き当たりまで歩き、カギを開け中へ入る。
制服を脱ぎ、Tシャツと薄手のスウェットに着替え、そのままベッドへ倒れ込む。
眠ってやろうと目を閉じるが、全く睡魔は襲ってこない。
ハァーめんどくさ。遊びまくっていれば、いつかはこうなると分かっていたが、まさか静もいる教室でなるなんて…ムカつく…誰に言うわけでも、もちろん凛に言うわけでもなく呟く。
でも…ちょうど良かったのかもしれない。遊んでいたほとんどの子達は受験生だし、あまり夜遊びに付き合わせるのも悪いしね。自分に言い聞かせ、納得させる。
凛には感謝しないと…かな。と、凛で思い出した。噛まれたんだと、鏡の前に行き、首を見る。昨夜付けられた赤い印はまだ濃い色を残しながら、あちこちに散っている。噛まれた所は少し腫れている。唇も切れている跡がハッキリ見える。
噛まれたの久しぶりだなぁ…そういえば、静に噛み跡さわられたっけ。
逢いたいな。
やっぱり生徒会室に行けば良かったな。
少し後悔しながらキッチンへ行き、冷蔵庫を開ける。あいかわらず、卵とベーコンしか入っていない。
「お昼は抜くか…あー静の手料理が食べたい」
声を出しながら、炭酸水をグラスに注ぎ一口飲んでからリビングへ行く。
本棚から小説を取り、ソファへ沈み込む。
パラパラとページをめくり、読み始める。
インターホンの音で目を開ける。いつの間にかウトウトしていたようだ。
もう一度インターホンが鳴り、仕方なく出ると、エントランスに静の姿が写っていた。私は急いでロックを開け、軽く身だしなみを整えて、ドアを開け、エレベーターまで走った。
ちょうどエレベーターが止まり、静が姿を現した。
「生徒会長、来てくれたんだ。逢いたかったから凄く嬉しい」
少し泣きそうな顔で言ってしまった。
部屋まで歩きながら、
「制服じゃないけど、どうしたんですか?こっちの方に用でもあったんですか?」
聞きながら部屋の鍵を開け、静を部屋の中へ入れる。
「おじゃまします」
少し低い声が心地いい。
「いらっしゃい」
笑顔で言った。
0
あなたにおすすめの小説
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
恋をするなら腐れ縁
石田ノドカ
恋愛
佐伯樹と木埜下梢は、腐れ縁を超えた腐れ縁だ。
互いに産まれて来る前から家が隣で親同士が仲良く、産まれてからもその関係は続き、兄弟姉妹同然に過ごして来た。
時間は進み、二人ともが社会人になって忙しくなろうとも、ゲームに漫画にアニメにと、共通のオタク趣味でも繋がり続けていた。
そんなある日、樹のもとに、梢から一件のメッセージが届く。
『ヤケ酒』
シンプルな文面はしかし、事態を察するには易いもので、樹はそれに『いつでも』と返す。
すぐに予定は決まり、その日の夜。
ヤケ酒会と称して樹の家にて開かれた飲み会の席で梢は、仕事とプライベートの悩みを打ち明ける。
……が。
何がどうなったのか、気が付けば二人の関係性は、『腐れ縁』から『恋人』というものにアップデートされてしまうのだった。
慣れない空気感に戸惑うが、そこでも二人は阿吽の呼吸。
やっぱねぇわと一言置いて、今夜もオタク談義に花が咲く。
それでも確かに続いてゆくのは、『恋人』という新たな二文字の関係性。
いつも通りのことをしていても、ふとした拍子に『恋』の文字がチラついてしまって、いつも通りではいられなくなってしまう。
これはそんな、恋を意識したことがない相手と紡ぐ、慣れない恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる