2 / 17
神子は三度目覚める
しおりを挟む
私が二度目に目覚めた時の衝撃は一言では言い表せない……
まず一度目に目覚めたのは、真っ白な部屋だった。私以外に人は居ない白い空間にいて、そこで私は何年間か過ごしていた。
数年か数十年かは、わからない。長い時間そこで身体を回復している様だった。意識がはっきりしてから、自分の姿を確認した時は本当に神様っているんだわ! と泣いて喜んだ。
年は17~18歳くらい。黒い髪は胸の下まであり、まっすぐストレート。何年間も、ただ寝ていてお手入れもしていないのにも関わらず艶々していた。瞳も同じく真っ黒で、黒目部分が大きく可愛いらしい。黒目がちな分、実年齢より少し幼く見えてしまう感じだろう。そして、透き通る程の白い肌に、そこそこの胸。唇は小さくぷるんと赤い。鼻は小ぶりで形がよかった。
美少女である事以外は、私の理想通りの容姿だった。
以前の私は日本人の父親とヨーロッパ系の母親を持つハーフだった。そのため私自身は、日本生まれ日本育ちの完全な日本人のつもりだったけれど、容姿は完全に外国人だった。
髪はブロンドで波打ち、瞳は薄いブルー。肌は白く周りが驚く程のお人形の様な美少女だった。
今思えば、あの男の子達は私の事が好きだったのだろう。子供特有の『好きな女の子には意地悪したくなる』というやつだ。しかし、外人だとか気持ち悪いだとか、言われ続けた私は傷ついて泣いてばかりいた。
更に悪い事に人形の様な容姿に、小学生にして既に胸はEカップはあった私は、変態やストーカーにつけ回される様になっていた。
そうでなくとも、知らない人に勝手にスマホで写真をとられる事も多くなっていたため、怖くて外に一人では出られなくなってしまっていた。
出かける際に毎回、父や母に付き添って貰わなければならない事も、だんだん私の心に負担になっていた。
外出するたびに集まる他人の視線。
そして異性からの性的な視線。
同性からの意地悪な視線。
中学校にはほとんど行けず、私は引きこもりになっていた。唯一の友人には残念美少女と呼ばれていた。私もそう思う。
だから私は、普通になりたかったのだ。
黒髪、黒目で普通の皆と同じ女の子に憧れていた。そして、学校に通ってお友達と遊んで、勉強したり、部活をしたり、恋をしたり……それが夢だった。
実際は学校にも行けず、外にも行けず、家でゲームしたり、本を読んだり、友人はネットの中で交流するだけ。そんな17歳になっていた。
そんな私の夢を叶えてくれるのは、乙女ゲームだけだった。普通の女子高校生が異世界転移して、イケメンと恋に落ちたりするのが好きだった。そんな時は私も普通の女子高校生になれたから。
でも一番好きだったのは、やはり一番最初にハマった初期の乙女ゲーム。ライバルと聖女を目指して頑張る中で、王子様や騎士様に手伝って貰ううちに恋が芽生えるというものだ。今の流行りの様に、悪役令嬢がいたり断罪したりフルボイスだったりしないけれど、最初にハマったせいか大好きだった。リメイクして、フルボイスでスチル増やして欲しい。ただ、昨今の流行りではないから、諦めてはいたけれど……ね。
この際、美少女なのはしょうがないけれど、普通の美少女になれた! と、とても嬉しかったのに……
二度目に目覚めたのは、私のうっかりによってか、女神様によってなのかは、はっきりわからないが……この世界に降りてきた時だった。
ただ私は女神様に会ったことはないが、一度目の白い部屋に居るときに女神様の存在は感じていた。
そして勝手に、女神様を今世での母親の様に思っていた。会った事も見た事も、ましてや話した事も無いのにだ。
しかしそれよりも衝撃を受ける事があったのだ!
それはこの世界で目覚めて、カラフルな髪の毛や瞳の人達を見た時の、私の絶望が誰かにわかって貰えるだろうか! いやない!
むしろ、以前の私の容姿の方が美人の侍女くらいのレベルで目立たなかったんじゃないか。私は何度生まれ変わっても、その世界で異質なんだろうかと、ショックでその日は眠れなかった。
周りの人達はこの世界に突然おりてきて混乱していると思った様だが、まだ他の世界に降りたという実感もなくただ、「私」という異分子に私自身が馴染めずにひとりで狼狽えていただけだ。
今、私の周りにいるのはこの世界の美形ばかりであるが、とにかく色が派手過ぎて目がチカチカする。様々な色があっても黒髪・黒目は居ないらしく、黒髪・黒目は神子の特徴らしい。過去に降りてきた神子の血をひいていても、どちらかの特徴しか持って生まれないらしいのだ。
最初に会った彼が黒髪だったから、そんな世界だと気づかなかった。私も彼も異質なのだ。
そして乙女ゲームだと気づき失神して、三度目に目覚めた。
「ああ! 良かった!! 神子様! 目覚められたのですね!」
目覚めた私に慌てて近寄ってきたのは、この世界で私の身の回りの世話をしてくれている侍女のベロニカだ。
20歳くらいに見えるが、17歳の同じ年だ。萌葱色の髪をきっちり編み上げていて、濃い茶色の瞳は強い意思を感じる。大人っぽく、とても親切で……なにより同じ年だとわかってからは、周りに人がいなければ友達の様に接してくれる大切な人だ。
「ベロニカ心配をかけてごめんなさい。今はまだ話せないけれど、考える事が出来て混乱しただけなの。」
とにかく今はひとりでゆっくり、この世界について考える時間が欲しかった。
まず一度目に目覚めたのは、真っ白な部屋だった。私以外に人は居ない白い空間にいて、そこで私は何年間か過ごしていた。
数年か数十年かは、わからない。長い時間そこで身体を回復している様だった。意識がはっきりしてから、自分の姿を確認した時は本当に神様っているんだわ! と泣いて喜んだ。
年は17~18歳くらい。黒い髪は胸の下まであり、まっすぐストレート。何年間も、ただ寝ていてお手入れもしていないのにも関わらず艶々していた。瞳も同じく真っ黒で、黒目部分が大きく可愛いらしい。黒目がちな分、実年齢より少し幼く見えてしまう感じだろう。そして、透き通る程の白い肌に、そこそこの胸。唇は小さくぷるんと赤い。鼻は小ぶりで形がよかった。
美少女である事以外は、私の理想通りの容姿だった。
以前の私は日本人の父親とヨーロッパ系の母親を持つハーフだった。そのため私自身は、日本生まれ日本育ちの完全な日本人のつもりだったけれど、容姿は完全に外国人だった。
髪はブロンドで波打ち、瞳は薄いブルー。肌は白く周りが驚く程のお人形の様な美少女だった。
今思えば、あの男の子達は私の事が好きだったのだろう。子供特有の『好きな女の子には意地悪したくなる』というやつだ。しかし、外人だとか気持ち悪いだとか、言われ続けた私は傷ついて泣いてばかりいた。
更に悪い事に人形の様な容姿に、小学生にして既に胸はEカップはあった私は、変態やストーカーにつけ回される様になっていた。
そうでなくとも、知らない人に勝手にスマホで写真をとられる事も多くなっていたため、怖くて外に一人では出られなくなってしまっていた。
出かける際に毎回、父や母に付き添って貰わなければならない事も、だんだん私の心に負担になっていた。
外出するたびに集まる他人の視線。
そして異性からの性的な視線。
同性からの意地悪な視線。
中学校にはほとんど行けず、私は引きこもりになっていた。唯一の友人には残念美少女と呼ばれていた。私もそう思う。
だから私は、普通になりたかったのだ。
黒髪、黒目で普通の皆と同じ女の子に憧れていた。そして、学校に通ってお友達と遊んで、勉強したり、部活をしたり、恋をしたり……それが夢だった。
実際は学校にも行けず、外にも行けず、家でゲームしたり、本を読んだり、友人はネットの中で交流するだけ。そんな17歳になっていた。
そんな私の夢を叶えてくれるのは、乙女ゲームだけだった。普通の女子高校生が異世界転移して、イケメンと恋に落ちたりするのが好きだった。そんな時は私も普通の女子高校生になれたから。
でも一番好きだったのは、やはり一番最初にハマった初期の乙女ゲーム。ライバルと聖女を目指して頑張る中で、王子様や騎士様に手伝って貰ううちに恋が芽生えるというものだ。今の流行りの様に、悪役令嬢がいたり断罪したりフルボイスだったりしないけれど、最初にハマったせいか大好きだった。リメイクして、フルボイスでスチル増やして欲しい。ただ、昨今の流行りではないから、諦めてはいたけれど……ね。
この際、美少女なのはしょうがないけれど、普通の美少女になれた! と、とても嬉しかったのに……
二度目に目覚めたのは、私のうっかりによってか、女神様によってなのかは、はっきりわからないが……この世界に降りてきた時だった。
ただ私は女神様に会ったことはないが、一度目の白い部屋に居るときに女神様の存在は感じていた。
そして勝手に、女神様を今世での母親の様に思っていた。会った事も見た事も、ましてや話した事も無いのにだ。
しかしそれよりも衝撃を受ける事があったのだ!
それはこの世界で目覚めて、カラフルな髪の毛や瞳の人達を見た時の、私の絶望が誰かにわかって貰えるだろうか! いやない!
むしろ、以前の私の容姿の方が美人の侍女くらいのレベルで目立たなかったんじゃないか。私は何度生まれ変わっても、その世界で異質なんだろうかと、ショックでその日は眠れなかった。
周りの人達はこの世界に突然おりてきて混乱していると思った様だが、まだ他の世界に降りたという実感もなくただ、「私」という異分子に私自身が馴染めずにひとりで狼狽えていただけだ。
今、私の周りにいるのはこの世界の美形ばかりであるが、とにかく色が派手過ぎて目がチカチカする。様々な色があっても黒髪・黒目は居ないらしく、黒髪・黒目は神子の特徴らしい。過去に降りてきた神子の血をひいていても、どちらかの特徴しか持って生まれないらしいのだ。
最初に会った彼が黒髪だったから、そんな世界だと気づかなかった。私も彼も異質なのだ。
そして乙女ゲームだと気づき失神して、三度目に目覚めた。
「ああ! 良かった!! 神子様! 目覚められたのですね!」
目覚めた私に慌てて近寄ってきたのは、この世界で私の身の回りの世話をしてくれている侍女のベロニカだ。
20歳くらいに見えるが、17歳の同じ年だ。萌葱色の髪をきっちり編み上げていて、濃い茶色の瞳は強い意思を感じる。大人っぽく、とても親切で……なにより同じ年だとわかってからは、周りに人がいなければ友達の様に接してくれる大切な人だ。
「ベロニカ心配をかけてごめんなさい。今はまだ話せないけれど、考える事が出来て混乱しただけなの。」
とにかく今はひとりでゆっくり、この世界について考える時間が欲しかった。
49
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
転生公爵令嬢は2度目の人生を穏やかに送りたい〰️なぜか宿敵王子に溺愛されています〰️
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リリーはクラフト王子殿下が好きだったが
クラフト王子殿下には聖女マリナが寄り添っていた
そして殿下にリリーは殺される?
転生して2度目の人生ではクラフト王子殿下に関わらないようにするが
何故か関わってしまいその上溺愛されてしまう
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる