7 / 17
ウィリアムside
しおりを挟む
私にとって半年違いの可愛い弟は、仲の良い友でもあり一緒に学ぶ戦友でもあった。
弟は、剣術も勉学も私と変わらずに出来が良かった。だからこそ、一緒に鍛練するのも楽しかったし学ぶのも楽しかった。
いつ頃からだったか、弟を王太子に据えたい一部の過激な貴族達が暗躍しはじめた。
弟は 私 と同じくらい優秀だ。しかも、神子様の血をひく巫女を母に持った為、魔力・神力共に他に例をみない程強かった。剣術だけなら同じレベルだが、魔法を使えば私など相手にもならないだろう。
だが、私が王太子に選ばれていた。
私が正妃の子供だからなのか、それとも半年だけでも早く生まれたためか……私自身の価値ではないのではないか。
そうして私は下らない子供じみた嫉妬で弟を遠ざけ傷つけた。
弟と離れてすぐに後悔が募る。あの子が王位を望んでいない事など、良く知っていたのだ。幼いながら、いつでも私の為に動いてくれていた。
それがまた、私にとって辛い事だった。
本当に王にふさわしいのは、弟ではないか。
皆がそう思っているのではないか。幼い私の心は嫉妬と猜疑心でいっぱいになっていた。
定期的にふわりとした白い光の珠が、くるくると私の周りをまわっている事があった。神の力が働いている事は直ぐにわかっていた。毒に侵されていたり、体力が落ちていたりと身体的な際だけでなく、猜疑心で身動きがとれない時や、悪意に気落ちしている時など、私に何かあった時に弟が祈ってくれているらしい。
弟はいつでもまっすぐだ。
私を兄と慕い私が王になると信じてくれている。……ならば私は兄として応えたい。弟が支えたい王となろう。
そのためには、まず力をつけなければならない。誰にも文句のつけようがない王としての力を得てみせよう。そして、弟と私を引き離し、力を得たい貴族達を明らかにしてみせよう。膿は潰して出しきらなければ……そうしたら、弟を迎えに行こう。
そう誓ってからも、老獪な貴族達のしっぽを掴むのは苦労した。悔しいが、まだあと一歩足りない。そうしている間にも弟と私には距離が出来てしまっている気がする。近衛騎士達も一部の者にしか内情は知らせていないため、弟に警戒をしている者もいるようだし、逆に弟の近衛騎士達も私に警戒をしているようだ。
そんな時、神子様が降臨された。
多くの貴族の前で、神子様の言葉によって弟が私の味方であり、心から私を案じてくれていると証明されたのだ。噂に惑わされる貴族どもはこれで落ち着くだろう。後は影で動いている貴族のみだ。神子様降臨や聖女試験に乗じて動きがあるだろう。そこで全てを炙り出したい。
それよりも、弟の様子がおかしい。
確かに仲の良かった幼い頃に神子様を見た事や恋情のような想いを話していたが……まさか今でも想っているのだろうか?
あの私に譲ってばかりで、欲しいものなど口にしない弟が、神子様を抱き上げ離そうとしない。……間違いないな……まさか神子様か……弟よ。頭を抱えそうになる。
しかし、その想いが神子様の降臨に繋がっているのかもしれないな……と、ふと思った。
今度こそ私が弟に力を貸そう。いや、力になりたい。
神子様は弟の住まう月の宮の一室にお連れする事にした。月の宮は第二王子の住まう宮殿で、王宮の奥に位置し独立しているため、警備もしやすくて良いだろうと進言しておいた。一瞬、弟が嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかった。……可愛いやつだ。
私が協力出来るのは、とりあえずこの辺までか。
落ち着いた所で侍女の用意したお茶を飲む。目配せすると近衛騎士も侍女も静かに退室していく。
「こうして話せるのも何年かぶりだな。いつも私の為に祈りをありがとう」
そう言うと、弟は眠る神子様からやっと離れ、昔と変わらずまっすぐに私を見つめてきた。
「いえ。兄上をいつも支えたいと……私に力がないばかりに……上手く立ち回れず……不甲斐ないです」
「いや。私もまだ暗躍している連中の全てを把握しきれていないのだ。もうしばらく待て。……出来れば……また昔の様に…………いや。ふふ……またな」
同じ気持ちでいる事はわかり合えた。これ以上の言葉はお互いに重ねる事はなかった。最近では一番嬉しい出来事であった。これも神子様の恩恵か? 静かに笑って立ち上がる。
「そうそう。私が協力出来るのはとりあえずここまでだからな。後はがんばれよ。」
ニヤリと笑って退室した。
弟は、剣術も勉学も私と変わらずに出来が良かった。だからこそ、一緒に鍛練するのも楽しかったし学ぶのも楽しかった。
いつ頃からだったか、弟を王太子に据えたい一部の過激な貴族達が暗躍しはじめた。
弟は 私 と同じくらい優秀だ。しかも、神子様の血をひく巫女を母に持った為、魔力・神力共に他に例をみない程強かった。剣術だけなら同じレベルだが、魔法を使えば私など相手にもならないだろう。
だが、私が王太子に選ばれていた。
私が正妃の子供だからなのか、それとも半年だけでも早く生まれたためか……私自身の価値ではないのではないか。
そうして私は下らない子供じみた嫉妬で弟を遠ざけ傷つけた。
弟と離れてすぐに後悔が募る。あの子が王位を望んでいない事など、良く知っていたのだ。幼いながら、いつでも私の為に動いてくれていた。
それがまた、私にとって辛い事だった。
本当に王にふさわしいのは、弟ではないか。
皆がそう思っているのではないか。幼い私の心は嫉妬と猜疑心でいっぱいになっていた。
定期的にふわりとした白い光の珠が、くるくると私の周りをまわっている事があった。神の力が働いている事は直ぐにわかっていた。毒に侵されていたり、体力が落ちていたりと身体的な際だけでなく、猜疑心で身動きがとれない時や、悪意に気落ちしている時など、私に何かあった時に弟が祈ってくれているらしい。
弟はいつでもまっすぐだ。
私を兄と慕い私が王になると信じてくれている。……ならば私は兄として応えたい。弟が支えたい王となろう。
そのためには、まず力をつけなければならない。誰にも文句のつけようがない王としての力を得てみせよう。そして、弟と私を引き離し、力を得たい貴族達を明らかにしてみせよう。膿は潰して出しきらなければ……そうしたら、弟を迎えに行こう。
そう誓ってからも、老獪な貴族達のしっぽを掴むのは苦労した。悔しいが、まだあと一歩足りない。そうしている間にも弟と私には距離が出来てしまっている気がする。近衛騎士達も一部の者にしか内情は知らせていないため、弟に警戒をしている者もいるようだし、逆に弟の近衛騎士達も私に警戒をしているようだ。
そんな時、神子様が降臨された。
多くの貴族の前で、神子様の言葉によって弟が私の味方であり、心から私を案じてくれていると証明されたのだ。噂に惑わされる貴族どもはこれで落ち着くだろう。後は影で動いている貴族のみだ。神子様降臨や聖女試験に乗じて動きがあるだろう。そこで全てを炙り出したい。
それよりも、弟の様子がおかしい。
確かに仲の良かった幼い頃に神子様を見た事や恋情のような想いを話していたが……まさか今でも想っているのだろうか?
あの私に譲ってばかりで、欲しいものなど口にしない弟が、神子様を抱き上げ離そうとしない。……間違いないな……まさか神子様か……弟よ。頭を抱えそうになる。
しかし、その想いが神子様の降臨に繋がっているのかもしれないな……と、ふと思った。
今度こそ私が弟に力を貸そう。いや、力になりたい。
神子様は弟の住まう月の宮の一室にお連れする事にした。月の宮は第二王子の住まう宮殿で、王宮の奥に位置し独立しているため、警備もしやすくて良いだろうと進言しておいた。一瞬、弟が嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかった。……可愛いやつだ。
私が協力出来るのは、とりあえずこの辺までか。
落ち着いた所で侍女の用意したお茶を飲む。目配せすると近衛騎士も侍女も静かに退室していく。
「こうして話せるのも何年かぶりだな。いつも私の為に祈りをありがとう」
そう言うと、弟は眠る神子様からやっと離れ、昔と変わらずまっすぐに私を見つめてきた。
「いえ。兄上をいつも支えたいと……私に力がないばかりに……上手く立ち回れず……不甲斐ないです」
「いや。私もまだ暗躍している連中の全てを把握しきれていないのだ。もうしばらく待て。……出来れば……また昔の様に…………いや。ふふ……またな」
同じ気持ちでいる事はわかり合えた。これ以上の言葉はお互いに重ねる事はなかった。最近では一番嬉しい出来事であった。これも神子様の恩恵か? 静かに笑って立ち上がる。
「そうそう。私が協力出来るのはとりあえずここまでだからな。後はがんばれよ。」
ニヤリと笑って退室した。
28
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
転生公爵令嬢は2度目の人生を穏やかに送りたい〰️なぜか宿敵王子に溺愛されています〰️
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リリーはクラフト王子殿下が好きだったが
クラフト王子殿下には聖女マリナが寄り添っていた
そして殿下にリリーは殺される?
転生して2度目の人生ではクラフト王子殿下に関わらないようにするが
何故か関わってしまいその上溺愛されてしまう
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる