花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜

木村 巴

文字の大きさ
12 / 59

約束

しおりを挟む



「ここは……?」

気がつくと、私は客間の一室にいるようだった。

身体が驚くほど軽い。植栽の中で意識を失っていた時に見た人だろうか。
 そうだ、この人がきっと助けてくれたのね。

 楽になった身体を起こし、その人を見ると驚いたのか固まっている。あ……勢いよく起きすぎちゃったかも。
 貴族の前でこんな動きしたら驚くよね。

 それに、王女だって信じて貰えなくなっちゃう。それは困る!

「あの! お兄さんがさっき助けてくれた人ですよね! えっと、あの! ありがとうございます!!」


 二人とも、なんだか呆然としている。

 ああ、勉強した淑女教育はこんな時に全然出てこないのだと、身を持って実感した。前世の記憶が強すぎて、こんな風な突飛な事態には役に立たないとわかった。素しか出てこない。

 でも、ここで引かれても、引き下がる訳にはいかない! だって、このお兄さん知らない私を助けてくれるくらい、いい人だもん。
 バルバドス国の人にめっちゃ好印象!

 やっぱり、この国に行くしかない!


「あの、完全に怪しいとは、思うんですけど、いや、怪しい者じゃないんです。ただ、バルバドス国の人達に会いたくて……あ、お兄さんバルバドスの人だったりします?」


 急にここまで来てバルバドス国の人じゃなかったら、と心配になったが……そうだと、頷いてくれたのでバルバドスの人なんだろう。


 そうなんだと、良かった~と安心していたら、恩人さん(?)が真剣な顔をしている。

「その、君は、俺が怖くないのか?」

 なんでこのお兄さんが怖いのだろう。マジマジと見つめてみると、まあ綺麗すぎて怖いって言ってる訳じゃなさそう。キレイだけど。
 腕とか肩とかに傷があるから? 貴族は傷とか気にするもんね。私は元の記憶があるから傷は傷でしょ? くらいの感覚だけど、王侯貴族には違うみたいだもんね。わかるよ!
 ……なんか違いそうだな。
 あ! おっきいから? 私、今子供だもんね。確かに子供は怖がりそう。


「……怖くないですよ?」


 そう言うと恩人さん(?)は「そうか」といいながら、ほころぶ様に笑った。

 イケメンめ! 殺す気か! イケメンの幸せそうな笑顔の破壊力よ。


 前世大学生には……こうかはばつぐんだ。

 ダメダメ。正気に戻って。イケメンはゲット出来ないのよ。激レアだから。

 私は今、はっさい。


 恩人さん(?)がバルバドスの国の人なら、交渉相手を知っているかも?



「それでは、なぜ王女様が植栽の中で倒れていたのかお伺いしても?」

 突然扉の方から声が聞こえて、身体が飛び上がる程に驚いた。ええ~人がいたの?? 本当に気が付かなかった。どうしよう。怖い。助けて恩人さん(?)。と、お兄さんの袖を掴む。

 すると、二人がビシリッっと目を見張って固まった。


 ………………えっと、ダメ……だった?



 そぉ~っと、手を離そうとしたら、今度は恩人さん(?)が手を繋いでくれた。ありがとう。優しい。

 感謝を込めて微笑んでみせると、今度はバッと振り向いて扉の前の人と何やらアイコンタクトをとっている。
 なんだろう? 危険人物だと思われていたのかな? これは誤解を解かなくては。


「あの、バルバドス国からの使者様にお会いしたかったんです。出来れば紹介していただけないでしょうか」
「ええと、まぁ、それは大丈夫ですが……それは何故かと伺っても?」


 ちらっと恩人さん(?)をみると、ブンブンと頷いている。

「えっと、お二人はこの国の王族について詳しいですか?」
「はい。私は、バルバドスの宰相ですから」


 ええ!! 驚いたけれど、私の会いたかった使者さんだった!

「では……ギフトについても?」
「過去に公表されているものだけであれば、多少は……ただし、未婚で婚姻可能な王族のギフトを知るには多額の開示請求金がかかるのです」
「……そんなものまであるのですか? 知りませんでした」


 ギフトの情報開示に金銭まで要求していたのね……本当に最低。それなら、バルバドスの人達はギフトについてほとんど知らないって事よね?


「あの、お気づきかもしれませんが、私は第三王女でフローラと申します」

 二人ともわかっていたのか、驚きは無いようだった。お兄さんは小さく「フローラ……」と復唱していた。なぜ。
 いやいやいやいや、まずは伝えなくちゃ。



「詳しくは話せませんが、私の力は貴国の役に必ずたちます! ですので、私を娶ってくれませんか? たぶん、私のギフ「わかった」ト……えっ?」

「……約束する」




 ……え? わかった?


「…………あの?」


 金銭もたぶんかなり要求されるだろうし、形だけでも結婚って事になるんだけど……いいの? って、お兄さんが返事してるけど……?


「ああ、私はバルバドス国の第二王子でアレクサンダーだ」

 そう言って私の手をぎゅっと握ってくれた。驚きすぎて一瞬固まってしまったけど、理解が追いつくと嬉しくて、そのまま涙がポロポロこぼれた。


「いいんですか?……うれしい」

 宰相さんが呆然としながら「うれしい、ですか」と小さく呟いた後、今度はイキイキと話始めた。

「いやいや、それならとても良い機会でしたね! これ以上ないタイミングです」
「そうだな。数年で何とか出来ると思う。……その、待てるか?」


 二人で悪い顔をして笑いあった後、私を心配するように聞いてくれる。


 ──毒で倒れていたから、虐待されていると思っているのかも。それで受け入れてくれたのね。なんて優しいお兄さんなんだろう。しかも王子でイケメン。

「油断しなければ毒にやられる事もないので、大丈夫です」


 安心させるつもりで言ったが、王子様は眉間にしわを寄せ握った手に力が入ったのがわかった。

 そして、安心したら急に力が抜けた。王子様が「毒は抜けたが、もう少し眠るといい」と言ってくれたので、甘える事にした。


 私は、ぼんやりする意識の向こうで、真剣話をする二人を見ていた。

 良かった。本当に良かった。交渉は上手くいったって事だよね。
 交渉になっていたのかわからないけど、王子様が私の心配してくれたのかな?
 詳しくは話せないから、助かっちゃった。王に嘘は通じないから、隙を作らない為にも、今はあまり情報を出したりしたくなかった。
 だから、弱ってる王女を助けてくれるつもりなのかな。優しい人だな。

 ふふ、自然に笑みがこぼれる。

 私が笑うたび、二人が驚いてこちらを振り向くのが面白くてまた笑ってしまう。




 ──意識がぼんやりしていたせいで、この二人が意図的に北の山脈の魔物をこちらに追い立て、大規模討伐を依頼させようと盛り上がっていたなんて……知るよしもなかった。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。 ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。 同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。 ※♡話はHシーンです ※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。 ※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。 ※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

処理中です...