幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛

日下奈緒

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第8章 愛の宣言

「おまえは……嫁入り前の令嬢に傷をつけたんだぞ!」

国王の怒号が響き、ユリウスは床に叩き伏せられた。

「アルヴェール公爵に、なんと申し開きをするつもりだ!」

その言葉に私は息を呑み、胸が締めつけられる。

しかし、ユリウスはゆっくりと立ち上がり、傷だらけの姿でなお真っ直ぐに父を見据えた。

「アルヴェール公爵閣下は……すでに俺のことを認めてくださっています。」

「なっ……」

国王の表情が揺らぎ、深い溜め息が漏れる。

「ううっ……」

怒りと無念を滲ませながらも、国王は椅子に腰を落とした。

長い沈黙の末、重い声が落ちる。

「……仕方がない。結婚を認めよう。」

「父上!」

ユリウスの声が震える。私もまた信じられず、ただその場に立ち尽くした。

国王の瞳にはまだ怒りの炎が残っていた。

──それでも、親として、王として、もはや拒むことはできなかったのだ。

「その代わり、セシリア嬢には王宮で暮らしてもらう。」

国王は頭を抱え、深く溜め息をついた。

「身ごもったことは、明らかになるまで内密にするんだ。」

そして鋭い眼差しを私に向ける。

「よくもやってくれたな。」

「えっ……」

胸がざわめき、声が詰まる。

「子を成せば、結婚を許してもらえると思ったか。」

冷たい言葉に、全身が凍りついた。

酷い……そんなつもりは、決してなかったのに。

「父上!」

ユリウスが一歩前に出て、私を抱き寄せる。

「セシリアを侮辱するのはやめてください!」

怒りを宿した瞳で、まっすぐ国王を見据えるユリウス。

「彼女はただ……俺を愛してくれたんです。責めるなら俺を責めてください。」

「……ユリウス」

震える声で彼の名を呼ぶと、腕の力がさらに強まった。

国王はしばし黙したまま私達を見つめ、やがて低く唸るように言葉を吐いた。

「……ならば、すべての責任はおまえが負え。王宮での生活、覚悟しておくことだ。」

──こうして私は、望まぬ形で王宮へ迎え入れられることになった。

数日後、父は王宮に呼ばれた。

大広間には重臣や貴族が集い、荘厳な雰囲気が漂っていた。

「第2皇子、ユリウス・フォン・セルヴァンテスと、公爵令嬢、セシリア・フォン・アルヴェールとの婚約をここに宣言する。」

国王の声が高らかに響くと、場内は拍手で包まれた。

けれどその一方で、ざわめきも消えなかった。

「……あれほど隣国との政略を望んでいたのに?」

「何か事情でも変わったのだろうか。」

貴族たちの囁きは、やはり止まらない。

父は静かに頭を下げつつも、胸の奥で不安を覚えた。

やがて式典が終わると、国王は父を呼び止めた。

「アルヴェール公爵、執務室へ。」

大広間から執務室に移ると、国王は重々しく言葉を落とす。

「……おまえにだけは正直に言わねばなるまい。セシリア嬢はユリウスの子を身ごもっている。」

父は目を見開き、唇を引き結んだ。

「……やはり、そうでしたか。」

国王は深く息を吐き、頭を抱えた。
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