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第8章 愛の宣言
②
「おまえは……嫁入り前の令嬢に傷をつけたんだぞ!」
国王の怒号が響き、ユリウスは床に叩き伏せられた。
「アルヴェール公爵に、なんと申し開きをするつもりだ!」
その言葉に私は息を呑み、胸が締めつけられる。
しかし、ユリウスはゆっくりと立ち上がり、傷だらけの姿でなお真っ直ぐに父を見据えた。
「アルヴェール公爵閣下は……すでに俺のことを認めてくださっています。」
「なっ……」
国王の表情が揺らぎ、深い溜め息が漏れる。
「ううっ……」
怒りと無念を滲ませながらも、国王は椅子に腰を落とした。
長い沈黙の末、重い声が落ちる。
「……仕方がない。結婚を認めよう。」
「父上!」
ユリウスの声が震える。私もまた信じられず、ただその場に立ち尽くした。
国王の瞳にはまだ怒りの炎が残っていた。
──それでも、親として、王として、もはや拒むことはできなかったのだ。
「その代わり、セシリア嬢には王宮で暮らしてもらう。」
国王は頭を抱え、深く溜め息をついた。
「身ごもったことは、明らかになるまで内密にするんだ。」
そして鋭い眼差しを私に向ける。
「よくもやってくれたな。」
「えっ……」
胸がざわめき、声が詰まる。
「子を成せば、結婚を許してもらえると思ったか。」
冷たい言葉に、全身が凍りついた。
酷い……そんなつもりは、決してなかったのに。
「父上!」
ユリウスが一歩前に出て、私を抱き寄せる。
「セシリアを侮辱するのはやめてください!」
怒りを宿した瞳で、まっすぐ国王を見据えるユリウス。
「彼女はただ……俺を愛してくれたんです。責めるなら俺を責めてください。」
「……ユリウス」
震える声で彼の名を呼ぶと、腕の力がさらに強まった。
国王はしばし黙したまま私達を見つめ、やがて低く唸るように言葉を吐いた。
「……ならば、すべての責任はおまえが負え。王宮での生活、覚悟しておくことだ。」
──こうして私は、望まぬ形で王宮へ迎え入れられることになった。
数日後、父は王宮に呼ばれた。
大広間には重臣や貴族が集い、荘厳な雰囲気が漂っていた。
「第2皇子、ユリウス・フォン・セルヴァンテスと、公爵令嬢、セシリア・フォン・アルヴェールとの婚約をここに宣言する。」
国王の声が高らかに響くと、場内は拍手で包まれた。
けれどその一方で、ざわめきも消えなかった。
「……あれほど隣国との政略を望んでいたのに?」
「何か事情でも変わったのだろうか。」
貴族たちの囁きは、やはり止まらない。
父は静かに頭を下げつつも、胸の奥で不安を覚えた。
やがて式典が終わると、国王は父を呼び止めた。
「アルヴェール公爵、執務室へ。」
大広間から執務室に移ると、国王は重々しく言葉を落とす。
「……おまえにだけは正直に言わねばなるまい。セシリア嬢はユリウスの子を身ごもっている。」
父は目を見開き、唇を引き結んだ。
「……やはり、そうでしたか。」
国王は深く息を吐き、頭を抱えた。
国王の怒号が響き、ユリウスは床に叩き伏せられた。
「アルヴェール公爵に、なんと申し開きをするつもりだ!」
その言葉に私は息を呑み、胸が締めつけられる。
しかし、ユリウスはゆっくりと立ち上がり、傷だらけの姿でなお真っ直ぐに父を見据えた。
「アルヴェール公爵閣下は……すでに俺のことを認めてくださっています。」
「なっ……」
国王の表情が揺らぎ、深い溜め息が漏れる。
「ううっ……」
怒りと無念を滲ませながらも、国王は椅子に腰を落とした。
長い沈黙の末、重い声が落ちる。
「……仕方がない。結婚を認めよう。」
「父上!」
ユリウスの声が震える。私もまた信じられず、ただその場に立ち尽くした。
国王の瞳にはまだ怒りの炎が残っていた。
──それでも、親として、王として、もはや拒むことはできなかったのだ。
「その代わり、セシリア嬢には王宮で暮らしてもらう。」
国王は頭を抱え、深く溜め息をついた。
「身ごもったことは、明らかになるまで内密にするんだ。」
そして鋭い眼差しを私に向ける。
「よくもやってくれたな。」
「えっ……」
胸がざわめき、声が詰まる。
「子を成せば、結婚を許してもらえると思ったか。」
冷たい言葉に、全身が凍りついた。
酷い……そんなつもりは、決してなかったのに。
「父上!」
ユリウスが一歩前に出て、私を抱き寄せる。
「セシリアを侮辱するのはやめてください!」
怒りを宿した瞳で、まっすぐ国王を見据えるユリウス。
「彼女はただ……俺を愛してくれたんです。責めるなら俺を責めてください。」
「……ユリウス」
震える声で彼の名を呼ぶと、腕の力がさらに強まった。
国王はしばし黙したまま私達を見つめ、やがて低く唸るように言葉を吐いた。
「……ならば、すべての責任はおまえが負え。王宮での生活、覚悟しておくことだ。」
──こうして私は、望まぬ形で王宮へ迎え入れられることになった。
数日後、父は王宮に呼ばれた。
大広間には重臣や貴族が集い、荘厳な雰囲気が漂っていた。
「第2皇子、ユリウス・フォン・セルヴァンテスと、公爵令嬢、セシリア・フォン・アルヴェールとの婚約をここに宣言する。」
国王の声が高らかに響くと、場内は拍手で包まれた。
けれどその一方で、ざわめきも消えなかった。
「……あれほど隣国との政略を望んでいたのに?」
「何か事情でも変わったのだろうか。」
貴族たちの囁きは、やはり止まらない。
父は静かに頭を下げつつも、胸の奥で不安を覚えた。
やがて式典が終わると、国王は父を呼び止めた。
「アルヴェール公爵、執務室へ。」
大広間から執務室に移ると、国王は重々しく言葉を落とす。
「……おまえにだけは正直に言わねばなるまい。セシリア嬢はユリウスの子を身ごもっている。」
父は目を見開き、唇を引き結んだ。
「……やはり、そうでしたか。」
国王は深く息を吐き、頭を抱えた。
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