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「隼人さん……」
自然に涙が零れた。
「えっ?ちょっと?」
隼人さんはおどおどしながら、私を階段の踊り場に連れて来た。
「で?何で泣いてるの?」
隼人さんは私の顔を覗き込む。
優しい瞳。
でもこの瞳は、私のモノじゃない。
「……生理が来ないの。」
「えっ?」
「まだ確かめてないけれど、妊娠したかもしれない。」
隼人さんは無言でうつむく。
やっぱり彼女でもない人に、こんな事言われるなんて嫌だよね。
「でも、安心してください。何も期待してないので。」
「なにそれ。」
「堕胎なら、私が勝手にしますから。」
私は背中を向けた。
「待ってよ。」
隼人さんが私の腕を掴んだ。
「もし、妊娠してたら俺の子供だよ。」
真剣な目で言われる。
それはそうだ。
「ですね。では、堕胎の署名は書いて頂けますね。」
その瞬間、私は隼人さんに抱きしめられた。
「書くわけないだろ。」
「隼人さん。」
「書くわけないだろ!結婚しよう。」
私は目を大きく開けた。
「今、なんて……」
「結婚しよう、加奈子。」
身体が震えてきた。
「妊娠の話を聞いて、俺、嬉しかった。」
「そんな……私、彼女でもないのに。」
「加奈子を抱いた時から、俺の彼女は加奈子です。」
私達は見つめ合った。
「ずっと加奈子の事ばかり、考えていた。」
「私も。気づいたら隼人さんの事ばかり……」
そして私達は、見つめ合いキスをした。
始まりはまさかの偶然だったけれど、この人と出会えたことは必然だと思っている。
ありがとう、出会ってくれて。
自然に涙が零れた。
「えっ?ちょっと?」
隼人さんはおどおどしながら、私を階段の踊り場に連れて来た。
「で?何で泣いてるの?」
隼人さんは私の顔を覗き込む。
優しい瞳。
でもこの瞳は、私のモノじゃない。
「……生理が来ないの。」
「えっ?」
「まだ確かめてないけれど、妊娠したかもしれない。」
隼人さんは無言でうつむく。
やっぱり彼女でもない人に、こんな事言われるなんて嫌だよね。
「でも、安心してください。何も期待してないので。」
「なにそれ。」
「堕胎なら、私が勝手にしますから。」
私は背中を向けた。
「待ってよ。」
隼人さんが私の腕を掴んだ。
「もし、妊娠してたら俺の子供だよ。」
真剣な目で言われる。
それはそうだ。
「ですね。では、堕胎の署名は書いて頂けますね。」
その瞬間、私は隼人さんに抱きしめられた。
「書くわけないだろ。」
「隼人さん。」
「書くわけないだろ!結婚しよう。」
私は目を大きく開けた。
「今、なんて……」
「結婚しよう、加奈子。」
身体が震えてきた。
「妊娠の話を聞いて、俺、嬉しかった。」
「そんな……私、彼女でもないのに。」
「加奈子を抱いた時から、俺の彼女は加奈子です。」
私達は見つめ合った。
「ずっと加奈子の事ばかり、考えていた。」
「私も。気づいたら隼人さんの事ばかり……」
そして私達は、見つめ合いキスをした。
始まりはまさかの偶然だったけれど、この人と出会えたことは必然だと思っている。
ありがとう、出会ってくれて。
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