オジサンに恋しちゃダメですか

日下奈緒

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第1章 今時の若者

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「ああ、今日も一日仕事終わった。」

時計が18時を回った事を確認して、私は背伸びをする。

「奈津菜。今日は駅前のイタリアンに、ご飯食べに行かない?」

「いいね。」

私が同期の春乃と、ハイタッチをした時だ。


「今日、残業できる奴いないか?」

上司の外川さんの呼びかけに、辺りはシーンとなる。

「四宮はどうだ?」

「俺、無理っす。」

同期の四宮連太は、入社以来残業をした事がない。

「正岡は?」

「私今日、用事があって……」

春乃も残業お断り。


そうだよ、今時残業なんて、パワハラ以外の何でもない。

個人の時間を、勝手に奪わないでほしい。


「それじゃあ、残業で残れるのは、瀬田一人だけか。」

「ええっ!?」

なぜ私だけ、残業する事に決まってるの?

「課長、私も今日は用事があって……」

「瀬田に残業を断る理由が、あるのか?」

「はっ?」

外川課長はデスクから、一枚の紙を見せた。

「大体今日の残業は、お前のミスから始まった事だろう。」

「うわ~!」


そうでした。

3日前、私は締切を守れず、夜の10時まで対応。

その時にやるはずだった袋詰めが、今日の今日まで、終わらずに残っているのだ。

「す、すみません。明日、早出して頑張りますから、今日だけはご勘弁を!」

私は外川課長を、神様のように拝んだ。

「その明日の朝、みんなで配る事になってるんだが?」

「と、言う事は……」

「今日中に仕上げないといけないな、瀬田。」

ニコニコ笑う外川課長が、鬼に見える。

「そんなあ。」

「そんなあじゃない。自分の責任は、自分で取れ。」

はい、これで残業決定。

力が抜けて、デスクに倒れ込んだ。

「春乃も手伝ってよ。」

「悪い。今日は、パス。」

そう言って春乃は、バッグを持って行ってしまった。


「ちょっと、春乃!こうなったら、四宮君!」

「俺、残業しない主義。」

そう言って四宮君も、行ってしまった。

「もう~なんなの、二人共!」

頭を掻きむしりながら、私はイライラ。


「よし!瀬田、やるぞ。」

「ふぁ~い。」

気のない返事をして、私は外川課長の元へフラフラと、近づいて行った。

「いいか、瀬田。これとこのパンフ入れて、応募用紙1枚入れる。これで1セットだ。」

「はい。」

「200セット終わるまで、帰れないからな。」

「嘘!一人100セットですか!?」

マジかっ!と思いながら、椅子を持って来て座った。
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