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第五章 社交界のざわめき ①
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そして今夜は、舞踏会。
カイル殿下――いいえ、私の婚約者である「カイル」と共に出席する、初めての舞踏会。
この舞台で、私が“第2皇子の婚約者”であることが、貴族社会に正式に知れ渡る。
誇らしさと、ほんの少しの緊張を胸に、私は馬車の中で深く息を吸った。
「さあ、着いたよ。」
カイルが先に馬車から降りると、白手袋の手を差し伸べてくれる。
「ありがとうございます。カイル殿下。」
そう言って手を取ると、彼はクスッと微笑んだ。
「カイル、だろ?」
優しい声が耳に触れ、頬が熱くなる。
――カイル。
婚約者だけが許される、その呼び方。
私は彼の腕をそっと取り、寄り添う。
煌びやかな宮廷の灯りが、私達の頭上に降り注ぐ。
この夜、私はようやく“誰かの隣に立つべき存在”になれた気がした。
会場に足を踏み入れると、シャンデリアの光がきらめき、貴族たちの優雅な笑い声が交錯していた。
それぞれが、着飾った相手を連れて登場し、華やかな夜が始まろうとしていた。
その時だった。
「カイル殿下!」
甲高い声とともに、数人の令嬢たちが周囲を囲んだ。
色とりどりのドレスに身を包んだ彼女たちは、まるで獲物を狙う蝶のように、カイルに笑みを向けてくる。
「婚約なさったんですって?本当に残念……寂しいですわ」
「どんな方なのか、教えていただけません?」
そんな声に、カイルはふっと微笑んだ。そして、何のためらいもなく、私の肩をそっと抱き寄せる。
「こちらの、セレナ嬢だよ」
一瞬、周囲の空気が凍った。
「ええええっ⁉」
「セレナ……だったの⁉」
「見間違えたわ。なんだかすっかり、綺麗になって……」
一人がそう言うと、他の令嬢たちも、驚きと戸惑いの入り混じった視線を私に注いでくる。
私は少しだけ、唇を引き結んだ。
昔は、地味で目立たなかった私。
でも今は、第2皇子の婚約者――カイルの隣に立つ者として、皆の前にいる。
彼の腕の中で、私は小さく息を吸った。
そう。これは復讐ではなく、私自身が手にした誇りでもある。
「皆さん、どうぞよろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、カイルがにっこりと笑う。
「俺の自慢の婚約者だから、仲良くしてやってね」
その一言に、令嬢たちは完全に言葉を失っていた。
ふと視線を奥へと向けると、じっと私を睨みつける視線とぶつかった。
――エヴァ・シュタインバーグ。
あの時、ユリウスの腕に収まっていた、華やかなドレス姿の伯爵令嬢。
今夜も彼女は艶やかな真紅のドレスに身を包み、周囲の視線を独り占めしている。
だが、その瞳だけが――私だけを捉えていた。
(……あの人、ユリウスと婚約したはず。なのに、どうして――)
私は静かに背を向けた。こういう時は関わらないに限る。
カイル殿下――いいえ、私の婚約者である「カイル」と共に出席する、初めての舞踏会。
この舞台で、私が“第2皇子の婚約者”であることが、貴族社会に正式に知れ渡る。
誇らしさと、ほんの少しの緊張を胸に、私は馬車の中で深く息を吸った。
「さあ、着いたよ。」
カイルが先に馬車から降りると、白手袋の手を差し伸べてくれる。
「ありがとうございます。カイル殿下。」
そう言って手を取ると、彼はクスッと微笑んだ。
「カイル、だろ?」
優しい声が耳に触れ、頬が熱くなる。
――カイル。
婚約者だけが許される、その呼び方。
私は彼の腕をそっと取り、寄り添う。
煌びやかな宮廷の灯りが、私達の頭上に降り注ぐ。
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会場に足を踏み入れると、シャンデリアの光がきらめき、貴族たちの優雅な笑い声が交錯していた。
それぞれが、着飾った相手を連れて登場し、華やかな夜が始まろうとしていた。
その時だった。
「カイル殿下!」
甲高い声とともに、数人の令嬢たちが周囲を囲んだ。
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「婚約なさったんですって?本当に残念……寂しいですわ」
「どんな方なのか、教えていただけません?」
そんな声に、カイルはふっと微笑んだ。そして、何のためらいもなく、私の肩をそっと抱き寄せる。
「こちらの、セレナ嬢だよ」
一瞬、周囲の空気が凍った。
「ええええっ⁉」
「セレナ……だったの⁉」
「見間違えたわ。なんだかすっかり、綺麗になって……」
一人がそう言うと、他の令嬢たちも、驚きと戸惑いの入り混じった視線を私に注いでくる。
私は少しだけ、唇を引き結んだ。
昔は、地味で目立たなかった私。
でも今は、第2皇子の婚約者――カイルの隣に立つ者として、皆の前にいる。
彼の腕の中で、私は小さく息を吸った。
そう。これは復讐ではなく、私自身が手にした誇りでもある。
「皆さん、どうぞよろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、カイルがにっこりと笑う。
「俺の自慢の婚約者だから、仲良くしてやってね」
その一言に、令嬢たちは完全に言葉を失っていた。
ふと視線を奥へと向けると、じっと私を睨みつける視線とぶつかった。
――エヴァ・シュタインバーグ。
あの時、ユリウスの腕に収まっていた、華やかなドレス姿の伯爵令嬢。
今夜も彼女は艶やかな真紅のドレスに身を包み、周囲の視線を独り占めしている。
だが、その瞳だけが――私だけを捉えていた。
(……あの人、ユリウスと婚約したはず。なのに、どうして――)
私は静かに背を向けた。こういう時は関わらないに限る。
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