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第1章 寵愛なき妃 ②
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「……」
私の目が、ふと一行に留まる。
ー ところで、皇帝のご寵愛はいかほどでしょうか。ー
その一文に、指先がぴたりと止まった。
弟たちは、知らない。
私が、皇帝に一度も抱かれたことがないことを。
“妃”という名ばかりで、後宮の片隅に追いやられていることを。
ー 新しい筆が欲しいのですが、ご都合いただけないでしょうか。ー
「……はぁ」
私はそっと手紙を閉じ、胸の奥で深くため息をついた。
金子は、もうない。
香も、灯も、仕送りの余裕すら。
それでも弟たちは、私を誇らしく思っている。
期待に応えられない自分が、何よりも悔しかった。
「申し訳ない。」
そう呟いた言葉は、自分に向けたものだった。
弟たちの願いも、家族の期待も、私は何ひとつ応えられていない。
しばらくして、月に一度の妃たちの集いが開かれた。
広間には、淡い香が漂っている。
紅と金で飾られた屏風の前、上座には皇后様と、威厳に満ちた四賢妃の皆様が座る。
その傍らには、寵愛を受けた妃たち。
美しく結われた髪、艶やかな衣、彼女たちは自信に満ちた目で並んでいた。
そして私たち——寵愛を受けていない妃は、部屋の下手、床の上に静かに膝をつく。
座布団すらなく、ただ冷たい板の上に。
ひとつ下の侍女よりは“上”、けれど妃の名を持っていても、**“誰にも選ばれていない女”**であることに変わりはない。
「今月も、健やかに過ごしましょう」
皇后様の静かな声が、広間に響いた。
「ははっ」
返事が重なる。私も遅れぬように頭を下げる。
集いは滞りなく終わり、妃たちが立ち上がり始めた頃だった。
「――翠蘭。」
呼び止めたのは、四賢妃の一人、臨光(りんこう)様だった。
艶やかな衣の裾が揺れる。
その瞳に映る私の姿は、きっと哀れでちっぽけなものだっただろう。
「翠蘭様。」
その声に振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。
臨光(りんこう)様――
二年前の妃募集で、ともに選ばれた“仲間”だった。
「臨光様……」
彼女は微笑んだ。
けれどその身には、かつてとは違う徳妃の衣がよく映えていた。
「どう? 皇帝のご寵愛は」
「……ううん。全くよ」
私は、苦笑いを浮かべて答える。
強がるように、でも本音が滲むように。
臨光様はふっと目を伏せ、囁くように言った。
「私も、実は三度だけなのよ。お呼びがあったの」
「えっ……」
驚いた。
妃として、それだけの回数で男子を授かったというのか。
「運がよかったのね、たぶん。」
臨光様はさらりと言った。
私の目が、ふと一行に留まる。
ー ところで、皇帝のご寵愛はいかほどでしょうか。ー
その一文に、指先がぴたりと止まった。
弟たちは、知らない。
私が、皇帝に一度も抱かれたことがないことを。
“妃”という名ばかりで、後宮の片隅に追いやられていることを。
ー 新しい筆が欲しいのですが、ご都合いただけないでしょうか。ー
「……はぁ」
私はそっと手紙を閉じ、胸の奥で深くため息をついた。
金子は、もうない。
香も、灯も、仕送りの余裕すら。
それでも弟たちは、私を誇らしく思っている。
期待に応えられない自分が、何よりも悔しかった。
「申し訳ない。」
そう呟いた言葉は、自分に向けたものだった。
弟たちの願いも、家族の期待も、私は何ひとつ応えられていない。
しばらくして、月に一度の妃たちの集いが開かれた。
広間には、淡い香が漂っている。
紅と金で飾られた屏風の前、上座には皇后様と、威厳に満ちた四賢妃の皆様が座る。
その傍らには、寵愛を受けた妃たち。
美しく結われた髪、艶やかな衣、彼女たちは自信に満ちた目で並んでいた。
そして私たち——寵愛を受けていない妃は、部屋の下手、床の上に静かに膝をつく。
座布団すらなく、ただ冷たい板の上に。
ひとつ下の侍女よりは“上”、けれど妃の名を持っていても、**“誰にも選ばれていない女”**であることに変わりはない。
「今月も、健やかに過ごしましょう」
皇后様の静かな声が、広間に響いた。
「ははっ」
返事が重なる。私も遅れぬように頭を下げる。
集いは滞りなく終わり、妃たちが立ち上がり始めた頃だった。
「――翠蘭。」
呼び止めたのは、四賢妃の一人、臨光(りんこう)様だった。
艶やかな衣の裾が揺れる。
その瞳に映る私の姿は、きっと哀れでちっぽけなものだっただろう。
「翠蘭様。」
その声に振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。
臨光(りんこう)様――
二年前の妃募集で、ともに選ばれた“仲間”だった。
「臨光様……」
彼女は微笑んだ。
けれどその身には、かつてとは違う徳妃の衣がよく映えていた。
「どう? 皇帝のご寵愛は」
「……ううん。全くよ」
私は、苦笑いを浮かべて答える。
強がるように、でも本音が滲むように。
臨光様はふっと目を伏せ、囁くように言った。
「私も、実は三度だけなのよ。お呼びがあったの」
「えっ……」
驚いた。
妃として、それだけの回数で男子を授かったというのか。
「運がよかったのね、たぶん。」
臨光様はさらりと言った。
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