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Ⅲ
②
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「どけ!おまえでは、相手にならぬ!」
先生がハーキムを押して、俺の前に立った。
俺は相変わらず、息を切らして、ハァハァ言っている。
「行きますぞ!ジャラール王子!」
その言葉の後、直ぐに先生の重い剣が、のし掛かる。
思わず2・3歩後ろへ下がって、両手でそれを受け止めた。
「息をついている暇など、ありませんぞ!」
次の瞬間、俺の太ももに、先生の剣がかすった。
服は破れ、ツーッと血の、赤い跡が残った。
「先生!もう止めて下さい。」
ハーキムが、俺の前に立った。
「どうしたと言うのですか?今日の先生は、厳しすぎるのではないでしょうか。」
ハーキムの言葉に、先生は剣を降ろした。
「今日だけではない。これからは、もっともっと、厳しくなる。」
「えっ?」
「ハーキム。そこを退け。」
「嫌です。ジャラール様は、怪我をしておられます。」
「そんな怪我、かすり傷だ。」
確かにそんなに痛くはないけれど、血が滲んでいると言うのに。
「いいんだ、ハーキム。脇に控えていろ。」
「ジャラール様……」
俺が剣を構えると、ハーキムは、ようやく脇に逸れた。
「行きます!」
「オウ!」
そしてまた、剣が重なり合う度、キィーンと言う音が響く。
先生の剣は、一回一回が重くて、踏み込まれる度に、俺は後ろへ下がった。
「そんな戦い方で、敵に勝てるとお思いですか!」
「くっ……」
「それで一国の王子ですか!!」
先生に剣を振りきられ、俺は後ろへ飛ばされてしまった。
「ジャラール様!前!」
ハーキムの声で、顔を上げると、先生が俺の目の前で、剣を振り上げていた。
「うわっ!」
突然の事で、両手で顔を押さえた。
すると先生の剣は、俺との僅かな距離のところで、ピタッと止まった。
「情けない。これが、この国の王子か。」
そう言って先生は、行ってしまった。
悔しかった。
負けた事もそうだったが……
「好きで……王子になったんじゃない。」
俺は勝手に、王子にさせられたんだ。
「ジャラール様!」
「放っておけ、ハーキム。」
「ですが……」
「このような弱い者、おまえが駆け寄る程の、王子の器ではないわ。」
駆け寄ろうとするハーキムにも、こんな調子だ。
先生は剣を納めると、宮殿へと続く階段に、腰を降ろした。
「ジャラール王子。あなたは、ご自分の身分を、どう考えられるのか。」
「自分の身分?どうせ、王子だと言うのだろう。」
「では、王子とは?王子とは、何ですか?」
「王子とは……」
王の息子だと答えそうになって、止めた。
俺は王の子では、ない。
「なぜ、答えぬのですか?」
「……分からぬからだ。」
「分からぬ!?では、今から王子と名乗るのを、お止めになっては、如何ですか?」
これを聞いたハーキムは、先生の前に駆け寄った。
先生がハーキムを押して、俺の前に立った。
俺は相変わらず、息を切らして、ハァハァ言っている。
「行きますぞ!ジャラール王子!」
その言葉の後、直ぐに先生の重い剣が、のし掛かる。
思わず2・3歩後ろへ下がって、両手でそれを受け止めた。
「息をついている暇など、ありませんぞ!」
次の瞬間、俺の太ももに、先生の剣がかすった。
服は破れ、ツーッと血の、赤い跡が残った。
「先生!もう止めて下さい。」
ハーキムが、俺の前に立った。
「どうしたと言うのですか?今日の先生は、厳しすぎるのではないでしょうか。」
ハーキムの言葉に、先生は剣を降ろした。
「今日だけではない。これからは、もっともっと、厳しくなる。」
「えっ?」
「ハーキム。そこを退け。」
「嫌です。ジャラール様は、怪我をしておられます。」
「そんな怪我、かすり傷だ。」
確かにそんなに痛くはないけれど、血が滲んでいると言うのに。
「いいんだ、ハーキム。脇に控えていろ。」
「ジャラール様……」
俺が剣を構えると、ハーキムは、ようやく脇に逸れた。
「行きます!」
「オウ!」
そしてまた、剣が重なり合う度、キィーンと言う音が響く。
先生の剣は、一回一回が重くて、踏み込まれる度に、俺は後ろへ下がった。
「そんな戦い方で、敵に勝てるとお思いですか!」
「くっ……」
「それで一国の王子ですか!!」
先生に剣を振りきられ、俺は後ろへ飛ばされてしまった。
「ジャラール様!前!」
ハーキムの声で、顔を上げると、先生が俺の目の前で、剣を振り上げていた。
「うわっ!」
突然の事で、両手で顔を押さえた。
すると先生の剣は、俺との僅かな距離のところで、ピタッと止まった。
「情けない。これが、この国の王子か。」
そう言って先生は、行ってしまった。
悔しかった。
負けた事もそうだったが……
「好きで……王子になったんじゃない。」
俺は勝手に、王子にさせられたんだ。
「ジャラール様!」
「放っておけ、ハーキム。」
「ですが……」
「このような弱い者、おまえが駆け寄る程の、王子の器ではないわ。」
駆け寄ろうとするハーキムにも、こんな調子だ。
先生は剣を納めると、宮殿へと続く階段に、腰を降ろした。
「ジャラール王子。あなたは、ご自分の身分を、どう考えられるのか。」
「自分の身分?どうせ、王子だと言うのだろう。」
「では、王子とは?王子とは、何ですか?」
「王子とは……」
王の息子だと答えそうになって、止めた。
俺は王の子では、ない。
「なぜ、答えぬのですか?」
「……分からぬからだ。」
「分からぬ!?では、今から王子と名乗るのを、お止めになっては、如何ですか?」
これを聞いたハーキムは、先生の前に駆け寄った。
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