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第2章 恋に落ちるのは、ほんの数日だった
⑤
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「……はい。」
そして私は、心の中でそっと願った。
この“最後の日”が、どうか終わらなければいい――と。
差し出されたサンドイッチをひと口食べて、私はそっと玲央さんを見た。
彼も、同じたまごサンドを頬張っている。
「ん?」と気づいたように目が合う。
「今日は、家で休まなくていいんですか?」
そう聞くと、玲央さんは口元についた卵の欠片を、指で拭ってからペロリと舐めた。
その仕草が、なんだか無防備で可愛くて、私は思わず小さく笑った。
「家にいても一人だからね。ここには、ひよりさんがいるし。」
何気ない言葉なのに、胸の奥がふわりと温かくなる。
この人は、どうしてこんなにも自然に、心に触れることを言うんだろう。
「明日から、また普通の生活に戻るんですね。」
そう呟いた私の声に、少しだけ寂しさが混じってしまう。
すると玲央さんは、ゆっくりと手を止めて私を見つめた。
「普通か。……俺は、この一週間、楽しかったよ。」
玲央さんが穏やかに笑いながらそう言った瞬間、胸の奥にじわりと何かが広がっていくのを感じた。
「私もです。」
言葉にして初めて、自分がどれほどこの時間を大切にしていたのかを実感した。
気づけば、私はそっと手を差し出していた。
玲央さんは、何も言わずにその手を握ってくれる。
大きな手のぬくもりが、まるで心の奥まで届くようだった。
「君に出会えてよかった。」
その一言に、涙があふれた。
うれしくて、さみしくて、あたたかくて、全部が混ざっていた。
「私も、嬉しかったです。」
震える声で、なんとか伝える。
それが、今の私にできる精一杯だった。
「あなたを助けて……よかった。」
もし、あの日助けていなければ。
もし、こうして出会っていなければ。
この人の優しさにも、この気持ちにも、触れることはなかった。
玲央さんは、私の手をぎゅっと強く握り返してくれた。
それだけで、何もかもが報われた気がした。
「明日は、お昼ぐらいに来るから。」
「はい。」
ベッドの上から見上げると、玲央さんが立ち上がる。その動作ひとつで、心にぽつりと寂しさが落ちてきた。
「じゃあ。」
玲央さんは軽く手を振った。
私も、少し照れながら、それに手を振り返す。
カチャリ、とドアが閉まる音。
その瞬間、病室から彼の気配がすうっと消えた。
静けさが戻る。
窓の外には、もう夕暮れがにじんでいる。
カーテンが揺れて、部屋の中に影が伸びてきた。
これで、終わったんだ――玲央さんのお見舞い生活。
机の上に、最後の花束がある。
白と薄紅のバラが混ざったそのブーケは、今までの中でいちばん、華やかだった。
まるで、「さよなら」の代わりに微笑んでいるみたいに。
そして私は、心の中でそっと願った。
この“最後の日”が、どうか終わらなければいい――と。
差し出されたサンドイッチをひと口食べて、私はそっと玲央さんを見た。
彼も、同じたまごサンドを頬張っている。
「ん?」と気づいたように目が合う。
「今日は、家で休まなくていいんですか?」
そう聞くと、玲央さんは口元についた卵の欠片を、指で拭ってからペロリと舐めた。
その仕草が、なんだか無防備で可愛くて、私は思わず小さく笑った。
「家にいても一人だからね。ここには、ひよりさんがいるし。」
何気ない言葉なのに、胸の奥がふわりと温かくなる。
この人は、どうしてこんなにも自然に、心に触れることを言うんだろう。
「明日から、また普通の生活に戻るんですね。」
そう呟いた私の声に、少しだけ寂しさが混じってしまう。
すると玲央さんは、ゆっくりと手を止めて私を見つめた。
「普通か。……俺は、この一週間、楽しかったよ。」
玲央さんが穏やかに笑いながらそう言った瞬間、胸の奥にじわりと何かが広がっていくのを感じた。
「私もです。」
言葉にして初めて、自分がどれほどこの時間を大切にしていたのかを実感した。
気づけば、私はそっと手を差し出していた。
玲央さんは、何も言わずにその手を握ってくれる。
大きな手のぬくもりが、まるで心の奥まで届くようだった。
「君に出会えてよかった。」
その一言に、涙があふれた。
うれしくて、さみしくて、あたたかくて、全部が混ざっていた。
「私も、嬉しかったです。」
震える声で、なんとか伝える。
それが、今の私にできる精一杯だった。
「あなたを助けて……よかった。」
もし、あの日助けていなければ。
もし、こうして出会っていなければ。
この人の優しさにも、この気持ちにも、触れることはなかった。
玲央さんは、私の手をぎゅっと強く握り返してくれた。
それだけで、何もかもが報われた気がした。
「明日は、お昼ぐらいに来るから。」
「はい。」
ベッドの上から見上げると、玲央さんが立ち上がる。その動作ひとつで、心にぽつりと寂しさが落ちてきた。
「じゃあ。」
玲央さんは軽く手を振った。
私も、少し照れながら、それに手を振り返す。
カチャリ、とドアが閉まる音。
その瞬間、病室から彼の気配がすうっと消えた。
静けさが戻る。
窓の外には、もう夕暮れがにじんでいる。
カーテンが揺れて、部屋の中に影が伸びてきた。
これで、終わったんだ――玲央さんのお見舞い生活。
机の上に、最後の花束がある。
白と薄紅のバラが混ざったそのブーケは、今までの中でいちばん、華やかだった。
まるで、「さよなら」の代わりに微笑んでいるみたいに。
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