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第5部 仮面舞踏会 ②
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「誰が誰だかわからない。それが、仮面舞踏会の面白さですから。」
ユリオの言葉に、私はそっとうなずいた。
「うん、頑張ってみる。」
「その意気です。」
それから私は、アニーに手伝ってもらってドレスに着替えた。
仮面を手渡されると、不思議な気持ちになる。
この仮面が、私のすべてを隠してくれる。
「まるで別の人みたいですね、エミリア様。」
アニーが微笑む。
「ありがとう、アニー。……行ってくるわ」
舞踏会の会場へと向かう。煌びやかな光、きらめくシャンデリア。
仮面をつけた男女が、優雅にステップを踏んでいた。
誰が誰かなんて、全然わからない。
貴族も騎士も、王族も、私のような聖女さえも、ただの“誰か”になる夜。
私はそっと壁際に立った。
誘われるまで待つ――そういうものなのだろうか?
(……でも、こんなところで踊れるの?)
不安と期待が入り混じる胸の内。
いつもは“聖女様”と呼ばれ、気安く話しかけてくる人などいない。
でも今夜は、ただの一人の女性として――。
その時。
「失礼、踊っていただけますか?」
低く、優しい声がした。
振り返ると、仮面の男性が手を差し伸べていた。
誰なのか、まったく分からない。
でも、どこかで聞いたような声、見覚えのある立ち姿。
まさか……いや、そんなことはない。
私はそっと手を伸ばした。
「……はい、よろしくお願いします。」
手を取られると、そのぬくもりに、心がふわりとほどけた。
(私、今だけは――聖女じゃなくて、ただの女の子になれる気がする。)
音楽が始まる。
私は、仮面の騎士と、静かにステップを踏み出した。
でもやっぱり即席で覚えたステップは、覚えきれていない。
しまいには、相手の足を踏んでしまった。
「すみませんっ!」
私は謝った。
すると仮面の紳士は、私の耳元で囁いた。
「そんなあなたも可愛いですよ。」
ふと見ると、見覚えのある髪。
「もしかして……」
「バレました?ユリオです。」
仮面をつけたまま微笑むユリオの姿に、私は目を見張った。
黒髪が月光に照らされ、まるで王子様のよう。
「もう……驚かせないでください。」
「すみません。でも、こうでもしないと、あなたを誘えなかった気がして。」
ユリオの言葉に、胸が少しだけきゅっと締めつけられる。
彼は、私を“聖女”としてではなく、一人の女性として見てくれている。
「あなたは、いつも優しいですね。」
「いえ。僕は欲張りなんです。……エミリア様の隣に、誰も立たせたくないと、そう思ってしまう。」
「えっ……?」
突然の言葉に、思わず顔が熱くなる。
でもその時、曲が変わった。
「……最後にもう一曲、どうですか?」
ユリオの言葉に、私はそっとうなずいた。
「うん、頑張ってみる。」
「その意気です。」
それから私は、アニーに手伝ってもらってドレスに着替えた。
仮面を手渡されると、不思議な気持ちになる。
この仮面が、私のすべてを隠してくれる。
「まるで別の人みたいですね、エミリア様。」
アニーが微笑む。
「ありがとう、アニー。……行ってくるわ」
舞踏会の会場へと向かう。煌びやかな光、きらめくシャンデリア。
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誰が誰かなんて、全然わからない。
貴族も騎士も、王族も、私のような聖女さえも、ただの“誰か”になる夜。
私はそっと壁際に立った。
誘われるまで待つ――そういうものなのだろうか?
(……でも、こんなところで踊れるの?)
不安と期待が入り混じる胸の内。
いつもは“聖女様”と呼ばれ、気安く話しかけてくる人などいない。
でも今夜は、ただの一人の女性として――。
その時。
「失礼、踊っていただけますか?」
低く、優しい声がした。
振り返ると、仮面の男性が手を差し伸べていた。
誰なのか、まったく分からない。
でも、どこかで聞いたような声、見覚えのある立ち姿。
まさか……いや、そんなことはない。
私はそっと手を伸ばした。
「……はい、よろしくお願いします。」
手を取られると、そのぬくもりに、心がふわりとほどけた。
(私、今だけは――聖女じゃなくて、ただの女の子になれる気がする。)
音楽が始まる。
私は、仮面の騎士と、静かにステップを踏み出した。
でもやっぱり即席で覚えたステップは、覚えきれていない。
しまいには、相手の足を踏んでしまった。
「すみませんっ!」
私は謝った。
すると仮面の紳士は、私の耳元で囁いた。
「そんなあなたも可愛いですよ。」
ふと見ると、見覚えのある髪。
「もしかして……」
「バレました?ユリオです。」
仮面をつけたまま微笑むユリオの姿に、私は目を見張った。
黒髪が月光に照らされ、まるで王子様のよう。
「もう……驚かせないでください。」
「すみません。でも、こうでもしないと、あなたを誘えなかった気がして。」
ユリオの言葉に、胸が少しだけきゅっと締めつけられる。
彼は、私を“聖女”としてではなく、一人の女性として見てくれている。
「あなたは、いつも優しいですね。」
「いえ。僕は欲張りなんです。……エミリア様の隣に、誰も立たせたくないと、そう思ってしまう。」
「えっ……?」
突然の言葉に、思わず顔が熱くなる。
でもその時、曲が変わった。
「……最後にもう一曲、どうですか?」
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