56 / 56
第10部 結婚式 ③
しおりを挟む
レオナルトの声は、低く、熱を帯びていた。
私は頷くだけで精一杯だった。
その言葉だけで、心の奥に火が灯る。
「……んっ、やさしくして……」
囁いたつもりだったのに、声は震えてしまった。
レオは、そっと私の髪にキスを落とす。
「エミリア……」
彼の声は、涙を含んだように震えていた。
愛おしさと、欲望と、どうしようもない執着が滲む声。
「君が……俺を受け入れてくれるのが、たまらなく嬉しい……」
唇が頬に、首筋に、鎖骨に――落ちてゆく。
一つひとつ、確かめるように。
「もっと、感じて……エミリア……俺の中だけで、感じてくれ……」
指先が私を撫で、確かめるように触れて、そこから伝わる熱が私の奥を溶かしていく。
「やっ……ああ……レオ……!」
「君のすべてを俺にくれ。全部、俺だけのものにしたい……!」
ぎゅっと手を握られ、奥深くに達した時、私はもう、言葉にならない感情でいっぱいだった。
「あなた……あなたしかいらないの……!」
彼の瞳が潤む。
「エミリア……愛してる。命よりも。」
その言葉と共に、レオナルトは私を抱きしめたまま、何度も、何度も、名前を呼びながら、私の中に愛を注ぎ続けた。
ただ一人の妻に、すべてを捧げるように。
朝の光が、レースのカーテンを透かして差し込む。
静かに目を開けると、温かな重みが胸元にあった。
「レオ……」
小さく呼ぶと、私の腕を抱いていた彼が目を開け、ゆっくりと顔を寄せた。
「……おはよう、エミリア。」
低く、優しい声。私だけを包む朝の魔法。
「おはよう、レオナルト。」
そう言うと、彼は私の額にキスを落とし、まるで名残惜しそうにベッドを出た。
少しして、侍女のアニーがやってきた。
カップに紅茶を注ぎながら、嬉しそうに言う。
「これからは皇太子妃としての生活が始まるんですね。」
「そうね。」
頷いた私に、アニーはふふふと楽しげに笑った。
「聖女が王妃になるお話なんて……昔からの伝説だと思ってました。」
私は微笑んだ。
「伝説じゃないわ。」
手をそっと、お腹の上に重ねる。
「これから始まる、私たちの愛の物語よ。」
その瞬間、扉が開いた。
金色の髪を揺らし、白い正装に身を包んだレオナルトが微笑んで立っていた。
ー End -
私は頷くだけで精一杯だった。
その言葉だけで、心の奥に火が灯る。
「……んっ、やさしくして……」
囁いたつもりだったのに、声は震えてしまった。
レオは、そっと私の髪にキスを落とす。
「エミリア……」
彼の声は、涙を含んだように震えていた。
愛おしさと、欲望と、どうしようもない執着が滲む声。
「君が……俺を受け入れてくれるのが、たまらなく嬉しい……」
唇が頬に、首筋に、鎖骨に――落ちてゆく。
一つひとつ、確かめるように。
「もっと、感じて……エミリア……俺の中だけで、感じてくれ……」
指先が私を撫で、確かめるように触れて、そこから伝わる熱が私の奥を溶かしていく。
「やっ……ああ……レオ……!」
「君のすべてを俺にくれ。全部、俺だけのものにしたい……!」
ぎゅっと手を握られ、奥深くに達した時、私はもう、言葉にならない感情でいっぱいだった。
「あなた……あなたしかいらないの……!」
彼の瞳が潤む。
「エミリア……愛してる。命よりも。」
その言葉と共に、レオナルトは私を抱きしめたまま、何度も、何度も、名前を呼びながら、私の中に愛を注ぎ続けた。
ただ一人の妻に、すべてを捧げるように。
朝の光が、レースのカーテンを透かして差し込む。
静かに目を開けると、温かな重みが胸元にあった。
「レオ……」
小さく呼ぶと、私の腕を抱いていた彼が目を開け、ゆっくりと顔を寄せた。
「……おはよう、エミリア。」
低く、優しい声。私だけを包む朝の魔法。
「おはよう、レオナルト。」
そう言うと、彼は私の額にキスを落とし、まるで名残惜しそうにベッドを出た。
少しして、侍女のアニーがやってきた。
カップに紅茶を注ぎながら、嬉しそうに言う。
「これからは皇太子妃としての生活が始まるんですね。」
「そうね。」
頷いた私に、アニーはふふふと楽しげに笑った。
「聖女が王妃になるお話なんて……昔からの伝説だと思ってました。」
私は微笑んだ。
「伝説じゃないわ。」
手をそっと、お腹の上に重ねる。
「これから始まる、私たちの愛の物語よ。」
その瞬間、扉が開いた。
金色の髪を揺らし、白い正装に身を包んだレオナルトが微笑んで立っていた。
ー End -
2
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる