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第13話 国母の条件
①
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爽やかな初夏の風が吹く頃。
王宮は、にわかに騒がしくなった。
「どうしたのかしら。」
黄杏が外を覗くと、それは向かい側にある、黒音の屋敷に人が出入りする音だった。
忠仁も、王宮付きの医師もいる。
「もしかして黒音様。ご病気なのでは。」
女人が、黒音の体調を気にする。
「もしそうだとしたら、大変ね。あなた、ちょっと行って確かめてみて。」
「はい。」
女人の一人に、様子を見に行かせた。
「大した事ではなければ、いいのだけれど。」
黄杏の心配を他所に、女人はあっさり引き返したきた。
「早かったわね。」
「それが……」
女人は、酷く混乱している。
「……黒音はもしかして、重い病気なの?」
「いいえ、そうでもなくて……」
はっきりとしない女人に、黄杏は勘が働いた。
「もしや……黒音に、お子が?」
女人は、焦りながら顔を上げた。
「まだ、決まった事ではありません。」
「でも、重い病気ではないとすれば、他に忠仁殿や医師が、訪れる理由がないでしょう。」
「すみません……」
女人の言葉に、胸がざわついた黄杏。
ほんの少し前、紅梅と一緒に、『王の子が欲しい。』と言っていたと言うのに。
先にお子を授かったのは、その紅梅でもなく、自分でもない。
どちらかと言えば、王の足が遠のいていた、黒音だった。
そして、夕方頃。
忠仁を通して信寧王に、黒音懐妊の知らせがもたらされた。
「本当か!忠仁!」
「はい。医師の見立てでは、2か月目に入った辺りだと。」
王である信志は、喜びのあまり跳ねるようにして、立ち上がった。
「おめでとうございます。」
側にいた白蓮が、頭を下げた。
「白蓮。私にも、また運が巡ってきたようだ。」
「ええ。私も、嬉しく思います。」
信志と白蓮は、互いに喜び合った。
「早速、黒音の元へ行かねばな。」
「そうですね。忠仁、黒音の具合はどうなの?つわりなどひどくない?」
「今のとことは、順調のようでございます。」
忠仁の答えに、信志は子供のように、黒音の元へ向かった。
黒音の屋敷は、それぞれのお妃の中でも、一番端にある。
黒音の妊娠の第1報を聞きつけた、他の妃達は、先に屋敷の外へ出て、王が来るのを待っていた。
最初にお祝いの言葉を述べたのは、第2夫人の青蘭。
「信寧王様。おめでとうございます。」
「ああ、青蘭。有難う。」
次に待っていたのは、第3夫人の紅梅。
「王、おめでとうございます。」
「紅梅……」
王は一旦歩みを止めると、紅梅を軽く抱き寄せた。
「許せ、紅梅。本来なら、そなたが先にできるはずだった。」
「いいえ。お子が授かるのに、先も後もございません。お気になさいますな。」
実は紅梅が、黄杏から貰った薬草を飲んでいると知ってから、王が毎日のように通っていたのは、紅梅の元だった。
一番王のお子が欲しいと願っていた紅梅。
それは信志にも痛い程に分かっていた。
先に黄杏が妊娠した時も、ボヤキはしたが祝いの品も贈ってくれた。
紅梅は勝気だが、人を陥れたりはしない。
そういう人間なのだ。
だからこそ余計に、子を作ってやらねばと、張り切っていた矢先の黒音の懐妊の知らせだったのだ。
「さあ、急いで黒音さんに、お顔を見せてあげてください。」
「ああ。」
名残惜しそうに、紅梅と別れると、次は第4夫人・黄杏の出番だ。
「信寧王様。黒音さんのご懐妊、おめでとうございます。」
「黄杏。」
先にできた黄杏の子が流れたのは、密かに黒音の手によるものと言う噂は、信志の耳にも入っていた。
今回の黒音の妊娠を、どんな気持ちで、聞いたのか。
「黄杏…あの……」
「さあ早く。黒音さんに、よくやったとお声を掛けてあげて下さい。」
心配など無用と言うくらい、黄杏は笑顔を見せていた。
「黄杏、そなた……」
「私の事は、お気になさいますな。王の初めてのお子でございます。」
信志は、黄杏の手を取った。
「私の初めての子は、そなたとの間にできた、この世に生まれる事はなかった赤子だ。」
「王……」
「男の子だったそうだな。産声をあげていれば、間違いなく私の跡継ぎだった。」
優しく微笑みかける信志に、黄杏の心は解きほぐされていく。
「では、また後で。」
黄杏の首に、唇を落とした信志は、次に黒音の屋敷を訪れた。
「ああ、信寧王様。やっといらっしゃってくれた。」
黒音に仕える女人が、女主人の懐妊に、心浮き立っていた。
「黒音。」
信志が声を掛けると、当の本人は寝台に、横になっていた。
「どうした?具合でも悪いのか?」
信志の声に、ようやく起き上がる黒音。
「し、信寧王様!」
酷く驚いた黒音は、袖で顔を隠した。
「今更、隠す事もあるまい。」
信志は、黒音の隣に座った。
「懐妊だそうだな。よくやった。」
「有難うございます。」
子ができたと言うのに、黒音はやけによそよそしい。
「他人事のようだな。……何か、気に障る事でもあるのか?」
「いえ。ただ……よく考えても、この前1度来て頂いた時しか、思い当たりませんでして……なんだか、不思議な気分なのです。」
それを聞いた信志は、クスクス笑いだした。
「私もそうだ。子を授かる時と言うのは、不思議な縁があるものだな。」
信志と黒音は、お互いに子が授かった縁を、噛みしめていた。
そして黄杏のところには、青蘭が訪れていた。
「不思議なものね。次にお子ができるのは、てっきり紅梅さんだと思っていたわ。」
青蘭は、黄杏を見るとハッとして、口を覆った。
「いいえ。私もそう思っていました。このところ、王はずっと、紅梅さんのところを、お訪ねになってましたからね。」
黄杏は、至って冷静だ。
そんな黄杏を、青蘭はじっと見つめる。
「……黒音さんに、お祝いの品を差し上げるの?」
黄杏は、お茶を持つ手を止めた。
「そのつもりよ。」
自分のお腹の子が、途中まで順調だったのに、急に流れてしまったのは、青蘭達のお陰で、黒音の差し金だと知った。
だが直接、黒音に何かをされた訳ではない。
黒音が、黒幕だと言う証拠もない。
黙って目を瞑って、知らない振りをするしかなかった。
「お目出度い方……」
「それ、紅梅さんにも言われました。」
嫌味で言ったのに、それすらも受け流す。
青蘭は、はぁっとため息をついた。
「黄杏さんがどうするかは、黄杏さんが決める事だから、何も言わないけれど、お相手がどんな顔をするか、見ものね。」
「それもあるのよ。」
黄杏は、クスッと笑った。
「黄杏さんって……」
「はい?」
「時々、小悪魔に見えるわ。」
見つめ合う黄杏と青蘭。
「それって、誉め言葉ですか?」
黄杏は真顔で尋ねる。
「ええ。そう思うのならどうぞ。」
再び見つめ合う二人。
「まあ、それも……面白いわね。」
「そうでしょう?青蘭さん。」
黄杏と青蘭は、二人で黒音の屋敷を見ながら、クスクスと笑った。
それから2週間後。
黒音の元に、次々とお祝いの品が、届けられた。
白蓮からは、黄杏の時と同じように、産着や腹帯など、数々の豪華な品が揃えられた。
「有難いわ。皆、私にお子ができた事を、嬉しく思っているのね。」
黒音は、豪華な品を見ながら、うっとりとしていた。
「黒音様。こちらは、青蘭様からです。」
黒音の筆頭女人である桂花(ケイカ)が、立派な箱を持ってきた。
「青蘭様?」
青蘭からの贈り物は、赤子が生まれてから使うおしめの布だった。
「まあ、素敵な布だこと。」
赤子のおしめにするには、勿体無い程の美しい白い布。
「ああ、でも王のお子なら、これくらい当然よね。」
黒音は真っ白い布に、頬を摩りつけた。
「こちらは、紅梅様からのお品です。」
紅梅からの贈り物は、赤子が遊ぶ玩具だった。
「フフフッ。気が早いですこと。」
まだ大きくもなっていないお腹を撫でて、黒音は生まれてくる赤子が、この玩具を使っているところを想像した。
「こちらは、黄杏様からです。」
「お、黄杏様?」
黒音は驚いて、紅梅から貰った玩具を、落としてしまった。
「黒音様?大丈夫ですか?」
女人の桂花が、落とした玩具を拾い上げる。
「え、ええ……」
ゴクンと息を飲む黒音。
黒音はそっと、黄杏からの贈り物を開けた。
そこには、懐妊中に着るゆったりとした服に、あの薬草が入っていた。
「服?」
恐る恐る、黄杏から貰った服を手に取る。
他のお妃様は皆、産後に必要な物を贈ってくれたと言うのに、黄杏だけは、妊娠中に使う物……
もしかしたら、自分と同じように、赤子は無事生まれる事はないと、言っているのか?
しかもこの薬草。
煎じた物を黄杏も、妊娠中は毎日飲んでいた。
自分が、流産する為の薬を少量ずつ忍ばせていたのは、この煎じ茶だ。
「ひ、ひぃぃぃ……」
黒音は、その場に倒れてしまった。
「黒音様!?」
桂花が側に来て、抱き起す。
「大丈夫ですか?黒音様……」
「え、ええ……」
桂花は、黒音の目線の先に、黄杏からの贈り物がある事に気づいた。
「これを、黒音様の目の届かない場所に。」
「はい。」
桂花は他の女人に命じて、黄杏からの品物を隠してしまった。
「もう大丈夫ですよ、黒音様。」
「あ、有難う。」
「お体に障ります。さあ、寝台へ。」
桂花は黒音を、寝台へ寝かせた。
落ち着いてきた黒音をそのままにし、桂花は寝所から出ると、黒音が怖がっていた黄杏からの品物を見た。
他のお妃からの品とは別で、妊娠中に使う物。
一度お子を成した妃だからこそ、気づく品だ。
「はて?なぜこれを、黒音様は恐れるのか。」
王宮は、にわかに騒がしくなった。
「どうしたのかしら。」
黄杏が外を覗くと、それは向かい側にある、黒音の屋敷に人が出入りする音だった。
忠仁も、王宮付きの医師もいる。
「もしかして黒音様。ご病気なのでは。」
女人が、黒音の体調を気にする。
「もしそうだとしたら、大変ね。あなた、ちょっと行って確かめてみて。」
「はい。」
女人の一人に、様子を見に行かせた。
「大した事ではなければ、いいのだけれど。」
黄杏の心配を他所に、女人はあっさり引き返したきた。
「早かったわね。」
「それが……」
女人は、酷く混乱している。
「……黒音はもしかして、重い病気なの?」
「いいえ、そうでもなくて……」
はっきりとしない女人に、黄杏は勘が働いた。
「もしや……黒音に、お子が?」
女人は、焦りながら顔を上げた。
「まだ、決まった事ではありません。」
「でも、重い病気ではないとすれば、他に忠仁殿や医師が、訪れる理由がないでしょう。」
「すみません……」
女人の言葉に、胸がざわついた黄杏。
ほんの少し前、紅梅と一緒に、『王の子が欲しい。』と言っていたと言うのに。
先にお子を授かったのは、その紅梅でもなく、自分でもない。
どちらかと言えば、王の足が遠のいていた、黒音だった。
そして、夕方頃。
忠仁を通して信寧王に、黒音懐妊の知らせがもたらされた。
「本当か!忠仁!」
「はい。医師の見立てでは、2か月目に入った辺りだと。」
王である信志は、喜びのあまり跳ねるようにして、立ち上がった。
「おめでとうございます。」
側にいた白蓮が、頭を下げた。
「白蓮。私にも、また運が巡ってきたようだ。」
「ええ。私も、嬉しく思います。」
信志と白蓮は、互いに喜び合った。
「早速、黒音の元へ行かねばな。」
「そうですね。忠仁、黒音の具合はどうなの?つわりなどひどくない?」
「今のとことは、順調のようでございます。」
忠仁の答えに、信志は子供のように、黒音の元へ向かった。
黒音の屋敷は、それぞれのお妃の中でも、一番端にある。
黒音の妊娠の第1報を聞きつけた、他の妃達は、先に屋敷の外へ出て、王が来るのを待っていた。
最初にお祝いの言葉を述べたのは、第2夫人の青蘭。
「信寧王様。おめでとうございます。」
「ああ、青蘭。有難う。」
次に待っていたのは、第3夫人の紅梅。
「王、おめでとうございます。」
「紅梅……」
王は一旦歩みを止めると、紅梅を軽く抱き寄せた。
「許せ、紅梅。本来なら、そなたが先にできるはずだった。」
「いいえ。お子が授かるのに、先も後もございません。お気になさいますな。」
実は紅梅が、黄杏から貰った薬草を飲んでいると知ってから、王が毎日のように通っていたのは、紅梅の元だった。
一番王のお子が欲しいと願っていた紅梅。
それは信志にも痛い程に分かっていた。
先に黄杏が妊娠した時も、ボヤキはしたが祝いの品も贈ってくれた。
紅梅は勝気だが、人を陥れたりはしない。
そういう人間なのだ。
だからこそ余計に、子を作ってやらねばと、張り切っていた矢先の黒音の懐妊の知らせだったのだ。
「さあ、急いで黒音さんに、お顔を見せてあげてください。」
「ああ。」
名残惜しそうに、紅梅と別れると、次は第4夫人・黄杏の出番だ。
「信寧王様。黒音さんのご懐妊、おめでとうございます。」
「黄杏。」
先にできた黄杏の子が流れたのは、密かに黒音の手によるものと言う噂は、信志の耳にも入っていた。
今回の黒音の妊娠を、どんな気持ちで、聞いたのか。
「黄杏…あの……」
「さあ早く。黒音さんに、よくやったとお声を掛けてあげて下さい。」
心配など無用と言うくらい、黄杏は笑顔を見せていた。
「黄杏、そなた……」
「私の事は、お気になさいますな。王の初めてのお子でございます。」
信志は、黄杏の手を取った。
「私の初めての子は、そなたとの間にできた、この世に生まれる事はなかった赤子だ。」
「王……」
「男の子だったそうだな。産声をあげていれば、間違いなく私の跡継ぎだった。」
優しく微笑みかける信志に、黄杏の心は解きほぐされていく。
「では、また後で。」
黄杏の首に、唇を落とした信志は、次に黒音の屋敷を訪れた。
「ああ、信寧王様。やっといらっしゃってくれた。」
黒音に仕える女人が、女主人の懐妊に、心浮き立っていた。
「黒音。」
信志が声を掛けると、当の本人は寝台に、横になっていた。
「どうした?具合でも悪いのか?」
信志の声に、ようやく起き上がる黒音。
「し、信寧王様!」
酷く驚いた黒音は、袖で顔を隠した。
「今更、隠す事もあるまい。」
信志は、黒音の隣に座った。
「懐妊だそうだな。よくやった。」
「有難うございます。」
子ができたと言うのに、黒音はやけによそよそしい。
「他人事のようだな。……何か、気に障る事でもあるのか?」
「いえ。ただ……よく考えても、この前1度来て頂いた時しか、思い当たりませんでして……なんだか、不思議な気分なのです。」
それを聞いた信志は、クスクス笑いだした。
「私もそうだ。子を授かる時と言うのは、不思議な縁があるものだな。」
信志と黒音は、お互いに子が授かった縁を、噛みしめていた。
そして黄杏のところには、青蘭が訪れていた。
「不思議なものね。次にお子ができるのは、てっきり紅梅さんだと思っていたわ。」
青蘭は、黄杏を見るとハッとして、口を覆った。
「いいえ。私もそう思っていました。このところ、王はずっと、紅梅さんのところを、お訪ねになってましたからね。」
黄杏は、至って冷静だ。
そんな黄杏を、青蘭はじっと見つめる。
「……黒音さんに、お祝いの品を差し上げるの?」
黄杏は、お茶を持つ手を止めた。
「そのつもりよ。」
自分のお腹の子が、途中まで順調だったのに、急に流れてしまったのは、青蘭達のお陰で、黒音の差し金だと知った。
だが直接、黒音に何かをされた訳ではない。
黒音が、黒幕だと言う証拠もない。
黙って目を瞑って、知らない振りをするしかなかった。
「お目出度い方……」
「それ、紅梅さんにも言われました。」
嫌味で言ったのに、それすらも受け流す。
青蘭は、はぁっとため息をついた。
「黄杏さんがどうするかは、黄杏さんが決める事だから、何も言わないけれど、お相手がどんな顔をするか、見ものね。」
「それもあるのよ。」
黄杏は、クスッと笑った。
「黄杏さんって……」
「はい?」
「時々、小悪魔に見えるわ。」
見つめ合う黄杏と青蘭。
「それって、誉め言葉ですか?」
黄杏は真顔で尋ねる。
「ええ。そう思うのならどうぞ。」
再び見つめ合う二人。
「まあ、それも……面白いわね。」
「そうでしょう?青蘭さん。」
黄杏と青蘭は、二人で黒音の屋敷を見ながら、クスクスと笑った。
それから2週間後。
黒音の元に、次々とお祝いの品が、届けられた。
白蓮からは、黄杏の時と同じように、産着や腹帯など、数々の豪華な品が揃えられた。
「有難いわ。皆、私にお子ができた事を、嬉しく思っているのね。」
黒音は、豪華な品を見ながら、うっとりとしていた。
「黒音様。こちらは、青蘭様からです。」
黒音の筆頭女人である桂花(ケイカ)が、立派な箱を持ってきた。
「青蘭様?」
青蘭からの贈り物は、赤子が生まれてから使うおしめの布だった。
「まあ、素敵な布だこと。」
赤子のおしめにするには、勿体無い程の美しい白い布。
「ああ、でも王のお子なら、これくらい当然よね。」
黒音は真っ白い布に、頬を摩りつけた。
「こちらは、紅梅様からのお品です。」
紅梅からの贈り物は、赤子が遊ぶ玩具だった。
「フフフッ。気が早いですこと。」
まだ大きくもなっていないお腹を撫でて、黒音は生まれてくる赤子が、この玩具を使っているところを想像した。
「こちらは、黄杏様からです。」
「お、黄杏様?」
黒音は驚いて、紅梅から貰った玩具を、落としてしまった。
「黒音様?大丈夫ですか?」
女人の桂花が、落とした玩具を拾い上げる。
「え、ええ……」
ゴクンと息を飲む黒音。
黒音はそっと、黄杏からの贈り物を開けた。
そこには、懐妊中に着るゆったりとした服に、あの薬草が入っていた。
「服?」
恐る恐る、黄杏から貰った服を手に取る。
他のお妃様は皆、産後に必要な物を贈ってくれたと言うのに、黄杏だけは、妊娠中に使う物……
もしかしたら、自分と同じように、赤子は無事生まれる事はないと、言っているのか?
しかもこの薬草。
煎じた物を黄杏も、妊娠中は毎日飲んでいた。
自分が、流産する為の薬を少量ずつ忍ばせていたのは、この煎じ茶だ。
「ひ、ひぃぃぃ……」
黒音は、その場に倒れてしまった。
「黒音様!?」
桂花が側に来て、抱き起す。
「大丈夫ですか?黒音様……」
「え、ええ……」
桂花は、黒音の目線の先に、黄杏からの贈り物がある事に気づいた。
「これを、黒音様の目の届かない場所に。」
「はい。」
桂花は他の女人に命じて、黄杏からの品物を隠してしまった。
「もう大丈夫ですよ、黒音様。」
「あ、有難う。」
「お体に障ります。さあ、寝台へ。」
桂花は黒音を、寝台へ寝かせた。
落ち着いてきた黒音をそのままにし、桂花は寝所から出ると、黒音が怖がっていた黄杏からの品物を見た。
他のお妃からの品とは別で、妊娠中に使う物。
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