全部、俺のものになるまで 【R18】【完結】

日下奈緒

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【1】午前0時の社長室

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意外だった。

あれほど強引に抱いてきたくせに、待っていたのは彼の方だったのかと。

私は黙って、最後の資料を棚に収めた。

静かに振り返り、目を逸らさずに告げる。

「でも──セックスだったんですよね。」

言葉に感情は込めなかった。

事実を並べるように、淡々と。

「抱いたとか、愛し合ったとか……そういうんじゃない。ただの身体」

社長の眉が、わずかに歪んだ。

その瞬間、彼は私の唇に触れてきた。

熱い、痛いほどのキスだった。

「君は、俺が抱いたあと──背中を向けた。」

唇が離れた瞬間、彼の声が低く落ちた。

「まるで……もう二度と俺に心を許さないって言ってるようだった」

彼の表情には、悔しさがにじんでいた。

男としての自尊心か、欲望か、それとも──それ以外の、もっと深い何かか。

私は答えられなかった。

言葉を探す間もなく、彼の腕がもう一度、私の腰を強く引き寄せた。

そして、社長は静かに社長室のドアへ向かい──カチリと鍵をかけた。

「……えっ」

扉越しに、外の世界との繋がりが断たれた音がした。

「もう一度、君を抱く」

その一言に、胸がきゅうっと締め付けられる。

「社長、落ち着いてください……っ」

そう言う声すら、震えていた。

「落ち着けない。君が、こんな近くにいるのに……」

次の瞬間、ガバッと腕を引かれ、ソファへと押し倒された。

「この身体……俺は全部、知っているんだろう?」

息が止まるような熱が肌に迫る。

抗えない。

彼の手が、シャツのボタンを容赦なく剥がしていく。

布地が弾ける音が、生々しく響いた。

「……俺の体も、君が知ってる」

囁かれた声に、喉の奥が詰まる。

触れられるたび、忘れていた感覚が呼び戻されていく。

あの夜、狂おしいほどに貪られた快感。

肌が、覚えている。

社長の手が、唇が、どこに触れれば自分が壊れるのかを──

「いや……っ、社長……」

抵抗の言葉は弱く、声にならない。

もう、すべてが始まってしまっていた。

最後の一枚──スカートが剥がされ、私は社長と一緒に、裸になっていた。

熱を帯びた視線が、私の体を舐めるように這う。

「ああ……ここから蜜がとろけている」

彼の声が低く濡れて、息がかかるだけで痺れた。

舌が、私の入り口に触れた瞬間──

「はあん……っ」

思わず、社長の頭を掴んでいた。

やめてほしいのに、もっと欲しい。

矛盾した感情が波のように押し寄せてくる。

「ダメぇ……そんな、そこ……」

「悦んでるだろ。……君の腰、自分で動かしてる」

そう、私の体はもう彼を拒めない。

理性より、快楽が優ってしまっていた。

「ああ……そこ……もう……っ」

甘く舌でなぞられるたびに、奥がうずく。

社長の唇が、舌が、私の秘部に夢中になっている。

「甘い。君の蜜は……甘くて、もっと欲しくなる。」

掻き乱すような愛撫と、低く囁く声が、心の奥にまで届いて──

私は、完全に彼のものになっていくのを感じていた。

体が、ピクッと跳ねた。

奥まで貫かれた熱に、理性が一瞬で溶けていく。

この身体はもう──完全に、社長に支配されていた。

「はぁ……はぁっ……」

浅くなる呼吸の中、耳元で囁くように言われた。

「今度は……俺を、悦ばせてくれ」

低く、抑えた声。けれどその奥には、どうしようもない欲望が渦巻いていた。

入り口に押し当てられた熱が、ゆっくりと、ぐっと奥まで差し込まれる。

「ああ……咲……」

呼び捨てで名前を呼ばれた瞬間、胸の奥が震えた。

社長の腰が必死に動き、私の中を擦るたびに──

それはただの快楽じゃなかった。

私を、心ごと抱こうとしてくれているのが、わかった。

「……気持ち、いい……」

漏れた言葉は、無意識だった。

快楽に、心を寄せていた。

「俺も……気持ちいいよ……君の体、素晴らしい……」

息を乱しながらも、社長は私の奥を何度も確かめるように突き上げる。

ただ抱くだけじゃない。

何度も、私の名前を呼びながら──悦ばせようとしてくれる、その想いに、胸がいっぱいになる。

私はもう、この人のすべてを、受け入れていた。

「……はあ、咲。お願いだ」

熱に震えながら、社長は私の名を呼んだ。

「はい……」

気づけば、私も声を震わせていた。

「俺の情熱を、受け取ってほしい」

必死な眼差し。

いつもの冷静さは、どこにもなかった。

──どうして?

私はただの社員なのに。

特別じゃない。

仕事ができるわけでも、目立つ存在でもない。

「でも……」

言葉が途切れる。

心が、揺れている。

そんな私の耳元で、彼は続けた。

「君しかいない。……俺を受け入れてくれ。」

その一言に、心が大きく揺さぶられた。

──本当は、私の方こそ。

ずっと、社長が欲しかった。

あの夜以来、何度も社長室の前を通ってしまった。

もう一度だけ、名前を呼ばれたかった。

もう一度だけ、抱かれたかった。

だけど、言えなかった。

欲しいなんて、思ってはいけないと思っていたから。

……でも今、彼の口から“君しかいない”と言われた瞬間、すべてが溶けていった。

「……社長の、愛が欲しい」

囁いた瞬間、彼の瞳に火が灯る。

「ああ……咲……」

次の瞬間、社長は激しく腰を打ちつけてきた。

彼のすべてが、私の奥へと深く深く入り込んでくる。
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