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【3】ホテルのエレベーターで
④
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「この前は……ごめん。でも……もう、ゆかさんじゃないと、俺……ダメみたいだ。」
真剣な目。私だけを映してくれているその瞳に、胸がぎゅっと締めつけられる。
――私も、同じ。もう、あなたじゃないとダメ。
言葉にはしないまま、私はそっと目を閉じて、陽翔のキスを受け入れた。
陽翔の吐息が、私の首筋をかすめるたび、身体の奥がふるえる。
熱を帯びた肌が触れ合い、私は思わず小さく声を漏らした。
彼の手が私の背を撫で、そっと抱き寄せられる。
「ゆかさん、好きだ。」
その一言が胸に響き、私はかぶりを振るように彼の名を呼ぶ。
「陽翔……本当は私も……」
あの夜、エレベーターの中で交わしたキス。それ以来、心はずっと彼を追いかけていた。
「陽翔が好き。」
彼の瞳が切なげに細まり、ぎゅっと私を抱きしめる。その腕に、全身をゆだねた。
「ああ……」
陽翔の熱が深く伝わってくるたび、私の想いも高まっていく。言葉にできない情熱が、互いの鼓動に重なってゆく。
「ゆかさん……」
「陽翔っ……!」
交わる想いと熱が頂点に達したとき、すべてが溶けて、ただ彼のぬくもりだけが残った。
朝の光が、カーテンの隙間からこぼれていた。
ぼんやりとした意識の中で目を開けると、すぐ横に陽翔の寝顔があった。
――夢じゃ、ない。
その証のように、彼の頬にそっと指を伸ばす。
なめらかな肌に触れた瞬間、陽翔が小さく身じろぎした。
「んん……」
「ごめん、起こしちゃった?」
眠たげな瞳をゆっくりと開けた陽翔が、ふわっと笑う。
「おはよう、ゆかさん。」
「おはよう……陽翔。」
言葉にして初めて、自分がどれほどこの瞬間を願っていたかに気づく。
"おはよう"のひとことで、こんなにも心が満たされるなんて。
「起きようか?」
「うん。」
重なるシーツから身を起こす。裸の背中に冷たい空気が触れて、急いで服を手に取った。
互いに気まずさもなく、穏やかに、自然に服を着ていく。
まるで――何度もこうしてきた恋人同士のように。
着替えを終えたところで、陽翔がふと口を開いた。
「また会おう。」
そう言った陽翔は、ほんの少し視線を逸らしていた。
でも、次の瞬間、まっすぐ私を見つめ返してくる。
「俺達、ちゃんと付き合おう。」
……え?
思わず言葉が詰まった。
胸の奥で、何かが熱くふるえる。
「……ほんとに?」
ようやく絞り出した声は、震えていた。
陽翔は私の手を握って、小さく頷いた。
「うん。俺、本気だから。」
そのまっすぐな瞳を見ていたら、堪えていたものがこぼれそうになる。
「……ずるいよ、そんなの……」
声にならない想いが、涙となって頬をつたう。
「ゆかさん?」
「……嬉しいの。」
笑おうとしたけれど、涙が止まらなかった。
陽翔は黙って、そっと私を抱きしめてくれた。
「ありがとう……陽翔。」
私の頬に触れる手が、あたたかかった。
真剣な目。私だけを映してくれているその瞳に、胸がぎゅっと締めつけられる。
――私も、同じ。もう、あなたじゃないとダメ。
言葉にはしないまま、私はそっと目を閉じて、陽翔のキスを受け入れた。
陽翔の吐息が、私の首筋をかすめるたび、身体の奥がふるえる。
熱を帯びた肌が触れ合い、私は思わず小さく声を漏らした。
彼の手が私の背を撫で、そっと抱き寄せられる。
「ゆかさん、好きだ。」
その一言が胸に響き、私はかぶりを振るように彼の名を呼ぶ。
「陽翔……本当は私も……」
あの夜、エレベーターの中で交わしたキス。それ以来、心はずっと彼を追いかけていた。
「陽翔が好き。」
彼の瞳が切なげに細まり、ぎゅっと私を抱きしめる。その腕に、全身をゆだねた。
「ああ……」
陽翔の熱が深く伝わってくるたび、私の想いも高まっていく。言葉にできない情熱が、互いの鼓動に重なってゆく。
「ゆかさん……」
「陽翔っ……!」
交わる想いと熱が頂点に達したとき、すべてが溶けて、ただ彼のぬくもりだけが残った。
朝の光が、カーテンの隙間からこぼれていた。
ぼんやりとした意識の中で目を開けると、すぐ横に陽翔の寝顔があった。
――夢じゃ、ない。
その証のように、彼の頬にそっと指を伸ばす。
なめらかな肌に触れた瞬間、陽翔が小さく身じろぎした。
「んん……」
「ごめん、起こしちゃった?」
眠たげな瞳をゆっくりと開けた陽翔が、ふわっと笑う。
「おはよう、ゆかさん。」
「おはよう……陽翔。」
言葉にして初めて、自分がどれほどこの瞬間を願っていたかに気づく。
"おはよう"のひとことで、こんなにも心が満たされるなんて。
「起きようか?」
「うん。」
重なるシーツから身を起こす。裸の背中に冷たい空気が触れて、急いで服を手に取った。
互いに気まずさもなく、穏やかに、自然に服を着ていく。
まるで――何度もこうしてきた恋人同士のように。
着替えを終えたところで、陽翔がふと口を開いた。
「また会おう。」
そう言った陽翔は、ほんの少し視線を逸らしていた。
でも、次の瞬間、まっすぐ私を見つめ返してくる。
「俺達、ちゃんと付き合おう。」
……え?
思わず言葉が詰まった。
胸の奥で、何かが熱くふるえる。
「……ほんとに?」
ようやく絞り出した声は、震えていた。
陽翔は私の手を握って、小さく頷いた。
「うん。俺、本気だから。」
そのまっすぐな瞳を見ていたら、堪えていたものがこぼれそうになる。
「……ずるいよ、そんなの……」
声にならない想いが、涙となって頬をつたう。
「ゆかさん?」
「……嬉しいの。」
笑おうとしたけれど、涙が止まらなかった。
陽翔は黙って、そっと私を抱きしめてくれた。
「ありがとう……陽翔。」
私の頬に触れる手が、あたたかかった。
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