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第8部 真実の夫婦と、夜の甘い契り
⑤
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「やっと孫に会えるのね。長かったわ……」
その言葉に、私は胸が少しざわついた。
そんなに私に子供ができるのを、待っていたのか――。
結婚当初、ずっと期待されていたのだと気づいて、複雑な気持ちがこみあげた。
「あなた、ちゃんと食事はしているの?」
「ええ。助産婦さんからアドバイスをもらっているわ。」
「助産婦?」
「お産専門の方よ。ちゃんと面倒を見てくれてるの。」
私が落ち着いて説明すると、お母様もようやく安心したように頷いた。
「昔とは違うのね。」
お母様はそう言って、はぁっとため息をついた。
その肩はどこか軽くなったようで、張り詰めていたものが解けていく気がした。
「……あーあ。安心したらお腹が空いたわ。」
その言葉と同時に、お母様のお腹がぐぅっと鳴った。
私が目を丸くすると、お母様は頬を赤らめて笑った。
「最近思うのよ。質素な生活も、私には合うって。」
少し照れくさそうに言ったその言葉に、私は心から安堵した。
ふと見ると、隣でお父様も微笑んでいる。
「ルシアも、なんだかんだ言って幸せそうだしな。」
「あの子、伯爵夫人として頑張っているみたいよ。」
両親が顔を見合わせて笑い合うその姿に、かつてのギスギスとした空気はもうなかった。
ようやく――エルバリー家にも、遅ればせながら平和が訪れたようだった。
その夜、セドリックは一枚の紙を私に差し出した。
「子供の名前だ。」
手渡された紙には、ずらりと男の子の名前が書かれていた。
「全部、男の子の名前ね。」
思わずそう言うと、セドリックは少し困った顔をして笑った。
「ああ、そうだったか。無意識に……男の子だと信じてたみたいだ。」
寝転びながら、セドリックはその紙をじーっと見つめている。
「一生背負う名前だからな。良い名前をつけてあげたい。」
真剣な眼差しに、胸が温かくなった。
「……じゃあ、女の子だったらどうするの?」
私が問いかけると、セドリックは目を細めて、くすっと笑った。
「その時は君が考えてくれ。僕より、ずっと素敵な名前をつけてくれるはずだ。」
そう言って、私の手をそっと握ってくれた。
小さな命への愛情が、ゆっくりと広がっていく夜だった。
こうして、セドリックと一緒に眠りにつく。
ただ隣にいて、温もりを感じながら目を閉じる。
それだけで、胸がいっぱいになるほどの幸せだった。
お腹の中に宿る新しい命。
これから名前を与え、愛情を注ぎ、育てていく。
――新しい家族が増える。
――新しい未来が始まる。
もしかしたら、この子が新しいグレイバーン伯爵となる日が来るのかもしれない。
そう思うと、私の胸の中にふわりと灯がともるような気がした。
静かな夜に、二つの鼓動と、もう一つ小さな命の鼓動が重なって――
私は、眠りについた。
その言葉に、私は胸が少しざわついた。
そんなに私に子供ができるのを、待っていたのか――。
結婚当初、ずっと期待されていたのだと気づいて、複雑な気持ちがこみあげた。
「あなた、ちゃんと食事はしているの?」
「ええ。助産婦さんからアドバイスをもらっているわ。」
「助産婦?」
「お産専門の方よ。ちゃんと面倒を見てくれてるの。」
私が落ち着いて説明すると、お母様もようやく安心したように頷いた。
「昔とは違うのね。」
お母様はそう言って、はぁっとため息をついた。
その肩はどこか軽くなったようで、張り詰めていたものが解けていく気がした。
「……あーあ。安心したらお腹が空いたわ。」
その言葉と同時に、お母様のお腹がぐぅっと鳴った。
私が目を丸くすると、お母様は頬を赤らめて笑った。
「最近思うのよ。質素な生活も、私には合うって。」
少し照れくさそうに言ったその言葉に、私は心から安堵した。
ふと見ると、隣でお父様も微笑んでいる。
「ルシアも、なんだかんだ言って幸せそうだしな。」
「あの子、伯爵夫人として頑張っているみたいよ。」
両親が顔を見合わせて笑い合うその姿に、かつてのギスギスとした空気はもうなかった。
ようやく――エルバリー家にも、遅ればせながら平和が訪れたようだった。
その夜、セドリックは一枚の紙を私に差し出した。
「子供の名前だ。」
手渡された紙には、ずらりと男の子の名前が書かれていた。
「全部、男の子の名前ね。」
思わずそう言うと、セドリックは少し困った顔をして笑った。
「ああ、そうだったか。無意識に……男の子だと信じてたみたいだ。」
寝転びながら、セドリックはその紙をじーっと見つめている。
「一生背負う名前だからな。良い名前をつけてあげたい。」
真剣な眼差しに、胸が温かくなった。
「……じゃあ、女の子だったらどうするの?」
私が問いかけると、セドリックは目を細めて、くすっと笑った。
「その時は君が考えてくれ。僕より、ずっと素敵な名前をつけてくれるはずだ。」
そう言って、私の手をそっと握ってくれた。
小さな命への愛情が、ゆっくりと広がっていく夜だった。
こうして、セドリックと一緒に眠りにつく。
ただ隣にいて、温もりを感じながら目を閉じる。
それだけで、胸がいっぱいになるほどの幸せだった。
お腹の中に宿る新しい命。
これから名前を与え、愛情を注ぎ、育てていく。
――新しい家族が増える。
――新しい未来が始まる。
もしかしたら、この子が新しいグレイバーン伯爵となる日が来るのかもしれない。
そう思うと、私の胸の中にふわりと灯がともるような気がした。
静かな夜に、二つの鼓動と、もう一つ小さな命の鼓動が重なって――
私は、眠りについた。
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