エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒

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政略結婚

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ー あなたを守る事ができます。 -

帰り道、ぼーっとしながら頭の中で繰り返した言葉。

私、男の人に”守る”って言われたの、初めてかも。

でもそれって、警察官だから?

市民を守るって事と、同じ感覚?

それとも……私を女として、見てくれているの?


私は、地下鉄の窓に映る自分を、じーっと見た。

こんな私を、守ってくれるなんて。

胸の奥で、トクントクンと音が鳴る。

私、ドキドキしている。

これが恋になるのかな。

そう思うと、ふと笑顔になった。


家に着き、玄関のドアを開けた。

「どうだった?デートは。」

玄関の前に、母さんが立っていた。

「えっ?ずっと待ってたの?」

「当たり前じゃない!感想、聞かせて!」

頬に手を当て、ターンを決め込む母さんの方が、私よりも恋する乙女に見える。

「とりあえず、一旦休ませて。」

「はいはい。お茶、淹れるわね。」

そのままリビングのソファーに座って、じーっとテーブルを見た。

「はい、お茶。」

母さんが淹れてくれたお茶から、ゆらりと湯気が出る。

「どうしたの?黙って。」

母さんが私の隣に座る。

「ねえ、母さんは父さんが黙ったまま、何も話さなかった時は、どう思うの?」

「どう思うって、そうねえ。何も思わないわね。」

意外な言葉に、私は目が点になった。

「つまらない。何考えてんだろって、思わない?」

「結婚したての頃はね。そう思ってたわよ。でも、ずっと一緒にいるとね、そういう時間もあっていいと、思うのよ。」


ずっと一緒にいると。

少なくても私と圭也さんは、この前のお見合いで会ったばかりだ。

それなのに、黙っていても居心地がいいだなんて、思えない。

なのに……

またあの言葉を思い出して、胸がドキドキしてくる。


「何?もしかして、何もしゃべらなかったの?」

「うん。」

「ふふふ。初々しいわね。」

「初々しい?」

「緊張して、何も言葉が出てこなかったんでしょ。」

うーんと、私は考えた。

これがまだ高校生や、大学生だったら分かる。

けれど私達は、三十路を過ぎたいい歳した大人だ。

異性とデートするなんて、もう慣れているだろうに。


「じゃあ、紗良はつまらなかったの?」

「うん。つまらなかった。」

「それは残念だったわね。」

「残念……」

確かに残念だった。でも、私は今、前向きな気持ちでいる。

「でもね。それもいいなぁって、思ったの。」

「まあ。そう。」

母さんは、すごく喜んでいた。


そして帰って来た父さんに、その話をした。

父さんは喜んで、相手の一条さんの家に、このお話を受けたいと伝えた。

「えっ?断る?」

父さんは電話口で、驚いていた。

「ええ、圭也君がそう言っていたんですね。分かりました。」

電話を切った父さんは、ため息をついた。

「どうしたの?父さん。」

「結婚の話はなかったことにして欲しいと、圭也君から話があったそうだ。」

「えっ?」

私は立ち上がった。

ー あなたを守る事ができる -

あの言葉は、嘘だったの?

私は急いで、圭也さんに電話を架けた。


『はい。』

「紗良です。今、会ってお話することはできますか?」

『いいですよ。僕もそう思っていました。』

二人の気持ちは一緒で、近くのコーヒーショップで、待ち合わせをした。

私がお店に着いた時には、圭也さんはもう席に座っていた。


「すみません。遅くなって。」

「いいえ。僕も今、来たところですから。」

一緒にコーヒーを頼んで、一口飲んだ後、口を開いた。

「あのっ!」

「紗良さん。」

同時に話しかけて、ハッとなった。

「どうぞ、圭也さんから。」

「いいえ、紗良さんの方からどうぞ。」

私は息をゴクンと飲んだ。

「どうして、このお話、断ろうと思ったんですか?」

「えっ、紗良さん。この話、受けてくれるんですか?」

改めて言われると、何て答えたらいいか、分からない。

「この前、デートした時。紗良さん、乗り気ではないと思ったので。」

「いいえ。私は……」

圭也さんが、顔を上げた。

「私は、しゃべらなくても、圭也さんがいいと思いました。」

「紗良さん……」

ほんわかした空気が、二人の間を流れた。

「私の事、守るって言ったじゃないですか。」

「言いました。でもそれは、あくまで僕の気持ちです。」

「えっ?」

私の頭の上に、”?”マークが飛んだ。

「僕は、紗良さんの気持ちを無視できない。紗良さんが、僕の子供を産みたいと思ってくれないのなら、この話は……」

「ちょっと、誰が産みたくないって言いました?」

「えっ?」

今度は、圭也さんの頭の上に、”?”マークが飛んだ。

「紗良さん、僕の子供を産んでくれるんですか?」


その答えは、もっと気持ちを育んでからだと思っていた。

「……はい。できれば、その方向に持っていきたいと、思っています。」

「あは……ははは……」

圭也さんは、ズルっと体の力が抜けたようだ。
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