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新たな生活
②
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しばらくして、私は生理が来ていない事を確信した。
「じゃじゃーん。」
事前に買っていた妊娠検査薬を出し、トイレに向かう。
「できてるといいなぁ。」
検査薬に尿をかけ、結果を待つ。
結果は見事、陽性だった。
「やったあ!」
トイレの中で、私は万歳をしてしまった。
「あー、明日には産婦人科に行こうかな。」
トイレから出てくると、スマホが鳴っているのが聞こえた。
「はいはい、どなたでしょう。」
見れば、画面に圭也さんの文字が。
私はウキウキした。
どうしよう。まだ言わない方がいいよね。
「はい、圭也さん。」
だが、雰囲気は違った。
『一条圭也さんの奥様ですね。』
「……はい。」
『塚田病院の看護師の丸山と申します。』
「看護師さん?」
『一条圭也さんが、お仕事中に怪我をされて、病院に運ばれています。』
「えっ……」
『できれば、こちらに来て頂きたいのですが……』
「はい、今すぐ行きます!」
私は小さなバッグに、必要な物を詰め込むと、急いで家を出た。
怪我って何?
どんな容体?
自転車を漕いでいる時に、隣の奥さんの言葉を思い出した。
「ううん。大丈夫。」
私は、首を横に振った。
きっと、圭也さんは大丈夫。
病院に着いて、受付に病室を聞いた。
「一条圭也さんは、集中治療室にいます。こちらへどうぞ。」
「集中治療室……」
ただの怪我じゃないの?
不安が過る。
途中で看護師さんにバトンタッチされ、集中治療室に入った。
そこには、何本も管が入っている圭也さんの姿があった。
「圭也さん?」
ゆっくりと、圭也さんに近づく。
顔色が悪い。
「ねえ、圭也さん。起きて。」
圭也さんを揺らしてみる。
「圭也さん!」
すると、看護師さんが私の背中をそっと、撫でてくれた。
「目が覚まされましたら、教えて下さい。」
「えっ……」
看護師さんはうんと頷くと、行ってしまった。
私は椅子に座ると、圭也さんの手を握った。
胸の辺りからちらっと見える包帯。
腕にも、頭にも巻いてある。
良く見れば、痛々しい。
「圭也さん、今日ね。妊娠検査薬を試してみたの。」
目を閉じている圭也さんに、話しかけた。
「そうしたらね、陽性だって。赤ちゃん、また私達の間に来てくれたのよ。」
そんな話をしたら、涙が出て来た。
「だからお願い、目を覚まして。」
必死に圭也さんに訴えた。
「死なないで!圭也さん!」
このまま、赤ちゃんができた事も知らずに死ぬなんて、ダメだよ!
「誰が死ぬって?」
私は圭也さんの目を見た。
目が開いている。
「圭也さん?」
「ちょっと眠くて寝てただけだよ。」
でも、少し話しただけでも、辛そうだ。
「それで?赤ちゃんができたんだって?」
「うん、うん。そうだよ。圭也さん。」
「紗良と子供がいるのに、こんなところで、死んでたまるか。」
すると圭也さんは、ニコッと笑った。
「結婚する時、言っただろ。紗良を守るって。」
「圭也さん……」
その後、看護師さんを呼んだ。
看護師さんは、半ば疲労で寝ている事が、分かっていたらしい。
「まあ、1カ月もあれば退院できるでしょ。」
呑気に言っていた看護師さん。
妊娠おめでとうございますと言われた。
その後、産婦人科に行って、妊娠は確定。
母子手帳も発行してもらった。
お義母さんはと言うと。
「もう何も言わないわ。女の子でもいいわよ。でも、男の子ができるまで、何人でも産んで頂戴。」
あくまで、孫を警視総監にしたいらしい。
そして妊娠中。
時間があると、いつも圭也さんと散歩をした。
退院したばかりの頃は、リハビリも兼ねて。
「でも、よかった。無事退院できて。」
「ご心配かけました。」
今でもあの怪我は、圭也さんの弱点になっている。
「本当に死ぬかと思ったんだからね。」
すると圭也さんは、私を抱き寄せた。
「だから、死なないよ。紗良を置いて。」
お見合いをした時は、なんでこんな人となんかと思ったけれど。
今は、圭也さんと結婚してよかった。
「早く、産まれてくればいいな。」
「まだまだだよ。」
これからもずっと、圭也さんとの甘く切ない結婚生活は、続いていくのだろう。
ー End -
「じゃじゃーん。」
事前に買っていた妊娠検査薬を出し、トイレに向かう。
「できてるといいなぁ。」
検査薬に尿をかけ、結果を待つ。
結果は見事、陽性だった。
「やったあ!」
トイレの中で、私は万歳をしてしまった。
「あー、明日には産婦人科に行こうかな。」
トイレから出てくると、スマホが鳴っているのが聞こえた。
「はいはい、どなたでしょう。」
見れば、画面に圭也さんの文字が。
私はウキウキした。
どうしよう。まだ言わない方がいいよね。
「はい、圭也さん。」
だが、雰囲気は違った。
『一条圭也さんの奥様ですね。』
「……はい。」
『塚田病院の看護師の丸山と申します。』
「看護師さん?」
『一条圭也さんが、お仕事中に怪我をされて、病院に運ばれています。』
「えっ……」
『できれば、こちらに来て頂きたいのですが……』
「はい、今すぐ行きます!」
私は小さなバッグに、必要な物を詰め込むと、急いで家を出た。
怪我って何?
どんな容体?
自転車を漕いでいる時に、隣の奥さんの言葉を思い出した。
「ううん。大丈夫。」
私は、首を横に振った。
きっと、圭也さんは大丈夫。
病院に着いて、受付に病室を聞いた。
「一条圭也さんは、集中治療室にいます。こちらへどうぞ。」
「集中治療室……」
ただの怪我じゃないの?
不安が過る。
途中で看護師さんにバトンタッチされ、集中治療室に入った。
そこには、何本も管が入っている圭也さんの姿があった。
「圭也さん?」
ゆっくりと、圭也さんに近づく。
顔色が悪い。
「ねえ、圭也さん。起きて。」
圭也さんを揺らしてみる。
「圭也さん!」
すると、看護師さんが私の背中をそっと、撫でてくれた。
「目が覚まされましたら、教えて下さい。」
「えっ……」
看護師さんはうんと頷くと、行ってしまった。
私は椅子に座ると、圭也さんの手を握った。
胸の辺りからちらっと見える包帯。
腕にも、頭にも巻いてある。
良く見れば、痛々しい。
「圭也さん、今日ね。妊娠検査薬を試してみたの。」
目を閉じている圭也さんに、話しかけた。
「そうしたらね、陽性だって。赤ちゃん、また私達の間に来てくれたのよ。」
そんな話をしたら、涙が出て来た。
「だからお願い、目を覚まして。」
必死に圭也さんに訴えた。
「死なないで!圭也さん!」
このまま、赤ちゃんができた事も知らずに死ぬなんて、ダメだよ!
「誰が死ぬって?」
私は圭也さんの目を見た。
目が開いている。
「圭也さん?」
「ちょっと眠くて寝てただけだよ。」
でも、少し話しただけでも、辛そうだ。
「それで?赤ちゃんができたんだって?」
「うん、うん。そうだよ。圭也さん。」
「紗良と子供がいるのに、こんなところで、死んでたまるか。」
すると圭也さんは、ニコッと笑った。
「結婚する時、言っただろ。紗良を守るって。」
「圭也さん……」
その後、看護師さんを呼んだ。
看護師さんは、半ば疲労で寝ている事が、分かっていたらしい。
「まあ、1カ月もあれば退院できるでしょ。」
呑気に言っていた看護師さん。
妊娠おめでとうございますと言われた。
その後、産婦人科に行って、妊娠は確定。
母子手帳も発行してもらった。
お義母さんはと言うと。
「もう何も言わないわ。女の子でもいいわよ。でも、男の子ができるまで、何人でも産んで頂戴。」
あくまで、孫を警視総監にしたいらしい。
そして妊娠中。
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「でも、よかった。無事退院できて。」
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今でもあの怪我は、圭也さんの弱点になっている。
「本当に死ぬかと思ったんだからね。」
すると圭也さんは、私を抱き寄せた。
「だから、死なないよ。紗良を置いて。」
お見合いをした時は、なんでこんな人となんかと思ったけれど。
今は、圭也さんと結婚してよかった。
「早く、産まれてくればいいな。」
「まだまだだよ。」
これからもずっと、圭也さんとの甘く切ない結婚生活は、続いていくのだろう。
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