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第十五章 世界と君のために
隠された使命
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ピークレンジ山脈の土砂崩れから一ヶ月が経過していました。
今もまだ土砂の除去作業が続けられています。しかしながら、もう生存者は一人もおらず、腐りかけた死体が発見されるだけでした。
「はぁ……」
嘆息しつつも、私は土砂の除去作業を続ける。
流石に着替えや湯浴みはしていましたけれど、それでも連日泥だらけでありまして、スカーレット子爵領にて開墾作業をしていた頃を思い出す毎日です。
「アナスタシア様!!」
いつものように作業をしていた私ですけど、レグス団長の声にその手を止めています。
まぁた巨大な岩でもあったのかしらね。私を呼ぶ理由はそれくらいしかありません。
ところが、レグス団長の元へと向かうと、問題は岩石ではないと分かります。
大量の土砂の中に女神像のようなものが発見されていました。
「これは……?」
「古代の石像でしょうかね? 今に残るアマンダ様の像とは違うような気がします」
確かにアマンダの像とは違う気がするね。
私は水魔法により、石像の泥を落としていく。
(えっ……?)
絶句する私。それもそのはず、石像は明らかにアマンダの女神像ではなかったのです。
(ひょっとして……)
脳裏によぎる記憶の断片。
私はこの石像が何かを知っていました。
(アンジェラ・ローズマリーの石像……)
石像の足元には二頭の幼竜。
それはまさにマリィとルイであって、石像のモデルがアンジェラであることを明確にしています。
確かに読んだのです。アンジェラの日記には黒竜討伐を記念して石像が建てられたこと。安心させるためについた嘘が大ごとになってしまったのだと……。
「何だか、この石像はアナスタシア様に似ていますね?」
ふとレグス団長が言った。
「え……?」
これはアンジェラ・ローズマリーの石像に他ならない。
アナスタシアに似ているわけが……。
(あれ……?)
不意に脳裏へと巡る疑念。
いや、そんなはずはない。絶対に違うはず。
妙な憶測に頭を振る私だったのですけど、確かに石像はアナスタシアと酷似しています。
(そんな馬鹿な……)
鼓動が高鳴っていました。
兼ねてから抱いていた疑問が繋がっていく。
この石像は私がアナスタシアとして転生した理由を明確にしているのだと。
(アマンダは知っていたのね……)
おかしいと思っていたのです。
天界は確かに綿密なシミュレーションの結果だと口にしていました。
しかし、転生先の人物として選ばれたのはモブ令嬢アナスタシア。セシルを口説くだけであれば、エレオノーラでも良かったと思える。
他にも上位貴族のご令嬢は沢山いたのですし、わざわざアナスタシアを選んだ理由が分からなかったのです。
(間違いないわ……)
私は結論を導いていました。
(アナスタシアはアンジェラの子孫だ……)
日記にあった双子。一人は銀髪で、もう一人は赤髪でした。
確か名前はリサリア。呪印がない幼子は王都から逃された末、スカーレット子爵領まで来ていたのかもしれない。
(アマンダは諦めたようで、期待もしていたのか……)
そうとしか思えない。
愛の女神アマンダは私に停滞する時間軸を動かしてくれるよう願っていましたが、根幹となる問題の排除についても期待していたのね。
アンジェラ・ローズマリーの子孫を選んだのは討伐可能性を残すために違いない。
でもなければ、王子殿下との婚姻に不利な子爵令嬢など選ぶわけがないのだから。
「アナスタシア様……?」
黙り込む私にレグス団長が小首を傾げています。
失敬。あまりにも重大すぎる案件に気付いてしまったから、放置してしまったわ。
「私に似ていますか?」
「ああ、失礼に感じたのでしたら謝罪させていただきます。何となくそう思ったのです」
いや、正直に有り難いお話でしたよ?
おかげで真相に辿り着けました。私は自身に隠された使命があることに気付けたのです。
「さあ、石像の事よりも復興が大事です。頑張りましょう!」
このあとも私は復興作業を手伝い、二ヶ月をリーフメルで過ごすことになりました。
しかしながら、私の力が必要な岩石は大方除去できたということで、リーフメルを離れることに。
心苦しく感じながらも、被災地に祈りを捧げながらペガサスにて飛び立っています。
今もまだ土砂の除去作業が続けられています。しかしながら、もう生存者は一人もおらず、腐りかけた死体が発見されるだけでした。
「はぁ……」
嘆息しつつも、私は土砂の除去作業を続ける。
流石に着替えや湯浴みはしていましたけれど、それでも連日泥だらけでありまして、スカーレット子爵領にて開墾作業をしていた頃を思い出す毎日です。
「アナスタシア様!!」
いつものように作業をしていた私ですけど、レグス団長の声にその手を止めています。
まぁた巨大な岩でもあったのかしらね。私を呼ぶ理由はそれくらいしかありません。
ところが、レグス団長の元へと向かうと、問題は岩石ではないと分かります。
大量の土砂の中に女神像のようなものが発見されていました。
「これは……?」
「古代の石像でしょうかね? 今に残るアマンダ様の像とは違うような気がします」
確かにアマンダの像とは違う気がするね。
私は水魔法により、石像の泥を落としていく。
(えっ……?)
絶句する私。それもそのはず、石像は明らかにアマンダの女神像ではなかったのです。
(ひょっとして……)
脳裏によぎる記憶の断片。
私はこの石像が何かを知っていました。
(アンジェラ・ローズマリーの石像……)
石像の足元には二頭の幼竜。
それはまさにマリィとルイであって、石像のモデルがアンジェラであることを明確にしています。
確かに読んだのです。アンジェラの日記には黒竜討伐を記念して石像が建てられたこと。安心させるためについた嘘が大ごとになってしまったのだと……。
「何だか、この石像はアナスタシア様に似ていますね?」
ふとレグス団長が言った。
「え……?」
これはアンジェラ・ローズマリーの石像に他ならない。
アナスタシアに似ているわけが……。
(あれ……?)
不意に脳裏へと巡る疑念。
いや、そんなはずはない。絶対に違うはず。
妙な憶測に頭を振る私だったのですけど、確かに石像はアナスタシアと酷似しています。
(そんな馬鹿な……)
鼓動が高鳴っていました。
兼ねてから抱いていた疑問が繋がっていく。
この石像は私がアナスタシアとして転生した理由を明確にしているのだと。
(アマンダは知っていたのね……)
おかしいと思っていたのです。
天界は確かに綿密なシミュレーションの結果だと口にしていました。
しかし、転生先の人物として選ばれたのはモブ令嬢アナスタシア。セシルを口説くだけであれば、エレオノーラでも良かったと思える。
他にも上位貴族のご令嬢は沢山いたのですし、わざわざアナスタシアを選んだ理由が分からなかったのです。
(間違いないわ……)
私は結論を導いていました。
(アナスタシアはアンジェラの子孫だ……)
日記にあった双子。一人は銀髪で、もう一人は赤髪でした。
確か名前はリサリア。呪印がない幼子は王都から逃された末、スカーレット子爵領まで来ていたのかもしれない。
(アマンダは諦めたようで、期待もしていたのか……)
そうとしか思えない。
愛の女神アマンダは私に停滞する時間軸を動かしてくれるよう願っていましたが、根幹となる問題の排除についても期待していたのね。
アンジェラ・ローズマリーの子孫を選んだのは討伐可能性を残すために違いない。
でもなければ、王子殿下との婚姻に不利な子爵令嬢など選ぶわけがないのだから。
「アナスタシア様……?」
黙り込む私にレグス団長が小首を傾げています。
失敬。あまりにも重大すぎる案件に気付いてしまったから、放置してしまったわ。
「私に似ていますか?」
「ああ、失礼に感じたのでしたら謝罪させていただきます。何となくそう思ったのです」
いや、正直に有り難いお話でしたよ?
おかげで真相に辿り着けました。私は自身に隠された使命があることに気付けたのです。
「さあ、石像の事よりも復興が大事です。頑張りましょう!」
このあとも私は復興作業を手伝い、二ヶ月をリーフメルで過ごすことになりました。
しかしながら、私の力が必要な岩石は大方除去できたということで、リーフメルを離れることに。
心苦しく感じながらも、被災地に祈りを捧げながらペガサスにて飛び立っています。
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