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第三章 死力を尽くして
カザイン光皇家
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恒星を失った星系。完全な闇に飲み込まれていたけれど、まだそこには生命が息づいていた。過酷な状況下にあっても彼らは希望を抱いている。
「ハニエムよ、前哨戦は散々であったらしいな?」
宙間建造物“アルバ”の中でも一際目立つ建造物が皇都レブナである。
レブナに皇都が遷都されたのはつい先日のことだ。環境悪化が著しいゼクスを放棄し、カザイン光皇はレブナへと居城を移していた。
「申し訳ございません。しかし、あれは前哨戦などではなかったのです。あの侵攻は敵情視察の延長に他なりませんので……」
ハニエムは連軍の最高司令官である。どうやら彼は此度の交戦結果を光皇に報告しているようだ。
不満げなカザイン光皇の問いには直ぐさま反論している。ハニエムは敗戦が想定内であったことを明確にしていた。
「であれば次戦は勝利できるのだな?」
「もちろんでございます。既に対策を立てております。何しろ光皇路を越えなければ向こう側の詳しい情報が得られませんので……。しかし、成果は十分です。エイリアンの指揮系統から戦術、戦力を正確に把握できております……」
自信満々にハニエムがいう。確かにゲートから距離があった彼らは情報が不足していた。偵察機を何度も送り込んでいたけれど、情報は如何ほども得られなかったことだろう。
「次戦は五倍の戦力を投入します。また当てにならぬ自立機の割合を減らし、その分を有人機に割り当てる予定です。ただ一般兵は希望した臣民を訓練し始めておりますけれど、やはり技量を備えた操縦士が足りません。できれば即戦力となり得る操縦士の選定を光皇陛下にお願いしたいのですが……」
連軍の全権を任されているハニエムだが、熟練した兵の召集については問題があるらしい。自身の裁量で決定すると何やら不都合があるようだ。
「それならばヘーゼン星院家及びリグルナム星院家の私兵から選べ。彼らは侵略戦争否定派であるし、奴らが私兵を多く残しているのは問題だ。余の勅旨であれば拒否できぬだろう……」
星院家とは光皇連最高の支配階級であって、カザイン皇家も厳密には十二ある星院家の一つである。皇家は世襲制ではなく、皇が亡くなるか失脚した場合にのみ次代の皇を星院家から選ぶ。また選定方法は十二星院家の投票によって決められるが、ここ四代はずっとカザイン星院家が皇家となっていた。
カザイン皇が名を上げたリグルナム家は最も多く光皇を排出している名家である。しかし、ここしばらくは光皇が出ていない。かといって今でもリグルナム星院家はゼクス内に広大な所領を持ち、多くの私兵を抱えていた。
「有り難うございます。ということはベゼラ・リグルナム殿下を連士待遇として召集してよろしいのですね?」
ベゼラ・リグルナムは皇の器と評される若者であり、リグルナム星院家の嫡子である。カザイン皇の命を受け、ハニエムは何かを察した様子だ。
「理解が早くて助かる。可能であればクウィズ・ヘーゼンも召集しろ……」
「御意のままに。ちょうど殿下たちに相応しい役割がございますので、二人には連軍のため身命を捧げて頂きましょう」
ニヤリとするハニエムは何やら企んでいるようだ。カザイン皇も気付いている感じだが、咎めようとはしなかった。
カザイン光皇連は次なる戦いに向け動き始めている。各所で不穏な動きが見られたものの、全体としての方向性は何も変わっていない。星系を奪い取る結果だけを彼らは望んでいた……。
「ハニエムよ、前哨戦は散々であったらしいな?」
宙間建造物“アルバ”の中でも一際目立つ建造物が皇都レブナである。
レブナに皇都が遷都されたのはつい先日のことだ。環境悪化が著しいゼクスを放棄し、カザイン光皇はレブナへと居城を移していた。
「申し訳ございません。しかし、あれは前哨戦などではなかったのです。あの侵攻は敵情視察の延長に他なりませんので……」
ハニエムは連軍の最高司令官である。どうやら彼は此度の交戦結果を光皇に報告しているようだ。
不満げなカザイン光皇の問いには直ぐさま反論している。ハニエムは敗戦が想定内であったことを明確にしていた。
「であれば次戦は勝利できるのだな?」
「もちろんでございます。既に対策を立てております。何しろ光皇路を越えなければ向こう側の詳しい情報が得られませんので……。しかし、成果は十分です。エイリアンの指揮系統から戦術、戦力を正確に把握できております……」
自信満々にハニエムがいう。確かにゲートから距離があった彼らは情報が不足していた。偵察機を何度も送り込んでいたけれど、情報は如何ほども得られなかったことだろう。
「次戦は五倍の戦力を投入します。また当てにならぬ自立機の割合を減らし、その分を有人機に割り当てる予定です。ただ一般兵は希望した臣民を訓練し始めておりますけれど、やはり技量を備えた操縦士が足りません。できれば即戦力となり得る操縦士の選定を光皇陛下にお願いしたいのですが……」
連軍の全権を任されているハニエムだが、熟練した兵の召集については問題があるらしい。自身の裁量で決定すると何やら不都合があるようだ。
「それならばヘーゼン星院家及びリグルナム星院家の私兵から選べ。彼らは侵略戦争否定派であるし、奴らが私兵を多く残しているのは問題だ。余の勅旨であれば拒否できぬだろう……」
星院家とは光皇連最高の支配階級であって、カザイン皇家も厳密には十二ある星院家の一つである。皇家は世襲制ではなく、皇が亡くなるか失脚した場合にのみ次代の皇を星院家から選ぶ。また選定方法は十二星院家の投票によって決められるが、ここ四代はずっとカザイン星院家が皇家となっていた。
カザイン皇が名を上げたリグルナム家は最も多く光皇を排出している名家である。しかし、ここしばらくは光皇が出ていない。かといって今でもリグルナム星院家はゼクス内に広大な所領を持ち、多くの私兵を抱えていた。
「有り難うございます。ということはベゼラ・リグルナム殿下を連士待遇として召集してよろしいのですね?」
ベゼラ・リグルナムは皇の器と評される若者であり、リグルナム星院家の嫡子である。カザイン皇の命を受け、ハニエムは何かを察した様子だ。
「理解が早くて助かる。可能であればクウィズ・ヘーゼンも召集しろ……」
「御意のままに。ちょうど殿下たちに相応しい役割がございますので、二人には連軍のため身命を捧げて頂きましょう」
ニヤリとするハニエムは何やら企んでいるようだ。カザイン皇も気付いている感じだが、咎めようとはしなかった。
カザイン光皇連は次なる戦いに向け動き始めている。各所で不穏な動きが見られたものの、全体としての方向性は何も変わっていない。星系を奪い取る結果だけを彼らは望んでいた……。
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