Solomon's Gate

坂森大我

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第三章 死力を尽くして

ミハルとアイリス、再び……

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 イプシロン基地に接続する病棟。アイリスの病室へとミハルはやって来た。少し躊躇いがあったものの、ミハルは意を決して病室へと入っていく。

「んん? 誰かと思えばチビっ子パイロットじゃないか?」

 喧嘩を売るような話であったが、ミハルは気にせず近付いていく。どうやら名乗る必要はなさそうだ。アイリスはミハルが誰であるのかを分かっているのだから。

「背丈のことはほっといてください……。しかし、貴方はどういう理由で私を呼び寄せたんですか? しかも一番機に宛てがうだなんて……」

 グレッグに薦められたからといって、自身の代わりを新人に任せるのはどう考えても間違っている。隊に混乱が生じるのは明らかであった。

「なんだ? 自信がないのか? グレッグは次代を担うエースだと話していたぞ?」
「自信がないわけじゃありません! 隊が混乱すると言っているのです! 私を引き入れるだけなら、二十五番機で良いじゃないですか!?」

 自分のことで隊内がギクシャクするなんて考えたくもない話だ。それはミハルにとって負担にしかならない。

「何を生温いことを……。いいかミハル? 私は二十五番機の穴埋めが欲しくてグレッグに連絡したわけじゃない。一番機の代わりを探していたのだ。ミハルが適格だと聞いたから貴様に決めただけ。無理だというのなら木星へと帰れ!」

 相変わらず手厳しいの一言。軍人になったからか、物言いは学生の頃よりもきつかった。

「帰りません! 私はエイリアンだけでなく、301小隊まで圧倒するつもりです! 従って一番機を断る理由が私にはありません! 他の人たちに気を遣っただけですから!」

「ならば結構。うるさくいう奴などねじ伏せてしまえ。何歳であろうがやっかむ奴はいる。一々気にしていたら一番機には乗れんよ……」

 フンと息を吐くアイリス。自らも経験したことだと言わんばかり。確かに能力を見せつけられたのなら雑音は封じられるだろう。だから見せてみろと、アイリスは命令しているかのようだ。

 二人は睨み合った。とても同じ門弟であるとは思えない。漂うムードは今にも喧嘩が始まりそうなほどに張り詰めていた。

「先の大戦におけるアイリス中尉の戦果はどれくらいでしたか?」

 会話を続けたのはミハルだ。何を思ったのか話題を変え先の大戦における結果を聞く。

「ん? それを聞いてどうするつもりだ? 絶望するだけだぞ?」

 アイリスはニッとした笑みを零した。ミハルの性格を聞いていたから理由など容易に察知できたはず。問いを返したのは決意を口にさせるためだ。

「もしも戦闘があれば、私はそれを超えたい。また超えなければ、私がここまで来た意味はない……」

 厚かましいほど強気なミハルは実にアイリス好みであった。これには笑うしかない。一年前の宣言通り、本当に挑みに来たことをアイリスは理解した。

「私の戦果は865機。当然のことトップシューターであった。貴様に超えられるか?」

「絶対に超えます! ずっと貴方は私の目標だった! 生き残るための努力などしていない! 私は貴方を超えるためだけに努力してきた!」

 裏表のない感情はアイリスを頷かせていた。軍人としての返答ならば零点に違いない。けれど、アイリスとて満点の回答などしたことはなかった。

「実に良い理由だ! 綺麗事など聞きたくもないしな! もしも貴様が私の戦果を超えられたなら、どのような希望であろうと叶えてやろう。土下座をして謝れというのなら謝ってやる! セラフィム隊への正式異動を望むのなら取り計らってやろう!」

 かつて挑戦には逃げも隠れもしないと言い放ったアイリス。その言葉に嘘はなかった。ミハルが話す一方的な勝負を彼女は受けるという。

「それなら土下座を希望します! 凄く楽しみです!」

「ふん、相変わらず貴様は気が強いな……」

 弾けるような笑顔のミハルをアイリスはなぜか浮かない表情で見ている。

「ジュリアに貴様の半分でも負けん気があれば良かったのだが……」

 脱線気味の話が続いた。溜め息と共に語られた内容にミハルは眉を顰める。

「ジュリアさんがどうかしたのですか……?」
「ジュリアはもう駄目かもしれん。いや、すまん。貴様には関係ないことだ……」

 詳しくは教えてもらえなかった。良からぬ話であるのは何となく理解できる。ただミハルは質問することなく病室を去った。

 アイリスは声をかけることなく、ミハルを眺めている。しかし、扉が閉じられると、またも彼女は細く長い息を吐いた。

「逆境は考え方次第。風向きは変えられるのだ。それに気付よ、ジュリア……」
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