君は魔法での優等生

優等生と劣等生

魔法学校

　石畳の壁は城のように大きく、赤色に染まった木製の大扉がそびえ立つように待ち構えている。その両脇には魔法で金色の火が浮かされたたいまつが飾られていて、十代の少年・少女たちがその風景に圧倒されながらその中を入っていく。
私も吸い込まれるように校舎に入っていった。

　ここはサダム魔法制御学校。つまり普通の魔法学校だ。魔法を学び、使い、魔力を制御していく…

そんな学校のはずなのに＿＿＿＿





「それでは授業を始めます。」

「魔法の原理は魔方陣による数式で、その形成状態は…」

この学校では、紙とペンしか使わず、眠くなることしかしないんだ。







　　　♢　君は魔法での優等生　♢




　ある少女が学校の廊下を歩く。透き通る水色の髪が風になびき、アメジストのような清んだ瞳は真っ直ぐ前を見つめる。彼女の名前はハルカ・サルフィディア。ごく普通の見習い魔法使い。そう言いたいところだが…


「この前のテストを返しますよ。」




「ハルカ・ハルフィディア」


返されたのは、100点中13点というなんとも低い数字が書かれた答案。


「また赤点…」

　ハルカは頭がもの凄く悪い。勉強が苦手なのだ。テストの成績は毎回下位。魔法を使わせてくれたことは一度もなかった。
この学校は、多くの人々が考えるような普通の魔法学校ではない。校長の方針で、安全に授業を行えるようにようにや、魔法の原理を根本から理解して、効率よく使いこなせるようまずは机に突っ伏して紙とペンだけを使って授業する。

　主に魔法数学、魔法科学、魔法史、魔法語、などの科目があり、それらの知識や仕組みをしっかり覚えてから実践を始めるのだ。
あまりの難しさとその量にハルカは思考が停止し、思わず寝てしまう。しかもテストをクリアしないと魔法を使うことが許可されず、彼女のような勉強ができない生徒は容赦なく切り捨てられていた。

　　

「あの子また赤点だよ？」

「なんで魔法学校に来たんだろうね」

　暗い顔でうつむき、教室を出る。こんな勉強ばっかりなら魔法学校なんかに来なければ良かった。そう思いながら答案をしまい込む。
入学してまだ一ヶ月なのに、ほとんどの生徒とすれ違えば陰口をたたかれるようになり、もうやって行ける気がしない。この学校で1番ダメなのは自分なんだ。そう実感する。

　ボトボ歩いていると、人混みの中に、明らかに周りとは異質の雰囲気を放つ生徒が隣を横切った。その違和感にハルカは思わず振り返る。

「あ、隣のクラスのラテル君だわ！
あの子めちゃくちゃ優秀なのよね？」

　それは背の高い、真珠のような純白の髪が少しボサッとした男子生徒だった。顔はよく見えなかったが、肌も真っ白で雪みたいだ。確か隣のクラスの凄く頭のいい人だったような…ハルカでも知ってるほど有名な優等生だとわかる。
周りの生徒は先ほどのハルカに向けていた視線とは違う、憧れや尊敬でチラチラと彼を見ていた。

　自分とは正反対の人だなと思いながらその後彼女は再び前を向く。


　

　


　放課後の時間、多くの生徒が寮や、家へ帰るところだが、ハルカは図書館に入って勉強していた。


「ここが…こうで…うーん？」

しかし全くわからなかった。彼女は勉強の仕方を完璧に間違えている。

何言ってんだこれ…
　
頼る友達や家族もいないため教えてくれる人なんていない。教師に教えてもらえば…と思ったがあまりの物覚えの悪さに彼らはもはや呆れていた。

どうしようもないこの状況、彼女はそれでも立派な魔法使いなるため必死に学び続けていた。すると…



「あの、何してるんだ？」

「えっ」


いつのまにか隣には、学年1番の優等生が座っていた。





「君は何がしたいんだ？」

？？？どういうこと？
と言うかこの人の名前なんだっけ？

その優等生は異常者を見るように彼女を見ている。しかし、ハルカは自分の何がおかしいのかよく分からなかった。


「えーっと…勉強しているだけですけど、何か？」

「…それが勉強なのか？」

「どういうことですか？ていうかあなた誰でしたっけ？」

「…」


彼はしばらく沈黙してから言った。