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記録ノ101 リョーマが見た3.11~前編~

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※本エピソードには地震の描写がございます。気分が悪くなりましたら閲覧を控えますようお願いします。

2011年3月11日…その日はなんてことのない普通の日だった。
いつも通りに朝起きて、いつも通りに学校に行っていつも通りに勉強して、いつも通り給食を食べていつも通り遊んでいつも通り帰宅したらいつも通りに家庭学習、遊び、そして夕飯…そんな風にいつも通りに日が過ぎていくと思っていた…そう、午後14時46分が来るまでは…

地震発生のその時間、僕は学校が終わって家に帰る途中だった。北海道もかなり揺れたのだが歩いていて揺れは感じなかった。
しかし帰宅直後、父が玄関で僕に突然鬼気迫る表情で呼びかけた。
「地震だ!テーブルの下に隠れろ!」

「何のドッキリだ?外では揺れは感じなかったし…シャレにならないマネはやめてくれよ…」
半信半疑のまま家に入ったが、これはドッキリではなかった。
家のキッチンのそばのスペースにある吊り下げ式の照明が揺れているではないか。あの照明は地震が来た時には揺れるいわば我が家の震度計だ。
そしてTVを見ればCM中なのに地震テロップがガンガン流れてるではないか。こんな異様な光景は見たことがない。
「これはただの地震じゃない。なんかヤバいことになったようだ…」子供心にそう思った。

14時50分、TVはCMが明けて本編に戻ったが、映ったのは大きく揺れるスタジオの様子。
我が家でその時観ていたのは「ミヤネ屋」。こちらは大阪で収録している番組であるが、北海道から、そして地震の被災地である東北から大きく離れていた大阪のスタジオも大きく揺れていた。
その後画面は東京のスタジオに移り、緊急報道体制が整った。
それから時間が経過し、TVから流れてきたのは東北を襲った津波の惨状。後に未曾有の大災害と呼ばれるこの惨状に一気に自分の心も暗くなっていった。


それから時が過ぎて16時頃、僕は母の買い物に同行した。
しかし店でもやはり地震の話をしている人たちでいっぱいだった。
買い物から帰ってくると、今度は北海道内の被害状況がTVに映されていた。
札幌から遠く離れた釧路では商業施設が浸水するなどの被害がおきていた。「札幌はかろうじて大きな被害がなかったものの同じ北海道でも被害がおきているこの災害は決して対岸の火事ではない」子供心に胸に刻まれた。
時を同じくして入った福島原発の停止、そして停電の情報。僕にはちょうどこの1年前の春に福島に引っ越していった友達がいる。彼の無事を祈るばかりだった。
また、千葉や茨城にも大きな被害があったことをこの後知ることとなる。特に千葉はいとこが住んでいるから彼らの安否が心配だった。この災害は東北だけが被災地ではないことを読んでいる皆さんもしかと受け止めてほしい。

その夜、夕飯時も僕含め終始暗い表情であった。
しかし僕はもちろんいとこや友人の安否も心配であるが、この日のドラえもんとクレヨンしんちゃんが休止になったことも辛かった。
もちろん、当然の措置であることは理解しているが僕だって子供だ。いつも通りの番組がやっていないことはつらかった。被災地にはTVも観られなければ自分の家で温かい食事を食べられない人だってたくさんいるのだからこんなことは言ってられない。でも楽しみを奪われるのは子供心につらかったのだ。当然、被災者たちは楽しみどころか生活の基盤、そして大切な仲間や家族を奪われた人だってたくさんいるのだ。だがまだ子供だった自分にとっては被災地の惨状や身内の安否を気に掛けることはできてもそこまで頭が回らなかった。

その後、翌日土曜は父が休みだということを知り(もともと休みだったか、地震の影響で臨時で休みだったかは覚えていない)、僕は両親に「明日レンタルビデオ屋に連れてってほしい。明日のおはコロやケロロも休みだろうからDVDぐらい観たい」と頼んだ。
しかし母は「あんたにはゲームがあるじゃないか。退屈ならそれをやればいいじゃないか」とかたくなに返された。
自分としてはこんな状況ではなんか今はゲームをやりたい状況ではなかった。漫画だって読んでも内容がなんか頭に入ってこなかった。漫画やゲームの気分じゃないのにDVDがいいとはこれいかに?と今となっては自分でも思うが、「我が家のTV画面に暗い様子ばかり映したくない。一番大変なのは被災者とはいえ精神的にもたない」といったところがあったのだろう。
被災した子供たちだって、ゲームをやれない子やDVDを見たくても見られない子が大勢いるのだ。「自分が被災者だったらどう思うか考えろ」あの頃の自分にそう言ってやりたい。
(次回へつつく)

参考文献:NHK放送文化研究所サイト内 東日本大震災発生時・テレビは何を伝えたか(震災時のミヤネ屋の放送時刻、時刻ごとの報道状況の記述)







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