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記録ノ121 函館修学旅行騒動記~雨の五稜郭と朝市、そして帰路へ…~

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2日目の朝は早い。しおりには5時40分に起床と書かれていたが、僕はそれより早く目が覚めた。
その時にはすでに部屋の他の仲間は起床済みで、シュンくんによってTVがつけられていた。子供は朝から元気だなぁ…

歯を磨いて顔を洗って部屋の片づけと荷物の準備が終わったら朝食の時間。夕食と違いほとんどが自分の食べられるメニューであった。米も白米だったし。
昨夜の夕飯時に洗浄のため回収された水筒。ホテルの人が中にお茶を入れて返却してくれた。神対応に感謝だ。

食事後、ホテルの人たちにしっかり感謝の気持ちを伝えてからバスに乗り函館朝市へ。
本日最初のメインイベント「朝市売り子体験」だ。
生徒が指定の店で1時間ほど売り子として働くのだ。
どの店を担当するかはお店の人が生徒を事前に指名し、生徒にはしおりにて文面で伝えられている。
売り子体験時にはエプロンを着用する。そう、そのエプロンこそあの家庭科で作ったエプロンだ。

始まりの集会の後、スタッフが生徒ひとりひとりを担当の店まで案内してくれる。
そしていよいよ僕の担当の店に到着…と思いきやその店は照明がついておらず、誘導するスタッフも何の説明もなく通り過ぎてしまった。
「すいません、あの店僕の担当の店なんですけれど…」
「あ~あそこ今日休みなんだわ。君には別の店をやってもらうから…」
店の休業がどのタイミングで決まったものかはわからない。学校への事前連絡とかもなかったのだろうか?先生からも特に話がなかった。本当に事前の情報もなく突然のこと過ぎて戸惑った。
もしかしたら店の休業も昨日の夜とか本当に急なタイミングで決まっていて連絡する暇もないぐらいな状況だったという可能性もなくはないが。だとしても集会で言ってほしかった。

そんな戸惑いと不満を隠せない中、僕は新たな担当の店で売り子体験へ。
そこの店主のおっちゃんから「根ぼっけ」を宣伝してほしい。とお願いされた。
僕は根ぼっけの開きを手に店頭に立って一生懸命叫びまくった。元気に呼び込めば客は自然と入ってくるはず。
「根ぼっけいががですか~!」
しかし客は全然来ない。それどころか向かいの店にばかり客が集まる。
向かいの店のおばちゃんがかなり饒舌でこりゃ一本取られた!と思った。だから向かいに人が寄ってくるんだなあ…あのおばちゃんには勝てねえや…と心の中でつぶやいてたところ…

「ボウズ!もっとでっかい声だしな!」

おっちゃんに喝を入れられ、もっと大きな声を出して一生懸命呼び込みを行った。通り過がりの客にも気づいてもらえるように…
「根ぼっけいががっすか~!」
それから2組ぐらい客が来て店で買ってくれたが、結局僕の宣伝する根ぼっけは売れずじまいで売り子体験は終了。
ちなみに買ってくれた客のうち一組は神奈川からの観光客だった。道外からも来るとはさすが函館!と思った。(札幌だって負けてねえよ!)
その後、売り子体験のお土産として朝市グッズのイカせんべいと朝市のお買物券を受け取り、その券を使ってお買い物。しおりには「できるだけ自分の担当した店で使うように」と書かれていたが、僕の担当した店に欲しいものがなく、「できるだけ」ならその店以外で使ってもいいってことじゃんか。と解釈した僕は別の店で買い物をした。店のおっちゃんには申し訳ないが…
イカせんべいもこの後役に立つことになる…

朝市を出発したらいよいよ修学旅行最後のイベント、五稜郭見学へ。
昨日の晴天から一変、この日はあいにくの雨。皆傘を差しながら散策していた。
敷地内はあの星型からわかるよう入り組んでおり、箱館戦争で使われた大砲も展示されていた。ケイちゃんは「世界平和」と言いながら大砲に手を添えていた。
その後は五稜郭タワーへ。しかしあいにくの曇り空で景色もはっきり見えなかったが、五稜郭の模型もあって楽しめた。
展望台を下りたら下のショップでお土産を購入。「函館ならではのものを買おう」としおりに書かれていた通りに(しおり渡されたときに1組の先生からも、札幌でも買える”じゃがポックルとか買うな”とか言われた)函館ならではのセレクトにこだわった。
函館の塩ラーメンに土方俊三饅頭、五稜郭タワーのキャラが描かれたキャラメル…
我が家の分に祖父母の分…誰の分買うかメモしたおかげできっちり忘れず買うことができた…

万感の思いを胸に、僕たちはバスに乗って函館駅へ…いよいよ帰る時が来たのだ…
バスでの移動中、「札幌」「長万部」と書かれたボードをもってヒッチハイクしている人を目撃。
「こっちについてきたら札幌つけるよ~w」とかって車内で盛り上がっていた。

札幌行きの特急の車内でお昼ごはん。函館名物ラッキーピエロのハンバーガーだ。
函館に行ったことのある友だちからその名をよく聞いたので一度食べてみたかった。
「チャイニーズチキンバーガー」と「ジンギスカンバーガー」のふたつから好きなものを選び、好きなドリンクと一緒にいただく。
僕は前者をチョイスし、ドリンクはコーラを選択。コーラ大好き人間なのだ僕は。
ボリューミーでなかなか食べ応えのある美味なバーガーであった。マックでもボリュームのあるヤツあんま食わないからこういうバーガーはほぼ初めてだった。
食事後も続く長い移動時間。お菓子を食べたり、トランプしたり…中には朝市やタワーで買ったものを食べている人もいた。僕もその一人。
そして長旅が終わり、札幌駅へまもなく到着するというタイミング。先生たちは寝ている生徒を起こした。
ある生徒は寝起きざまに「なんか12時間ぐらい寝た感じ」とコメントした。
ちなみに僕は車内では一睡もしていない。小学生の頃は昼寝というものをほとんどしない人間だったのだ。

その後、バスに乗って学校へ到着した後終了集会。こうして僕たちの小学校生活最大の行事は幕を閉じた。
帰宅後、僕は両親にお土産をさっそく見せる。しかしここで母が…
「リョーマ、S子おばさんへのお土産は?」
…忘れてた。S子おばさんの家にはお盆の時によく訪れる。そのたびにおばさんは僕にお小遣いをくれるから母が「S子おばさんの分もお土産買ってきて」といってたのだ。
しかしメモには彼女のことを書き忘れてしまった…故に買い忘れてしまったのだ…
「ごめん…買い忘れた…」
函館のアンテナショップでも行って買ってこようか…なんて考えてた矢先、母はあるものに目をつける。
「リョーマ!これがあるじゃん!」
そう、「これ」とは朝市のイカせんべいだ。こんなところで役に立つとは、朝市の皆さんありがとう!

修学旅行騒動記 完
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